Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
p.p.Y
18' バレンタインSSは、ユフィのお節介その2です。
ふと思う時がある。
あの二人のじれったい関係においてはチョコボ頭ばっかりが吊るし上げられがちだけど...実は問題の本髄はティファなんじゃないかって。
だからアタシは今日も容赦はしない。
バレたら面倒?そんな目先の事なんか、気になんないね。
いつか有り難みに気付いた日には、揃ってアタシに頭でも下げに来るに決まってる!
p.p.Y
「なにも当日より前に来なくたって...」
「だってさ~去年はティファ失敗して、成功したのは全部クラウドにあげちゃったじゃん?今度は手抜き品まわされる前に確保しに来たってワケ!」
「文句言うなら食べてくれなくてもいいんですけど?」と取り上げようとすると、慌てて「いるいる!貰わせていただきます!!」と渡した箱を懐にしまう。
憎まれ口を叩き合いながらも笑顔は絶やさない。ウータイとエッジは近い距離ではない。とやかく言いつつも、彼女がこうしてはるばるやって来る理由の一つには、私の顔を見るという目的も含まれるに違いなかった。
「へへへ、タダより安いモノはない~ってね!」
......多分。
それに...
カウンターに積み上げた、お揃いの包装紙で包まれた箱達に視線を送る。
「後でちゃ~んと電話で確認するんだから、ちょろまかそうったってそうはいかないんですからね?」
「...それが人にモノを頼む態度?」
そして「パシられるんだから、お駄賃沢山もらっとかなきゃね!」と、お皿に並べたチョコレートを大きな口でパクリといった。
「で、当日は二人で何かすんの?デートとかさ」
仕込み料理を味見する手が揺れ、慌てて布巾で調理台を拭く。
「何かって...何もしないわよ。平日だし。子供達だっているんだし」
「ふ~ん、相変わらず熟年夫婦みたいなの」
ユフィはつまらなさそうに、また一つチョコを口に放り込む。
“熟年夫婦” その一言にズキリとやられる。過去に充実したバレンタインを過ごした訳でもないので、実際はそんな良いもんじゃない。
そうよね、恋人同士だったら普通は食事に行ったり少し特別な事をする日なんだ...なんなら営業終わりに一緒にお酒を飲むくらい誘ってみようかな。クラウドが疲れてなくて、次の日に差し支えない程度なら...14日って、何曜日だったっけ?
(ん?)
そこで先ほど電話で引き受けたばかりの配達依頼の内容を思い出す。
(14日...?)
なんだ...
「いないのか...」
「何さっきから百面相してんのぉ?」
コンロの火を止め横を向くと、最後の一欠片をつまむユフィはキョトンとする。口の周りを茶色く汚したその顔をまじまじと見つめた。
「そうだ!!」
(別に構わないけどさ~)
他と違い、待ってれば取りに来るというんだから断る理由もない。帰郷ついでの仲間へのチョコ配りが完了し、一つだけ手元に残った箱を弄ぶ。きちんとチョコをあげるくらいだから上手くいってないことはないだろうけど、なんだかスッキリしないのは先日の様子を見る限り...
(たいして進展、なさそ...)
“当日に受け取って欲しいし...それにコレ渡すのって、毎年なんだか恥ずかしくって”
“恥ずかしい”って...いったい何年一緒に住んでんのよ!どうせ直接だとしても渡すのが精一杯で甘い言葉を添えて...なんて夢のまた夢なんだろうな。しかも...
(何この、色気のないラッピング!)
普通特別な人のものって、赤とかピンクとかキラキラしたリボンとかで気合い入れるもんなんじゃないの? まぁこのシンプルな淡いブルーも悪くないけど、でも...
“全部同じだから、混ぜちゃっても平気だからね!”
仲間と一緒って...
“依頼” の品をポンと机に置き、ハァーっと長い溜息をついた。
アイツって、明らかにお膳立てしてやらなきゃダメなタイプなのに。それに女の方からアプローチなんかされたら、喜んで鼻の下伸ばしそうじゃん。なんでわかんないかなぁ。
ポツリと物寂しく置かれたプレゼントを眺めてると、ふとひらめいた。
ふふん、こんな包装。日雇いバイト百戦錬磨のユフィちゃんの手にかかれば、お茶の子さいさいなんだからね!まとわりつく紙をビリビリと躊躇いなく破き、引き出しの文房具を漁った。
吊り橋を幾つか渡り険しい山道を越えた後は、ひたすら海岸沿いに北上する。今でこそ笑い話だが、ここをマテリア抜きの丸腰で延々と歩かされた時はあの顔に本気で殺意を覚えたっけ。
夕日はその底を海面に隠しつつあった。この付近のモンスターはやや手強く、日が暮れると厄介だ。幸い件数は少ないしさっさと村を出て明るい内に距離を稼ぎ、暗くなった後は目につかない、だけど最短距離のコースを...
配達先の民家を出て、頭の中で次のルートを組み立てていると思い出した。
“クラウド、今日ってウータイへの配達が入ってるよね?その時ついでに寄って欲しい所があるんだけど...”
場所は後で連絡するね!そう要件を告げた短い電話。バイクに引っ掛けた携帯をむしり取ると、言われた通りそこには一件の未読メール。
行き先は...
...今まさに苦々しく思い浮かべたばかりの顔だった。
(何だよ、二人して遊んでるのか?)
働いてる最中におふざけは勘弁して欲しかった。ティファがこんな事をしてくるのは珍しいが...
(行かなくていいや...)
視界の片隅に映る建物から逃げるよう電話をしまおうとした瞬間それは音を発し、反射的に通話ボタンを押してしまう。
『遅い!!待ちくたびれたんだけど。何モタモタしてんの!?言っとくけど、ティファの頼みなんだからね!』
...忍者には予知能力があるのか?力なく肩を落とし、ノロノロとフェンリルの向きを変える。何より、最後の一言が気になった。
“ティファの頼みなんだからね!”
『はい、セブンスヘブンで...あ、クラウド?』
開店直前の忙しいタイミングにも関わらず、笑みがこぼれる。
『今いま受け取ったよ。ありがとう』
『ふふふ、ビックリした?よかった、ちゃんと行ってくれて。 ユフィに聞いたら中々来ないって言うから...』
仕事の邪魔になる様な催促はしないでねって言っておいたけど...守ってくれたかしら?
『ティファ...それで、その......
.........俺もだ』
『ん? 何が?』
『...そ、そうだよな。ティファにだけ勇気を出させて、俺は簡単に済まそうだなんて甘いよな。俺だって、たまにはビシッと...』
『クラウド、何ブツブツ言ってるの?全然聞こえないよ...』
『ティファ?俺も、その.........あのさ...』
『......うん?』
『えっと、あ...』
『あ...?何?』
『ええと、すごく...その、ティファだけを...』
『...うん?』
たっぷりと数分間、歯切れの悪い会話の後に続いた愛の告白に耳を疑う。
『え!?どっ...どうしたの急に。クラウド.........ほんとに?』
『こんな嘘、つくはずないだろ。...まだ依頼が残ってるから、もう切るな』
『うん...言ってくれて嬉しい...』
『...俺もだ』
ガチャリと通信が途絶えた後も単調な電子音だけが響く受話器を握りしめ、混乱した頭を整理しようと試みる。
去年も、その前の年もあげたのに...
クラウド...当日に渡されたのがそんなに嬉しかったのかな。ううん、今回のチョコレートの出来が格別に良かったのかも。ところで “俺も” ってなんだろう?何にせよ...
「頑張って作って、良かった...」
「ティファ〜!電話終わったの?クラウド、何だって?」
慌ただしくテーブルクロスをかけて回るマリンが振り返る。
「...ティファ、どうかしたのか?」
カトラリーを並べていたデンゼルが動きを止め、顔の前で手をヒラヒラ振った。
「うわっ!これ絶対に熱あるって。見てよ、この頬っぺた...」
「え~、大変!!今日は手作りチョコ目当てにお客さんが沢山来るのに...」
「クラウド、ティファに何言ったんだよ!!」
なんとか言い切った...
フェンリルにもたれ、ほっと一息つく。するとフタの開いた箱の中身が目に入った。
そうだ。そう言えば、こっちがメインだったな。中の一つを口に入れるが、味はサッパリわからない。視線は手に握られたカードの文字に釘付けのままだ。
くだらない悪戯かと思ったら、大切な人からの年に一度の贈り物だった。しかも可愛らしい包装を解いた中からは...
彼女がストレートに気持ちを伝えてくる事は滅多にない。...いや、初めてかもしれない。
(事故らないようにしないとな...)
すっかり予定が狂ってとっぷり暮れた陽以上に、未だ激しく鼓動を打ち続ける心臓の方がまずい。最後にそれを一瞥し、チョコレートと一緒に丁重に鞄にしまう。
キーを回しエンジンをかけ直した。視界から消し去っても、そのメッセージは頭を駆け巡ったままだ。
“My Dearest Cloud
I love you so much!!
Tifa”
******************
うちのクラウドはこれくらいでいっぱいいっぱいです。
p.p.=代理でお伝えします!
あの二人のじれったい関係においてはチョコボ頭ばっかりが吊るし上げられがちだけど...実は問題の本髄はティファなんじゃないかって。
だからアタシは今日も容赦はしない。
バレたら面倒?そんな目先の事なんか、気になんないね。
いつか有り難みに気付いた日には、揃ってアタシに頭でも下げに来るに決まってる!
p.p.Y
「なにも当日より前に来なくたって...」
「だってさ~去年はティファ失敗して、成功したのは全部クラウドにあげちゃったじゃん?今度は手抜き品まわされる前に確保しに来たってワケ!」
「文句言うなら食べてくれなくてもいいんですけど?」と取り上げようとすると、慌てて「いるいる!貰わせていただきます!!」と渡した箱を懐にしまう。
憎まれ口を叩き合いながらも笑顔は絶やさない。ウータイとエッジは近い距離ではない。とやかく言いつつも、彼女がこうしてはるばるやって来る理由の一つには、私の顔を見るという目的も含まれるに違いなかった。
「へへへ、タダより安いモノはない~ってね!」
......多分。
それに...
カウンターに積み上げた、お揃いの包装紙で包まれた箱達に視線を送る。
「後でちゃ~んと電話で確認するんだから、ちょろまかそうったってそうはいかないんですからね?」
「...それが人にモノを頼む態度?」
そして「パシられるんだから、お駄賃沢山もらっとかなきゃね!」と、お皿に並べたチョコレートを大きな口でパクリといった。
「で、当日は二人で何かすんの?デートとかさ」
仕込み料理を味見する手が揺れ、慌てて布巾で調理台を拭く。
「何かって...何もしないわよ。平日だし。子供達だっているんだし」
「ふ~ん、相変わらず熟年夫婦みたいなの」
ユフィはつまらなさそうに、また一つチョコを口に放り込む。
“熟年夫婦” その一言にズキリとやられる。過去に充実したバレンタインを過ごした訳でもないので、実際はそんな良いもんじゃない。
そうよね、恋人同士だったら普通は食事に行ったり少し特別な事をする日なんだ...なんなら営業終わりに一緒にお酒を飲むくらい誘ってみようかな。クラウドが疲れてなくて、次の日に差し支えない程度なら...14日って、何曜日だったっけ?
(ん?)
そこで先ほど電話で引き受けたばかりの配達依頼の内容を思い出す。
(14日...?)
なんだ...
「いないのか...」
「何さっきから百面相してんのぉ?」
コンロの火を止め横を向くと、最後の一欠片をつまむユフィはキョトンとする。口の周りを茶色く汚したその顔をまじまじと見つめた。
「そうだ!!」
(別に構わないけどさ~)
他と違い、待ってれば取りに来るというんだから断る理由もない。帰郷ついでの仲間へのチョコ配りが完了し、一つだけ手元に残った箱を弄ぶ。きちんとチョコをあげるくらいだから上手くいってないことはないだろうけど、なんだかスッキリしないのは先日の様子を見る限り...
(たいして進展、なさそ...)
“当日に受け取って欲しいし...それにコレ渡すのって、毎年なんだか恥ずかしくって”
“恥ずかしい”って...いったい何年一緒に住んでんのよ!どうせ直接だとしても渡すのが精一杯で甘い言葉を添えて...なんて夢のまた夢なんだろうな。しかも...
(何この、色気のないラッピング!)
普通特別な人のものって、赤とかピンクとかキラキラしたリボンとかで気合い入れるもんなんじゃないの? まぁこのシンプルな淡いブルーも悪くないけど、でも...
“全部同じだから、混ぜちゃっても平気だからね!”
仲間と一緒って...
“依頼” の品をポンと机に置き、ハァーっと長い溜息をついた。
アイツって、明らかにお膳立てしてやらなきゃダメなタイプなのに。それに女の方からアプローチなんかされたら、喜んで鼻の下伸ばしそうじゃん。なんでわかんないかなぁ。
ポツリと物寂しく置かれたプレゼントを眺めてると、ふとひらめいた。
ふふん、こんな包装。日雇いバイト百戦錬磨のユフィちゃんの手にかかれば、お茶の子さいさいなんだからね!まとわりつく紙をビリビリと躊躇いなく破き、引き出しの文房具を漁った。
吊り橋を幾つか渡り険しい山道を越えた後は、ひたすら海岸沿いに北上する。今でこそ笑い話だが、ここをマテリア抜きの丸腰で延々と歩かされた時はあの顔に本気で殺意を覚えたっけ。
夕日はその底を海面に隠しつつあった。この付近のモンスターはやや手強く、日が暮れると厄介だ。幸い件数は少ないしさっさと村を出て明るい内に距離を稼ぎ、暗くなった後は目につかない、だけど最短距離のコースを...
配達先の民家を出て、頭の中で次のルートを組み立てていると思い出した。
“クラウド、今日ってウータイへの配達が入ってるよね?その時ついでに寄って欲しい所があるんだけど...”
場所は後で連絡するね!そう要件を告げた短い電話。バイクに引っ掛けた携帯をむしり取ると、言われた通りそこには一件の未読メール。
行き先は...
...今まさに苦々しく思い浮かべたばかりの顔だった。
(何だよ、二人して遊んでるのか?)
働いてる最中におふざけは勘弁して欲しかった。ティファがこんな事をしてくるのは珍しいが...
(行かなくていいや...)
視界の片隅に映る建物から逃げるよう電話をしまおうとした瞬間それは音を発し、反射的に通話ボタンを押してしまう。
『遅い!!待ちくたびれたんだけど。何モタモタしてんの!?言っとくけど、ティファの頼みなんだからね!』
...忍者には予知能力があるのか?力なく肩を落とし、ノロノロとフェンリルの向きを変える。何より、最後の一言が気になった。
“ティファの頼みなんだからね!”
『はい、セブンスヘブンで...あ、クラウド?』
開店直前の忙しいタイミングにも関わらず、笑みがこぼれる。
『今いま受け取ったよ。ありがとう』
『ふふふ、ビックリした?よかった、ちゃんと行ってくれて。 ユフィに聞いたら中々来ないって言うから...』
仕事の邪魔になる様な催促はしないでねって言っておいたけど...守ってくれたかしら?
『ティファ...それで、その......
.........俺もだ』
『ん? 何が?』
『...そ、そうだよな。ティファにだけ勇気を出させて、俺は簡単に済まそうだなんて甘いよな。俺だって、たまにはビシッと...』
『クラウド、何ブツブツ言ってるの?全然聞こえないよ...』
『ティファ?俺も、その.........あのさ...』
『......うん?』
『えっと、あ...』
『あ...?何?』
『ええと、すごく...その、ティファだけを...』
『...うん?』
たっぷりと数分間、歯切れの悪い会話の後に続いた愛の告白に耳を疑う。
『え!?どっ...どうしたの急に。クラウド.........ほんとに?』
『こんな嘘、つくはずないだろ。...まだ依頼が残ってるから、もう切るな』
『うん...言ってくれて嬉しい...』
『...俺もだ』
ガチャリと通信が途絶えた後も単調な電子音だけが響く受話器を握りしめ、混乱した頭を整理しようと試みる。
去年も、その前の年もあげたのに...
クラウド...当日に渡されたのがそんなに嬉しかったのかな。ううん、今回のチョコレートの出来が格別に良かったのかも。ところで “俺も” ってなんだろう?何にせよ...
「頑張って作って、良かった...」
「ティファ〜!電話終わったの?クラウド、何だって?」
慌ただしくテーブルクロスをかけて回るマリンが振り返る。
「...ティファ、どうかしたのか?」
カトラリーを並べていたデンゼルが動きを止め、顔の前で手をヒラヒラ振った。
「うわっ!これ絶対に熱あるって。見てよ、この頬っぺた...」
「え~、大変!!今日は手作りチョコ目当てにお客さんが沢山来るのに...」
「クラウド、ティファに何言ったんだよ!!」
なんとか言い切った...
フェンリルにもたれ、ほっと一息つく。するとフタの開いた箱の中身が目に入った。
そうだ。そう言えば、こっちがメインだったな。中の一つを口に入れるが、味はサッパリわからない。視線は手に握られたカードの文字に釘付けのままだ。
くだらない悪戯かと思ったら、大切な人からの年に一度の贈り物だった。しかも可愛らしい包装を解いた中からは...
彼女がストレートに気持ちを伝えてくる事は滅多にない。...いや、初めてかもしれない。
(事故らないようにしないとな...)
すっかり予定が狂ってとっぷり暮れた陽以上に、未だ激しく鼓動を打ち続ける心臓の方がまずい。最後にそれを一瞥し、チョコレートと一緒に丁重に鞄にしまう。
キーを回しエンジンをかけ直した。視界から消し去っても、そのメッセージは頭を駆け巡ったままだ。
“My Dearest Cloud
I love you so much!!
Tifa”
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うちのクラウドはこれくらいでいっぱいいっぱいです。
p.p.=代理でお伝えします!
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