Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
For my sake 1
AC後、ティファの家出。Cloti半分、Family半分。
五話に渡ります。
オリキャラも出てきます。
「勝手にしろよ。俺はもう知らないからな」
「ええ、勝手にするわ。さようなら」
売り言葉に買い言葉。
たわいもない喧嘩。
それで終わるはずだった。
For my sake 1
『二人共、本っ当にごめんね......
ご飯ちゃんと食べてる?困ったことない?』
『大丈夫だよ、ティファ!心配しないで!!』
『そうだよ!
俺達に気を使ったりなんかしないでさ。
うんと困らせて、絶対に謝らせようぜ!!』
明るい声にほっとする。
しかし同時に沸き起こる、黒い感情...
借りている電話だ。
また掛けるからね、そう告げ早々に切り上げた。
「終わったー?」
食べ物片手に寝っ転がっていた電話の持ち主が振り返る。
「うん。ありがとう、助かったわ」
私は今、一人ウータイにいる。
ユフィの家に世話になろうかと思ってたが、3分前に予定が狂った。
やはり宿を取ろう。
「別にいいのに」
不服そうな彼女には有り難かったが、そう何日も他人の家に転がり込む訳にいかない。
ユフィだけならまだしもここには彼女の父も住んでるのだ。
また顔を出すね、そう伝え家を後にした。
子供じみていて恥ずかしい話だが、私は今家出中だ。
クラウドと喧嘩をして。
何が原因だったかは覚えていない。
ということは、それくらいくだらない何かだったのだろう。
子供達が近くにいないせいもあった。
夜中で疲れていたのも加わり、いつになく互いを罵(ののし)り合う。
勢い余って “出て行く” と荷造りをし始めた私。
一度は “勝手にしろ” そう言った彼は部屋の入口で腕組みし、壁にもたれかかりながら言った。
“...子供達は?”
ハッと手が止まる。
しかし次に続いた発言が頭にきた。
“無責任だな”
無責任?
子供をほっぽり出して、何も言わずに消えたのはどこの誰よ?
確かに無責任ね。
でもクラウドにだけは言われる筋合いない!そんな言葉!!
荷物を鞄に詰める作業を再開させた。
駅前から深夜バスが出てる。
今から向かえば間に合うわ。
それまで無言だったクラウドだが、裏口を開けると最後に “おい” と強めに一声掛けた。
振り向くこともせずに言う。
自分でもびっくりするくらい、嫌味な台詞。
“クラウドには、私に家出するなって言える権利はないわよね?
私は一人で面倒みてたわ。
少しでも悪いと思うなら、自分もやってみせてよ!”
しかし目的地に着く頃にはすっかり頭は冷めていた。
喧嘩の後の、お馴染みの自己嫌悪。
触れてしまった...
二人の間の ‘タブー’ に。
わかってる。
あの時の彼と、今の私じゃ状況は全く異なる。
かたや死病に侵された身であり、かたや取るに足らない言い争いで腹を立てているだけの身だ。
それに、私と彼とじゃ仕事の種類が違う。
私は家での仕事、彼は外。
現実的に彼が子供の面倒を見るのは不可能だし、当然そこに彼の非はなかった。
(ユフィのところに一泊して、すぐに帰ろう...)
しかし脳裏には、拒絶の意を色濃く発する鋭い瞳。
私は頭の中で、“帰る理由” を必死に探し始めた。
「懐かしいな...」
ウータイ式のカラフルな敷布団に寝っ転がり一人ごちた。
旅の途中、ここには泊まったことがある。
さて、これからどうしたものか。
白状すると、私は “帰る理由” を子供達に求めてた。
家に電話をかける直前に期待する。
(寂しいよ、ティファ。早く帰ってきて...)
(ティファのご飯が食べたいよ...)
クラウドとの問題が解決しようとしまいと、そう言われれば帰らない訳にはいかない。
むしろ、胸を張って帰れる。
しかしそんな甘い期待を裏切るかのように、二人は私の不在を寂しがるどころか、自分達だけで身の周りの事をしなければならない状況に興奮さえしていた。
(さっき朝ご飯のコーンフレークを買ってきたよ!)
(隣のおばちゃんがおすそ分けをくれたから、これだけで3日はもつな!)
電話口に代わる代わる響く、明るい声。
その上、あろうことか二人は私の家出の応援までしてくれる。
(たまにはクラウドを “ぎゃふん” と言わせてやりなよ!
だからティファ、頑張って!!)
味方についてくれるのは有り難かったが、動揺から程遠い彼らの反応が少し寂しかった。
ううん、一方的に置いてきた子供達に文句を言うのは間違ってる。
おもむろに鞄から携帯電話を取り出した。
急いで出てきたため、充電器を忘れてしまう。
これが鳴りさえすれば素直に帰れるのに。
もう電池が切れるよ、クラウド...
うつ伏せでプラプラと宙に遊ばせていた足を、パタンと布団の上に降ろす。
「私、あの家にいた意味あったのかな...」
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