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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Overflow 〜Side Tifa〜 3 (fin.)

Overflow Tifa 2、の続きです。



Overflow 〜Tifa〜 3 (fin.)


自分は同世代の中でもとりわけ夢見がちな少女だったと思う。人並みに恋愛には興味はあったが、それは長年小説やテレビドラマ内で描写される美しいイメージの域を出なかった。幼少の頃から馴れ合った男友達に対してはそういった感情を重ね合わせられなかったせいもあるかもしれない。初めて現実世界で異性を意識したのは十三歳になった夏の夜、紛れも無くあの瞬間だった。

田舎育ちの世間知らずはミッドガルでの生活が始まるや否やスラムの洗礼を受けることになる。道を行くだけで突き刺さる無数の汚らわしい視線。ひとたび裏通りに迷い込めば、そこには女を人とも思わない輩が蠢(うごめ)いていた。格闘技に長けていなければ今頃どうなっていたかと思うとゾッとする。

バーの接客に慣れるとともに異性からの露骨なアプローチを真に受けることもなくなったが、一方で心はどんどん冷めていった。皆関心があるのは容姿であって、優しさなんて上辺だけ。中には誠意ある人もいたのだろうが、どうしても下心が透けて訝しんでしまう。触れ合うこともなく清らかなままの故郷での思い出だけが支えだった。

あれはジェシーと知り合ったばかりの時だっただろうか。女同士年の近いメンバーが増え、一通りの自己紹介が済み酒が回った頃に訪れるのはお決まりの話題だった。

“ああ、いいんだ。私、そういうの...”

急速に温度を下げ荒んだ反応を示す私に苦笑いをする彼女は一回りも二回りも大人だった。

“心から愛してる人とのセックスって、それはもう素晴らしいものよ”

直接的な物言いに面食らう反面、臆しもしない彼女の表情はとても綺麗で、動揺のあまり話を逸らしてしまった私の胸の奥には確かに一種の羨望が宿ったと思う。

(この感覚...)

力強い抱擁に包まれ、ティファは知った感覚を思い出す。それは初めてクラウドに抱かれた夜に覚えたものだった。世界が彼の腕で閉ざされた空間だけに狭まり、この世に存在するのも二人だけになる。雑念は追い払われ神経は体温を感じるためだけに研ぎ澄まされた。自分が女に生まれて彼が男で、そんなことさえたまらなく嬉しくて何もかもどうでも良くなる。自らに対する失望さえ...

「辛そうだ」

瞳から溢れ落ち続ける涙にクラウドは口付けを中断させ両手で濡れた頬を包み込む。

「辛いよ」

罪に汚れていない手でこの人を抱きしめられたら...どんなに願っても叶わない叫びだった。

「幸せすぎて」

力ない笑顔にクラウドは表情を和らげた。ティファの耳元で一言囁くと再び唇へと向かい舌を割り込ませ、深くまで入り込んでいく。奥で縮こまっている舌を捕らえ絡め取り、吸いつき角度を変え何度も甘噛みする。彼に体重を思い切り乗せられ息苦しさに喘いでいると、涙がまた一筋溢れた。本当だね、ジェシー。あなたの言う通りだった。

――俺もだ

とことん自分を甘やかす音色が蘇り、身体はクラウドの胸にすっかり溶けていく。初めての夜、スマートに事を運べなかったことを引きずっていたクラウドは再び彼女を抱く際の手順を幾度となく思い描いてきたが、彼女に触れた途端全てが頭から吹き飛んでしまう。だがそれで何の問題もなかった。互いを欲しながらも長らく距離を置いていた男女は身に纏っている布越しにも鋭敏に相手の温度を堪能し合う。抱き締め合い、湿った吐息を唇で受け止めるだけで身体は高まっていった。

やがて剥き出しの二の腕や背中、バスタオル一枚を隔てて押し付けられる膨らみから伝わる柔らかさと、衣服の向こう側で主張する筋肉質な肉体への恋しさが募り始める。唇を離す一瞬さえ惜しく、舌を絡ませ合いながら身につけているものを脱ぎ去っていった。夢にまで見たティファの裸体に直に触れ、時も忘れクラウドは自らの腕に身を預ける豊かな肢体を余すことなく弄っていく。

「んっ...」
「あ、ティファ...!」

まだ強張っている太腿の更に奥、ぴったりと閉じられた亀裂に指を差し入れたクラウドはぬるりと滑る感触に興奮のまま息を荒げた。入りたくて堪らなかった蜜壺にやや性急に人差し指を埋めていくが、「いっ...」とティファが顔を歪め漏らした苦痛の声に我に返る。男を知ったばかりのそこはたった一本の指にさえ悲鳴を上げてしまう狭さだった。

だがティファの経験の無さはクラウドを強気にもさせる。彼女の初めてを奪った喜びと同時に深く根付いたのは自分が不甲斐ないばかりに多大な痛みを与えてしまった情けなさだった。恋焦がれた身体を前に何をどうすべきかめちゃくちゃになりつつあるクラウドだったが、同じ過ちは繰り返すまいとティファの膝の裏に腕を回すと太腿の内側に口付けを落とす。髪の毛が当たるくすぐったさとクラウドの頭の位置に居心地悪さを覚えティファが腰を引こうとした時だった。

(...え?)

クラウドの舌が侵入してきた先にティファは何が起こったのか一瞬わからなくなり、次の瞬間全身を巡る血液がカッと頭に集まった。「やだ!そんなとこ...!!」秘部を舐められ抗議を浴びせるが腿をがっしりと押さえ込んだクラウドはティファに自由を与えない。せっかちにして痛くしてしまった後悔と、彼女の全てを手に入れたかのような錯覚に酔うクラウドは夢中で舌を動かした。

世の中は不公平だとクラウドはつくづく思う。美しいものはとことん美しく作られていて、幼い頃から自分を虜にし続ける女性はこんなところまで綺麗だった。自分だけが拝む事の出来るそこに一心不乱に舌を這わせ、ぬるぬると糸を引く愛液の感触を堪能する。たっぷりと唾液を滴らせた先端で表層を浅く行き来していたが、ゆるりと開いてきた裂け目に誘われるがままに割り入っていった。

「んんっ!!あ!」

微かに主張する一点を舐め上げるとティファの上半身が跳ねた。「やっ...なに?」動揺するティファの反応に手応えを得たクラウドは隈なく刺激を与えつつも徐々にそこに重点を置いていく。舌の上でしっかりと硬さを確認できるようになった頃、舌先に力を込め押し付けながら集中的に攻めてみた。

「んっ、んっ、んっ、あっ...待って、クラウド!!」

クラウドの肩を押し戻そうとしていた手は目的を忘れ、爪が肌に突き刺さる。身体の中央を貫いた電気にティファはビクリと顎を跳ね上げ、今まで発した事のない声を上げた。彼の目と鼻の先でトクリと体液が溢れ出るのを感じる。初めて迎えた絶頂に困惑し瞳に熱いものがじわりと滲んできた。この行為って、なんて残酷なんだろう。好きな人にこんなところまで見せないとならないなんて...

それでいて、なんて幸せなんだろう...
十分に潤いくたりと横たわるティファに余裕を失ったクラウドははち切れそうなほど怒張したそこを押し付けてくる。硬く巨大な彼に当時の激痛を思い出しティファの全身が強張るが、その心配を他所に思いの外抵抗なく迎え入れる事が出来た。

「優しくしようって決めてたのに...」

鋭い快感から口元を緩めるクラウドは数度ゆっくりとティファの中を往復し、大きく溜息をついて一度は自らを奮い立たせようとするが「ごめん、動くな」と速度を増していく。

(痛い...けど...)

鈍痛はあれど前とは比較にならない。スムーズに繋がり合えた理由に思い当たり再び羞恥が舞い戻りギュッと両目を瞑った。自分でも届かないこんな奥深くに彼がいるなんて..改めて味わう不思議な感覚をティファはぼんやりと噛み締める。恥ずかしくて堪らなくて、快楽なんて欠片もなくても彼が感じてくれている姿を見るだけで胸が押し潰されそうになった。

「...痛いか?」
「少しだけ...でも、平気」

無理をして笑顔を作るティファの頬をクラウドは「早く良くなるといいな」と愛おしそうに撫でる。その発言から今後彼が繰り返し自分を抱くつもりでいる意図を読み取る。先の事が頭をよぎると同時にその裏に恐怖が垣間見え、ティファはクラウドの首に腕をキツく巻き付け固く瞳を閉じた。今はクラウドの事だけを考えていたい。小さく震えるティファの身体をクラウドもまた抱き締め返す。



眠気のままにぐったりと力を失った体に覆い被さられ、重みに眉をしかめティファは焦った声を出す。

「ね、帰らなきゃ」
「ん...」
「バレット心配してるよ?」

だが「もう今日は泊まるって伝えてある」とまさかの先手を打たれティファは目を丸くする。続いて広場に繋いだままのチョコボにも言及するがそれも一晩預かって貰う手筈は既に整っていると返され、億劫そうに閉じた瞼を開きさえしない男の用意周到さに呆れ返った。兄同然であるバレットと明日顔を合わせる時の気まずさを想像し、ティファは肩を落とす。

「なんでそんな簡単に離れようとするんだよ...」

慌ただしく帰途につこうとするティファにクラウドは苛立った声を出した。クラウドからの指摘に返す言葉を失ったティファはそれっきり抵抗を諦めもたれかかってくる体を受け止める。それを感じ取ったクラウドは力を緩めるとティファを抱え込んだまま本格的に眠りへと落ちていった。

当然、自分だってまだまだ一緒に居たい。それなのに早々にこの空間から抜け出し日常に戻りたがっている自分もいる。長い時を過ごせば過ごすほど、彼の腕の外の世界に対する恐れが膨らんでいく。他の誰の目もある筈もないのに、安らぎを得る我が身に突き刺さる鋭い視線から一刻も早く逃げ出したかった。

それでいて明日からもきっと自分は何て事の無い顔で日常を過ごすのだろう。間違いなく自分は明るさを取り戻しつつある。今後誰からも罪を咎められない可能性だってあるかもしれない。一方で胸の奥深くで疼き続ける棘が抜ける日は来ないとも確信に至った。犯した罪を許せないのは誰よりも自分自身で、自責の念はふとした瞬間に、それも最高に幸福なひと時に顔を覗かせるだろう。それこそ、一生。

逃がすまいとばかりにティファにのし掛かったまますっかり熟睡しているクラウドの体をそっと押しのけ、身を起こすと寝顔を見つめた。ねぇ、私...ミッドガルに来てからクラウドのこと探したんだよ。村に起こった事。あなたのお母さんに起こった事。伝えなきゃって、ずっと思ってた。それ以上に...

うつ伏せ頬を枕に押し付けて、穏やかな寝息を立てるクラウドの髪をそっと梳く。眠りながらも頭を撫でられると目を細め心地よさそうにする彼にティファの口の端が持ち上がった。だが同時に彼の頬でポタリと一滴の雫が跳ねる。

もしもあの時、何もかも失った者同士手を取り合えて、行き場のない痛みを分かち合えたなら...復讐以上の生きる希望を見出せていたならば...
いくら嘆こうとも変えようのない過去に、溢れ出した涙は止まらない。今とは違う自分であなたと結ばれたかった。それでも...

「それでも、側にいさせて...」

額を胸に押し付けてきたティファの肩をクラウドはまどろみながらも包み込んだ。再び閉ざされた安息の場に身を横たえ、瞳を固く閉じる。背中に緩く巻き付けられた腕が温かくて、涙はいつまでも止まることはなかった。


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