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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

無償の権利 2. Cloud


無償の権利 1. Tifa、の続きです。
先にそちらをお読み下さい。







手の中には色とりどりのメモ帳。

マリンはピンクかな。

ピンクのは赤いハートと、熊だか犬だかよくわからない、茶色いマスコットが描いてあるのを選んでやった。
...買う時はかなり恥ずかしかったけど。

デンゼルは水色ってところか。

逆にそれはシンプルなラインが引かれただけのもの。
確か、こういうのが好きだったはずだから。


無償の権利 2. Cloud


「相談に乗ってもらえない?」

随分と改まった物言いだな。

ティファがこうやって素直に頼ってきてくれる時、話の内容は決まって一つだ。

子供達のこと。

我が家の育ち盛り達は、現在WROが新設した学校に通っている。
その前は、時間を見つけて二人でいろいろと教えてあげていたが、限界を感じてた。
なので有難い限りだ。

確か今日は、学校で個人面談があると聞いていた。
そこで何かあったのか?

「子供達の話か?
何か問題でもあったのか?...友達と喧嘩したとか」

露(つゆ)とも心配していなかった俺は、少しだけ焦る。

表情に翳(かげ)りを見せるティファ。
図星か。

「その方がよかったかも。
問題は...問題が無さすぎるというか...」

「...?」

話はこうだ。

結論から言うと、デンゼルとマリンの教師からの評価はかなり高かったらしい。
デンゼルは算数がクラスで一番で、クラスの委員として、皆を引っ張り頑張っているという。
これは本人からも聞いたことのある話だ。
一方のマリンは、逆に算数と体育が少し苦手。
しかし持ち前の明るさと社交性で、彼女も学校ではかなりの中心人物のようである。
...なに、算数はデンゼルに教えさせればいい。

しかし、帰り際にデンゼルの担任から告げらた事実に、ティファは動揺する。

「皆でお揃いの何かを持とう、という話が子供達の間で出たんです」

お揃いの何かは、最終的にペンケースになったらしい。
普通のものより少しだけ凝っていて、あちこちに色んなものがしまえる。
そういうものが今は流行ってるらしい。
お陰で少し値は張るが、様々な色が出ていて、誰がどの色を選ぶかでかなり盛り上がったとのことだ。

子供がホイホイ買えるものではないが、それを買うのに躊躇う親もいない価格。

しかし今の時代、孤児院から学校に通ってる子供も少なくない。
そういう子達の多くは、その心躍る「企画」を泣く泣く断念したらしい。
問題は、その孤児達の中にデンゼルも混ざってたということだ。

「買える子と買えない子の間で差別が起こったら、そう思い一度は止めようかとも思ったのですが...
結果的にそういう事も起こらず、勿論デンゼル君も変わらず皆と仲良くしています。
ただ、無条件で今の家庭に甘えられる、そういう状態ではないのかな、という印象を受けました」

そこまで言うと、絶句しているティファに担任はすかさずフォローを入れた。
こういった問題には慣れているのだろう。

「でも、家族の話をする時の彼は、本当に生き生きしています。
二人とも若いのに素晴らしいですね。
ああいう良い子の未来に可能性を与えて下さって、有難い限りですよ」




俺の家は裕福ではなかった。
女手一つで支えられている家庭だったし、母も特段それを隠そうとはしない人だ。
...家だって、ティファの家と比べても、半分くらいのサイズしかなかったしな。

だから、欲しいものを買って貰えない時は多々あった。
当然不満もあった。
しかし、欲しいものを伝えられなかった記憶は?
...わからない。思い出せない。

しかし、改めて思い出される、恨めしかった母の台詞。

“もう似たようなの、持ってるじゃないか”
“アンタはきっと、こんなのすぐ飽きてしまうよ。こないだって...”

それを決めるのは俺だろう?
回想の中の母に突っ込みを入れ、思う。

俺はデンゼルにそういった台詞を言ったことは、一度もない。

以前小さな雑貨屋で、車の玩具を買ってやったことがある。
いつもの昼飯代にも届かないそれに対して躊躇するから、こう言ってやった。

「実は俺も欲しいから、一緒に買わないか?」


「クラウドも?それなら欲しい!」


「クラウドって、結構子供っぽいところあるよな~」

帰り際に小馬鹿にされた際は少々不本意だったが、本心がバレたら元も子もない。

「 ...乗り物が好きだからな」

「二人には内緒にしといてやるよ!」

笑顔が眩しかった。




あんな取るに足らないガラクタであの調子だ。
きっと今まで無数の我慢をしてきたに違いない。




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