Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
All I can do!
新装Seventh Heavenとティファのために、クラウド大奮闘!
コメディ調です。
クェ...
気遣わしげに覗き込まれ、ゆっくりと首筋を撫でてやる。
「大丈夫だ」
唯一乗っても平気な移動手段だが、船酔い後にこの揺れはこたえる。
それでもフカフカの背の積荷を眺めると疲れがとれた。
腰掛けていた岩から立ち上がり前方を仰げば、遠くに街並みが見える。
俺の望む笑顔まで、あと少し。
All I can do!
開け放たれた窓から流れ込む春先の空気はやや肌寒いが、起き抜けの寝惚け頭を覚ますには丁度良い。
近隣に横たわるかつての都市と異なるのは、差し込む朝日と小鳥の鳴き声。
そんな清々しい朝食の席に、先程から相次ぐのは重苦しい溜息だ。
「大丈夫だよ、ティファ!!
近所の魚屋さんも、絶対行くって張り切ってたよ!」
「むしろ俺は混み過ぎて座れない客が出ないか心配だぜ。
...昔みたいにな」
しかしそんな激励も耳には入ってなさそうだ。
何一つ心配してない身としては、上の空で黙々と口を動かす姿は滑稽な程で、つい笑みが浮かぶ。
「心配し過ぎ」
「だって...」
そして、あと2日かぁ、と盛大に息を吐く。
向かいでやれやれと顔を見合わせる、似てない親子。
「うん、すごく美味い」
今まで不味かったためしなどないが、ことさら丁寧に感想を述べる。
「本当?よかった!」
じゃあコレも追加っと、とペンを走らせるのはメニューのリストか何かだろう。
3口程の試作品を終わらせ、手元を覗き込む。
「こっちのメモは何だ?」
「ん?これは集め切れなかった食材とか調理道具とか...
お店が始まってからゆっくり探そうと思って」
「ふぅん」
紙を手に取り10数個ほどの項目を前に思い当たる。
「これ、今から俺が買って来てやるよ」
「えっ?」
「開店に間に合うにこした事はないんだろ?」
「そりゃそうだけど...でも、何だか悪いわ」
「これくらい、お安い御用だ」
そう説き伏せ、手早く身仕度を整え外に出た。
“エッジはだいたい回ったから、あるとしたらカームかな。
本当にありがとう、助かっちゃう!”
ここ最近、陰鬱だった顔に明るみが差しただけでも儲け物だ。
――やってみろよ、ティファ
ティファなら絶対に上手くやる。
必要なのは後押しだけだ。
そう思い、伝えた言葉。
あの一言で心を決めてくれたのなら、俺にもその不安の一端を担う責任がある。
(出来る限りの手助けをしてあげよう)
並んだ文字の中には見慣れない名前もあるが...
(まぁ、なんとかなるだろ)
もはや敵ではないモンスターをなぎ倒し、歩き慣れた道を進んだ。
「う~ん、ジュノンまで行けばあるかもしれないけどねぇ」
包装された品を手に、店の親父の推言を吟味する。
(チョコボを使えば、あっという間だよな)
天気も良いし、久々にあの頃の気分を味わうのも面白いかもしれない。
迷わず携帯電話を取り出した。
『ティファ?ああ、俺だ。
今日は晩飯は先に食べててくれていいから』
『クラウド...どこまで行ってるの?』
『カームだよ』
まだ、な。
質問を投げ続けるティファを言いくるめ、チョコボファームまで急いだ。
懐かしい顔達に軽く挨拶し、調子の良さそうな一匹を選ぶ。
「悪いが、少し飛ばして貰うぞ」
「相変わらずクラウドさんの言う事は良く聞きますね!」
手綱を握ると黄色い獣は軽快に走り出した。
「ここら辺では見かけた事がないな。
コスタには出てるって聞いたけど...」
あと1つだけなんだけどな...
両手に溢れる包みを抱え考え込む。
大陸を越えるとなると流石に大事だ。
しかも海を渡るという事は...
でも、それ程珍しい物なら尚更見つけてやりたい気もする。
何より帰宅した折に予想される反応が魅惑的だ。
心を決め、ポケットに手を突っ込んだ。
『ティファ、今夜は泊まって帰る』
『クラウド!?本当にどこまで行ってるの?』
『...すぐ近くだ』
今度は半ば無理やり電話を切った。
船着場の鉄の塊を見上げ生唾を飲むが、背に腹は代えられない。
「すみません、ついさっき売り切れたところなんですよ...」
「そうか...」
折角ここまで来たのについてないが、在処はわかった。
また日を改めて出直そ...「うっ...」
「兄ちゃん...顔色が真っ青だけど、大丈夫か?」
「何でもない...」
...早く横になりたい。
だがそこに至るまでは往路と同じ道程を行く必要がある。
結局、一睡も出来ないまま船で夜を明かし、休み休みチョコボを走らせ家に辿り着いたのは夕刻だった。
「もう!クラウドが気がかりでお店どころじゃなかったんだから!!」
頬を膨らませるティファに謝るのもそこそこに、戦利品を差し出した。
「ティファ、これ...全部は無理だったんだけどさ」
「...え?」
本来の要件をすっかり忘れてたらしいティファは、手渡された品を前に目を丸くする。
「わぁ、すごいね!殆どあるじゃない!!」
期待通りの表情に満足し、店のソファーに身を預け体を休める。
気付けばティファは野菜の1つを手に動きを止めていた。
「ティファ?何か問題でもあったか?」
「う、ううんっ!何でもない!!」
心配事の1つが消えたその後のティファは明るかった。
「クラウドのお陰で、すっごく美味しく作れるようになったからね!」
買いたての調味料で作られた夕飯を空きっ腹に収め、開店準備の報告に耳を傾ける。
「見て?このメニューの絵、マリンが描いてくれたの」
「へぇ、良く描けてるな」
「バレットも入口に呼び鈴をつけてくれたのよ?」
「そうか。明日はきっと沢山鳴るよ」
「壁がまだ少し寂しいけど...」
なら、この前手に入れたカメラで写真を撮って来てやる。
額縁に入れて飾れば格好がつくだろ。
「クラウド?」
...なんだ?
クラウド!?
...どうかした、か? ティ...ファ......
唐突に開いたドアから覗いた顔と目が合い、慌てて倒れ込んできた体を押し上げる。
「お、おう。邪魔したな」
「バレット!? ちちち違うの!!
これはっ...えっと、クラウドったらいきなり眠っちゃって...!」
その時、先ほど取り付けたばかりの呼び鈴が鳴った。
「今晩は!セブンスヘブンってここですか?
配達に来ました!」
「配達?何も頼んでないはずですけど...」
「そこで寝てる彼が昨日買いに来たんですよ。
本当はここまで運んだりはしないんですけど、余りにも残念そうで...
急遽入荷したんで、住所を聞いておいて良かったです!」
伝票にサインをし、書かれた地名に飛び上がる。
「コスタ!?」
「どこまで行ったかと思えばよ...」
バレットも呆れ顔だ。
そしてヒョイとクラウドを担ぎ、居住区へ向かう。
「ああん?何でこんな所にバットなんかがあるんだ!?」
「......」
「ありがとう、バレット」
「ああ。お前も今日は早く寝ろよ」
お休みなさいを伝えるとバレットは部屋を出て行く。
「もう、全然近くなんかじゃなかったじゃない」
おでこを小突くが起きる気配はなさそうだ。
ふと思い付き、しっかりと閉じられた扉と瞼を交互に見比べる。
朝は私の方が早く目が覚める自信があるし...
「今日だけ、甘えさせてね」
明日からの力を貰うために...
被せたばかりの毛布に身を滑り込ませ、ピクリともしない肩に額を寄せた。
「ティファ」
「!?」
予想外の呼び掛けに慌てて顔を上げるが、相変わらず瞳は閉じられたままだ。
「...あと1個、で...全部...揃うよ...」
口から零れる寝言にホッとする。
毛布を掛け直し、体を寄せ再び目を瞑った。
「もう全部集まったよ、クラウド」
ブロッコリーはカリフラワーだったし、水切りバットは野球のバットだったけど...
“頑張れ”
なんて言葉より、ずっと心強い励まし。
不慣れなあなたの、精一杯の応援。
きっと...結果に繋げてみせるから。
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ボケすぎ?
初めてのおつかい。
All I can do=出来る限りを
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