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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

綺麗な人 ~後編~


綺麗な人 ~前編~、の続きです。

さぁ、いよいよエアティ決戦です。
どちらが勝つでしょうか。






大切なものを褒められて嫌な奴はいない。

だけど俺は、逆のタイプだ。

鍵をかけて、閉じ込めておきたい。

誰の目にも触れないよう奪われないよう、大切に...


綺麗な人 ~後編~


どこからか響くスピーカーのテスト音。
町は昨日にも増し活気付いている。
今思えばこの賑わいは、イベントのせいだったんだな。
決勝戦だけ見物しに来る輩も多いのか、通りは人で溢れ返っていた。

何やら準備があるらしく、エアリスとティファは朝から出払っていた。

“お昼ご飯を買って来て”

エアリスからのメール。
マテリアを勝ち取ってくれたお姫様達の要望だ。
無下に扱う訳にはいかない。
紙袋を3つ手にし、指定された建物の一室へ向かう。

「クラウド、早い!ありがとう~」

ノックをするとぴょん、とエアリスが飛び出てくる。
どうぞと言われ、中に入った。
ティファはいないようだ。

「今ね、ティファが先にメイクして貰ってて...あ、帰って来たかも」

ノックの音に振り返り部屋の入口へ向かうエアリス。
椅子に腰掛け、ガサガサと紙袋の一つを開けようと...「キャアアアアアアアアア!!!!」

絹を裂く様な悲鳴にハンバーガーを落としそうになる。
な、なんだ!?
慌ててドアへと向かう。
そこには...



「えっ...?」



............ティファ?



「か、可愛いぃ~~~...」

ウットリするエアリス。

「もう、大袈裟ね。
次はエアリスだって。向かいの部屋よ。
あ、クラウド。何でいるの?」

俺は質問に答えられない。
相変わらず可愛いを連呼し腕に絡みつくエアリスを引き剥がし、早く行ったら?と冷静に言いティファは部屋に入った。

「クラウド!ティファに何かしたら、ダメだからね!!」

余計な一言を言い捨て、その場を去るエアリス。

「さっきから何言ってるんだろ...
ねぇ、クラウド。本当に何してるの?」

「あ、いや...昼飯...頼まれて...」

ごにょごにょと言う。

「そうだったんだ!
助かっちゃう、お腹ペコペコだったの」

「クラウドの分もあるんだ?一緒に食べよう!」

ティファは隣の椅子に座った。
ギクシャクしながら俺も元の椅子へ腰掛け直す。



びっくりして、心臓が止まるかと思った。



ティファはいつもと全然違った。

紺色の品があるワンピース。
髪は一部分上げられていて、どうやってやるのか下に残ったそれはクルクルと巻かれていた。
...化粧のせいなのか?
瞼が降ろされた際に、更に際立つ長い睫毛。
目もいつも以上にパッチリしてる気がする。
今まで見た彼女の中で、とびきりに華やかだった。

...聞いてるクラウド?

怒ったような声にハっと我に帰る。

「あっ、え?」

しまった、なんだって?

「なぁに、さっきからぼんやりしちゃって。
そんなに美味しい?それ」

それ?
ああ、これか。
味のしないそれを機械的に噛む。

「確かに美味しいね。
いっけない、口紅とれちゃう」

ティファは唇に人差し指を当てた。
少し濡れて光るそこ。

...ゴクン。

無機質な物体を喉の奥へ追いやる。

無性に、色っぽかった...

ぼんやりと浮かんでくる懐かしく甘酸っぱい感覚。
見当違いにも、神様を恨み言を言った。

(何も...)

(何もこんなに綺麗になること、なかったのに...)





帰り道、遠い記憶が蘇る。
聞くつもりはなかったが耳に飛び込んできた村の青年の噂話。

「あの子、将来かなりの美人になるな」

何故か自分の事を褒められたような、くすぐったい気分になった。
しかし同時に沸き起こる、大切な物に無骨に触られたような焦燥感。

(いやらしい目で、ティファを見るなよ!)

青年を思いっきり睨んだ。

「わっ!いったいどうしたんだ?クラウド...」



玄関を勢いよく飛び出た瞬間、その存在に気付き足が固まる。
逃げ場はない。

「こんにちは!おばさん、クラウド」

「こんにちは、ティファちゃん。
おや、おめかししてどこ行くんだい」

「ふふふ、今日はあそこのお家でパーティーなの。
二人も、お出かけ?」

「そうだよ。
ほら、クラウド。
おまえこんな可愛い子に挨拶されて何も返さないなんて、どこかおかしいんじゃないのかい?」

(うるさいな。 可愛いとか言うなよ。
......だからだろ)

あんな奴のために、こんな格好するなんて。
顔を上げられず、水色の靴を打ちのめされた様に見つめる。

「じゃあね、クラウド」

そう言い去っていく後ろ姿なら、見られるのに...

ドンっ!

「あっ...すまない」

ぼんやりしてたら、イベントスタッフの様な格好の若い女にぶつかってしまった。

「いいえ!
あ、そうだ。これ、よかったらどうぞ」

渡されたのは表紙に笑顔の女性のアップが載ったパンフレット。

そうだった。あともう少しで...

差し掛かった広場の噴水に腰掛け、先程の冊子をパラパラやる。
どうやら歴代の優勝者のプロフィール写真集らしい。
結構際どいポーズのものまであった。

(アイドルさながらだな...)

勝ったらここに載るのか?
さっきのティファが?

心底思った。



嫌だ...



正直、もうあのステージに立たれるのも嫌だった。





「お二人の特技は?」

「園芸、かな?」

おお~!可愛い~~!!と群衆が湧く。

「格闘技です」

見た目とのギャップに、今度はシーンと静まり返る。
そこは料理とか言っておけばよかったんじゃないか?

会場の一番後ろの壁に腕を組みもたれかかり、時に漫才かのようなやりとりを観る。
他の皆は前の方にいるんだろう。
時たまユフィが二人の名前を叫ぶのが聞こえた。

「それでは最後に、一言自己アピールをお願いします!!!」

「えっと。応援、よろしくお願いします!」

再び可愛い~~!!!と観衆が騒ぐ。

そうだな、素直で真っ直ぐなのがエアリスの魅力だよ。
だから俺はその笑顔に弱いんだ。

「ええっと...皆さん、是非エアリスに清き一票を!」

ずっこける司会者とエアリス。
次いで、観衆からドッと笑いが上がった。

「あなたねぇ、この期に及んで...」

「だって私、本当に興味ないもの」

サラっと言ってのける。
再び場が笑いに包まれた。

俺もついつい吹き出してしまう。
本当に真逆な二人だ。

別にエアリスが綺麗じゃないなんて言わない。
ティファとは対照的な真紅のワンピースが良く似合ってる。
しかし、こんなこと言うと怒られそうだが、彼女は割といつもと変わらなかった。
良い言い方をすれば、普段からお洒落をしている。

誰がどう見ても ‘良い勝負’ をしていた彼女達だったが...

(ま、努力賞みたいなもんで、やっぱり普段とのギャップかな)

その点誰に投票するかは決まっていた。
しかし...

この会場の、何百人もの人間を釘付けにさせている彼女。
一方の俺は、彼女の目には豆粒すぎて映らない。

投票用紙をぐしゃりと握り潰し、ぞろぞろと投票場所へ動き出す審査員達を尻目に宿屋へ引き返す。


優勝したのはエアリスだった。
一票差だったらしい。





宿屋の入口で交わされる、二人の会話。

「行ってらっしゃ~い!羨ましいわ」

「もう!やめてよ。
あんなの、引き分けも同然じゃない」

エアリスを見送ると、ティファは喉が乾いていたのか自動販売機へ向かった。
ああ、もういつものティファだ。
安心し、後ろ姿に聞く。

「どこに行ったんだ?エアリスは」

「ん?さっきのイベント会場。
優勝者は撮影があるんだって」

ホッとしたようだけど、どことなく寂し気なティファ。

後ろから手を払いのけ、代わりにコインを入れてやる。

「わっどうしたの?クラウド」

「お詫び」

キョトンと小首をかしげる。

「ティファが負けたのは、俺のせいだから」

ティファは俯き、振り向かない。

「だっ...だよねぇ...
綺麗だったもんね、エアリス...」

少し間を置いて言う。

「嘘だよ。俺はティファに入れた」

正確に言うと、“入れたかった” けど、入れられなかった。

「どっちが...本当?」

「どっちも嘘」

「???」





あんな格好はもう懲り懲りだ。

頼むから、これ以上綺麗にならないで。

俺を遠くに置いてきぼりにしたまま...


******************


ACティファが本気を出したら、全国あまたの男性が爆死すると思う。
とりあえず、クラウドを爆死させてみました。

でも、彼女はスッピンに戦闘服が一番似合うんだろうなぁ、とも思います。




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