Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
無償の権利 1. Tifa
子育て奮闘記再びです。
全く血の繋がりのない四人の共同生活って、凄いですよね。
真面目な話です。
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の順に更新予定です。
ご閲覧いただき本当にありがとうございます。
「と、言う訳で、今のところ目立った問題はなさそうですね。
これからも、一緒に良い所をどんどん伸ばしてあげましょう。
...ただ強いて言うならば、先ほど申し上げたことくらいでしょうか」
「...はい。
教えていただいて、ありがとうございました...」
誇らしいんだか、寂しいんだか、戸惑うんだか...
何より、ひたすらいじらしい。
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確か前にもこんな事があったっけ。
エッジのショッピングセンターにマリンと二人で行った時。
オープンしたてのせいか、吹き抜けのホールではイベントをやっていて、そこには大きなグランドピアノが置いてあった。
二階で服を見ていた私たちの耳に、繊細な音が届く。
演奏が始まったんだ。
「ティファ!マリンあれみたい!」
返事を待つまでもなく、手摺りの方へ駆けていくマリン。
後ろから抱きかかえ、よく見えるようにしてやった。
重くなったな。
抱っこなんて久しぶり。
昔は降ろすとすぐ泣いて大変だったっけ。
「すご~~~い...!!!」
...目がハートって、こういうことを言うのかしら?
元々マリンは女の子らしいものに興味が強い。
クリーム色の眩(まばゆ)いドレスを身に纏った演奏者の指使いに、ウットリと見惚れるマリン。
「私もね、習ってたんだよ」
何気なく言ったつもりだったが、マリンは予想以上の反応を見せた。
「ウソ!?ティファが?
ピアノってならえるの!?」
まだ学校に通ってない頃だ。
年齢より大人びた彼女だけど、まだまだ当たり前の事を知らなくて、こちらを笑わせてくれる。
「ねぇ、じゃあティファもあんなふうにできる?」
興奮を隠せないマリン。
「あそこまでは流石に無理だけど、なんだかんだ言って十年習ってたから。
もう一度やり直せば、そこそこ弾けるかしら?」
...わからない。もう六年弾いてない。
「じゅうねん...!?」
つまり、今のマリンと全く同じ年に始めたってことね。
「ティファ、すご~~~いねぇ...」
「全然!みんな習ってたもの」
結局私達は、買い物そっちのけで演奏に聴き入っていた。
全部で三曲の短い催し。
「もうおわり?」
唇をとがらせるマリン。
...もしかして、習いたいのかしら?
そう思うとなんだかこちらまでワクワクしてきた。
小さな手で、一生懸命練習曲を弾くマリンを思い浮かべる。
たまには私も加わったりして。
今晩クラウドに相談してみよう。
ピアノを買うとなると、一大事だ。
勿論バレットにも聞かなくっちゃね!
二人共、賛成してくれるに決まってる...
肝心の本人にまだ何も提案をしていないというのに、私の気持ちはすっかり先走っていた。
数日後、めでたく男性陣二人の快諾を得た私は、浮き足だってマリンの部屋へ向かう。
バレットに至っては、「ピアノは俺が買うぜええええ!!!他の金も、ちゃんと報告しろよ!!!!!」
と、電話口で大興奮していた。
...まぁ、叫ぶのはいつもの事だけど。
マリンも、きっと喜んでくれる。
「マリン、入るよ?」
形式だけのノックをし、子供部屋へ。
マリンは机に座って、足をブラブラさせながらお絵かきをしていた。
「なぁに?」
「ねぇ、この前みたピアノの演奏、素敵だったじゃない?
...もし気に入ったなら、マリンも習ってみようか?」
見開いた目をキラキラさせる。
やっぱりやりたかったのね。
しかし次の瞬間、驚いて開いた口をキュッと結ぶとマリンはこう言った。
「...ううん、いい」
...あれ?
表情を曇らせるマリン。
「...やりたく、なかった?」
マリンはその質問には答えず、とても五歳の子供とは思えない発言をした。
「...ピアノって、たかいんでしょ?」
そうきたか。
きっとマリンは私とクラウドに気を使ってる。
お金の話をするのは気が引けたが、そんなことを気にしてやりたいことを諦めるのは本末転倒だ。
「さっきね、バレットにこの話をしたの。すっごく喜んでたわよ~
ピアノは絶対俺が買うんだ~!って、聞かなかった」
「とうちゃんが?」
少しだけ表情を明るくするマリン。
しかしその小さな眉は、すぐにまた下がってしまう。
「...でもやっぱり、いい」
「マリン?子供はお金の事なんて気にする事ないのよ?
それにマリンの父ちゃんはちゃんとお仕事頑張って、全然困ってなんかないんだから」
「ううん、おかねはもういいの」
「でも、とうちゃんがひとりでがんばってるのに、マリンだけたのしいことできないよ」
この時思った。
もしかしてマリンは、バレットが本当の父親じゃない事に気付いてるんじゃないだろうか。
だって、私がピアノを習った時はどうだった?
正直何も覚えていない。
両親になんか一欠片も気を使っていないはずだ。
父は特に私に甘かった。
いつも可愛い服を着せられて、部屋には欲しいものが溢れてた。
そして...それが当然だと思ってた。
「マリン、バレットはマリンが楽しいのが一番幸せなのよ?
マリンが今言ったこと聞いたら、きっとガッカリする。
そんな気、使うこと全然ないんだから」
もう少し考えてみてね。
そう最後に伝え、部屋を後にした。
バレットに相談してみようか。
持ち前の勢いで、マリンにうんと言わせてくれるかもしれない。
しかし無理やり習わせたって、マリンの気が乗らないならそれも可哀想な話だ。
それから後も、マリンにはそれとなく提案をしてみたが、結局望む返事はもらえぬまま、今に至っている。
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