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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Healin' you ll

Healin' you、第二弾!
本編です。今度はクラウドがティファを癒します。







Healin' you ll


人里離れた森林の奥に、男女の押し問答が続いている。いつもは女性側の意見がもっともであることが多かったが、この度は珍しく男の方が優勢であった。

「いいから。じっとしてろ」

遂には逃げられないよう手首を取られたティファはようやく抵抗を諦める。そっと頬に添えられた手に一瞬だけ顔をしかめ、あとはされるがままにすることとした。

つい先刻一行を襲ったモンスターの群れ。先陣を切り一頭目を撃破したティファは別のもう一体に鋭い爪で横っ面を殴打される。その攻撃は想定内だった彼女は大きく体勢を崩すことなくそいつも回し蹴りで仕留めるが、戦いの終わりに残されたのは痛々しい引っ掻き傷と赤い腫れだった。

陽の沈まりかけた夕刻、予定よりやや遅れて本日の旅の中継地点である湖のほとりに辿り着いた一行は短い休憩を取る。皆思い思いに身体を休める中、クラウドは「ちょっと来い」と手招きし、ティファを少し離れた木陰へと連れ出した。傷の手当をしようと頬に伸ばされた手を払った理由は、先程クラウド自身がメンバーに対し発したお達しとその行動が真っ向から反するものだったからである。

“予想以上に消耗が激しいな...回復も含めて出来るだけ魔力は温存しよう”

しかも、それ絡みでチームの雰囲気を少々悪くする小競り合いが起こった直後であった。

“それっくらいの傷、我慢しろや”
“ああ!?”

腕に刻まれた切り傷にケアルをかけようとしたバレットをシドがどやし、バレットは舌打ちをしつつも傷口に布を当て止血をするに留めた。ティファが頬に負った傷は見た目こそ悪かったが、正真正銘 “それくらいの傷” である。

さして深くもない創傷を消し去るには余りある真剣な表情に、僅かな傷跡も残すまいと念入りに頬を包み込む逞しい手のひらに、ティファは否が応でも自惚れてしまう。彼はユフィが顔に怪我をしても回復魔法の使用を許可したに違いないが、こうして直接肌に触れて治療を施す相手は自分だけだと信じたかった。

「唇、触るぞ」

口の中に広がった鉄の味が薄らいでいく。格闘家である彼女にとってこの手の傷はお馴染みのものであり、頬骨の赤みはすぐに濃い青紫へと変色するだろう。爪痕はすぐに手当をしなければ最悪薄っすらと跡が残るかもしれない。割り切っているつもりだったが、無意識に顔を仲間達から、特に恋心を抱く男性の視線の当たらない方向に逸らしてしまう。強がりはしたが、心に広がっていた黒い染みは温かい指先が発する光にみるみる消えていく。

「クラウドも、おでこ擦りむいてる」

色素の薄い前髪に見え隠れする、血の滲む擦り傷に気がついた。

「こんなの唾つけとけば治るよ」

今しがた自分に対してされた主張と真っ向から矛盾する投げやりな対処法に呆れるティファに、彼は自慢するように別の回答を用意する。

「男の傷は勲章なんだ」

思わず笑ってしまう。子供が転んで膝に作ったようなその傷は場所もへんてこで、勲章と言う程の風格はない。

「よし、綺麗になった」

お気に入りのおもちゃが直ったかのような口ぶり。自我を取り戻した彼は時たま無邪気な表情を垣間見せる。幼く輝いた蒼眼に視線を絡め取られ、ティファの反応が遅れた。それにつられてクラウドも傷の消え去った顔に見入り、ふと前言に若干の訂正を入れる。

「いや、もともと綺麗だけど...」

次の瞬間、思いがけず零れ出たらしくない発言に気付き、「な、何言ってんだ俺...」と彼は慌てふためく。一連の一人芝居をティファはクスクスと声を立てて笑う。己が立てた作戦を真っ先に破り幼馴染を特別扱いしたことを、後ほど彼は多少なりともからかわれてしまうのだろう。それを知りつつ目前まで迫った目的地に到着するまで我慢のならなかったクラウドに、不謹慎と思いつつも愛おしさが込み上げてくる。

頭をかきながら照れ隠しをしている彼の肩に手を置き背伸びをして、おでこの傷に唇をそっと押し当てた。一瞬ともしばらくとも感じるそれが終わった際、目を見開いた彼と視線が絡む。

「綺麗って言ってくれたお礼」

「先に戻ってるね」とティファは背を向け仲間の元へと駆けていく。一人その場に取り残されたクラウドは、少しの間何が起こったのか飲み込めないまま茫然としていたが、やがてその顔は真っ赤に染まっていく。そしてポツリと呟いた。

「そっちなんだ...」





宿屋のロビーに備え付けられたソファーに並び、救急箱を囲む若手の二人。ピンセットで獣の鼻に脱脂綿を押しつけてやっているユフィがこちらに気付く。

「クラウドぉ、おでこ手当したげよーか!?」

クラウドは足を緩めることなく「いや、いい」とそこを素通りして階段を登って行った。

「ふ~ん、あっそ」

軽傷であったためナナキも特段気に留めない。

ーー消毒するのが勿体無い

耳の良い彼だけに遅れて届いた独り言にキョトンと首を傾げたが、ユフィの乱暴な処置が再開されたため、すぐに関心を失い身構え直す。ティファの治療は良く効いたようで、クラウドの切なる願いに反して、かすり傷は数日も経たずに薄れていった。


******************


顔への傷など間違いなくフルケアです(怒)


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