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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

星の体内

セフィロス決戦直前です。




星の体内



風もないのに揺らめく無数の光のカーテンは、剥きだしの岩さえ淡いグリーン色に発光させる。だが夢かと見紛う幻想的な情景に浸ることは許されず、目の前に突きつけられているのは過酷な現実だった。遠のいた敵の気配。しかし、鼻を掠めた不穏な匂いに緊張の糸は張り詰めたままにする。

「しっ!」

口を開きかけた彼女を制し、中腰になりかける肩を掴み強引に引き寄せる。直後、身を隠していた岩を隔てた真後ろにズシンと重量感のある足音が響き地面が揺れた。続く荒い息、気配を伺っているのであろう。あと一メートルでも覗き込まれたらこちらの姿は炙り出され、戦闘は不回避だ。

今ここで一戦を交えれば、先程やり過ごしたもう一頭も引き返して来るだろう。対するこちらは他の仲間の位置を把握していない。二人で二体...厳しい状況だが、こんなところで屈するわけにはいかない。彼女を抱きかかえている腕に力を込め息を殺した。

数十秒、いや、そんなにもなかったのかもしれないが、いやに長く感じたその時間は、モンスターが運良くこちらから遠ざかる方角に進行方向を改めたことで終わりを遂げ、ほっと胸を撫でおろし腕を緩めた。しかし、同時に感じた小刻みな震えにその手はそこを離れることを思い留まる。

「ティファ、怖いのか?」

ごめんなさい、大丈夫。と、彼女は拳を握り直したり深呼吸をしたりして身震いを止めようと試みる。だが、生理的なものであるそれは簡単には収まってはくれなかった。先程の状況に、というわけではないだろう。魔力や体力の温存のために戦闘は極力避けていたが、慎重に戦えば命を取られるほどの相手ではない。彼女を脅かす対象は間違いなく、行く手に圧倒的な存在感を放つ黒く邪悪なあの男だろう。

「なんだろう...死ぬのは怖くない。でも、あなたを失うのは怖い」

控えめだけど、真っ直ぐな澄んだ瞳に気づかされる。ああ、本当にそうだな。
彼女と二人きりで過ごした昨夜の出来事に思いを馳せる。信じられないくらい柔らかくて、温かかくて...触れている部分から止め処なく流れ込んでくる互いの気持ちに感情はこの上なく高ぶり、無我夢中で彼女を貪った。俺達は今、生まれて初めて自分より大切なものを確認し合った者同士であって、それは俺達を強くもすれば弱くもさせる。

「俺って自分勝手なのかな」

意図が読めず、首を傾げる彼女。

「俺だって、ティファを失うのは怖いよ。でも、死ぬ時は一緒なんだって思うと案外怖くない」
「ただ、絶対に俺より先には死ぬな」

添えられた一言にティファは納得がいかなかったようで、形の良い眉がみるみる憂いを帯びて歪んでいく。

「確かに自分勝手ね」

私が悲しむのは気にしないんだ!そっぽを向いた頬が子供っぽく膨らむが、俺は自らの表情が徐々に緩みだしたことを自覚する。よかった、少し元気が出たみたいだ。まさか自分がこんな顔をしてのける人間だったなんて。意外な事実に気づかせてくれたのも、昨晩の彼女だった。

「じゃあどっちも生き延びなきゃな」

確かに酷い要求だ。反省し、始まりだしそうなイタチごっこに終止符を打つ。この旅の始めには触れることなんて思いもよらなかった細い腰に自らの手が添えられている光景に、鋭く研ぎ澄まされていた戦いの勘が丸みを帯びていく。まずいな、早くこの状況から脱出しないと感覚が狂いそうだ。指先にまとわりついてくる弾力を振り切ろうと、これが最後と心を決め、長い髪がかけられている方の耳元に唇を近づけた。

「死ねないよ。だって、全然抱き足りない」

突如として湿り気を帯びた発言にはたと動きを固めたティファは、しばしの後、ポスっと肩に頭を乗せてくる。突っ伏していて顔は見えないが、耳は真っ赤だ。

「ダメ...恥ずかし過ぎて、二度とあんなこと出来ないかも...」
「え...」

嘘だろ...思わず情けない声が出る。そんな馬鹿な話あるか。この戦いが終わりを遂げた暁には飽きるほど彼女を抱こうと企んでいた俺は奈落の底に落とされる。

「...良くなかった?」
「バカ!何言うのよ!」
「死にたくなってきた」
「バカバカバカ!冗談でもそういうこと言わないの!!」
「じゃあ、生きる希望をくれ」

馬鹿を連呼しながらも赤く染まった顔を上げてくれた彼女に額を重ね合わせ、唇を寄せる。遠くで仲間が俺達を呼ぶ声が聞こえてきた。もう行かなくちゃ、でもあと少しだけ。俺の胸を叩いて抗議を続けていた拳が、そっと首の後ろに回され、それに少しだけ驚いた瞬間無性にやるせない気持ちが込み上げてきて、背中に回した腕に思いがけず力が入る。もしかしたら、もう二度と...突如覆い被さってくる不吉な雲を振り払うべく、強く、強く。

ふわりと気まぐれに迷い込んできたライフストリームが俺達を包み込む。生も死も司どる、形あるものを超越した存在。俺も彼女もいつかは必ずここに還るんだ、それは決して悲しいことなんかじゃない。それでも視界の先をくすぐるその光の潮流のあたかも生命を宿しているような生気に満ちた動きは、俺達に「生きろ」と後押しをしているかのように見えて...再び強さを取り戻した掌は、その力を彼女にも分け与えるが如く不思議な熱を帯びる。気づけば彼女を襲った震えはすっかり姿を消し去り、穏やかな呼吸だけが俺の胸に重なっていた。


******************


FFRKのノーマルダンジョン、「星の体内1」の後ろにある背景、クラティがお互いを向きあってて萌えます。あんなシーン無印にあったっけ!?嬉しくなっちゃいましたので記念投稿。


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