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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

prithee... 11 (fin.)


prithee... 10、の続きです。

完結します。
長い間、お付き合いどうもありがとうございました。







「いいよ...」

予想外の返答に、身体をまさぐる手が止まる。

「私も......もう...」

「......楽になりたい...」

頬に一筋の涙が伝った。


「もう......教師、辞めようかな...」


prithee... 11 (fin.)


(“彼の身は潔白です”って、あの石頭に噛み付いたぜ?
あの先生、可愛いだけじゃないな!)

(亡くなったお母さんが学校の先生だったから、教師目指したんだって)

全身から力が抜けていった。

俺は...ただ一人俺を信じてくれて、俺を救ってくれた彼女を好きになったんだ。
皆に囲まれ、笑顔を弾けさせる彼女を好きになったんだ。
いつだって夢に真っ直ぐ目を輝かせる彼女を...好きになったんだ。

(教師、辞めようかな...)

目の前の虚ろな瞳をした人は...

             ......彼女じゃ、ない。

それに...

(お前もう、あんないい加減な事するなよな)

(行かないで)

胸にトンと拳が当たり、体が力なく揺れる。

「どうして...」

「どうして、7つも下に生まれたのよ...
どうして私の生徒なんかに...生まれたのよ...」

泣きじゃくり胸を叩き続ける彼女に返せる言葉はなかった。

俺さえいなければ、あなたはあなたのままで居られるんだね。

肩を震わせるティファをそこに置き、静かに教室を後にした。





「食事でも行きませんか?金曜日ですし」

「.........」

「あ、変な意味じゃないんですよ。
ただ、最近あまりちゃんと食べてないのかなぁって心配で...」

慌てて決まり悪そうに笑う数学教師。
彼には先日告白をされたが、断った。
それでも変わらず声を掛けてくれる。

「別にここでも良いんです。何か相談に乗れませんか?」

手離す決意をしても、心と身体に染みついたままのクラウド。
精神的に参っていた私は長年の秘密を初めて人に明かす。

その優しい瞳になんとなく確信した。
きっと彼は、口を割らない。



「驚いたな...」

怖くて顔を見られない。
話して楽になったのと同時に襲われる恐怖心。
同じ教育者の彼は、今どんな目で私を見てるのだろう。

「どっちもどっちって、感じかな?」

「?」

発言の意図が掴めず、恐る恐る顔を上げた。

「結婚前に他人に関係を明かしたがった彼は焦り過ぎだったし...
...それに、先生はやっぱり真面目なんですね」

ゆっくりと首を振る。
...真面目なんかじゃない。
だったら、こんな事にはならなかった。

「僕は先生が彼と結婚しても、白い目で見る人は少ないと思います」

「そんな訳、ないです...」

「そりゃあ一部の人は後ろ指を差し続けるかもしれませんね。
ただでさえあなたは目立ちますし」

「......」

「でも何年も先生の働きぷりを見てますから。ここの皆は」

「それにちょっと無愛想ですけど、彼が良い子なのも皆知ってます」

そして何でアイツから嫌われてたのかやっとわかったな、と笑い飛ばす。
やがて、こんな事いって気が楽になるとも思えないけど...と続けられた。

「あなたが僕の生徒だったとしても、僕はきっと諦めない」

肩から少しだけ荷が降りた。
初めて第三者に肯定された、この想い。
でもきっと、それは私が本当に欲しいものとは違う。

「だからもう、そんな顔しないで下さい。
自分を許してやって下さい」

肩に控えめに置かれた手が温かい。
罪悪感を感じずに人の温もりを感じたのはいつぶりだろう。

このまま楽な道を選ぶのは簡単だけど...
本当に望むものはまだ見えないままだけど...

だけど、私はまだきっと...





もう長らくティファとは会ってない。
エアリスとも核心に触れないまま相変わらずの関係だ。
しかし始終上の空の俺に向けられる視線は、何かを悟ってる。

あの涙で一度は決意したが、諦めきれなかった。
改めて明らかとなった俺への想い。
それを断ち切ろうと無理矢理ついた嘘。
痩せた身体と、胸を叩き続ける手。

「インターハイなんて、俺らの時代じゃ考えられなかったよなぁ」

食器とグラスがぶつかり合う音が頭に無機質に響く。
今日は元サッカー部の集まりに参加している。

「なんだ、やっぱりデキてたんじゃん」

「どうする?卒業生からも何かお祝いする?」

耳に過(よ)ぎった会話に冷や汗が出た。

ダレトダレガ、ケッコンスルッテ?

いつ?
どこで?

喉から質問が出掛けたが、押しとどめた。
隣にいる彼女をまた傷つけるのか?

「クラウド、大丈夫?顔色悪いね、酔った?」

「いや...でも今日は早く帰ろうかな」

目を背けやり過ごすしか、出来ない。





「明日の試合、楽しみだな」

「どうせまた、ザックスと賭けてるんでしょ?」

手にはサッカー観戦のチケット。
休みを映画で潰さなくなってから久しい。
中古で買い漁ったDVDは捨てられず、未だベッドの下に顔を覗かせてるけれど。
埃の積もったそれをぼんやりと眺めてると、エアリスは神妙な面持ちに変わる。

「明日、行くのやめようか?」

「はぁ?」

いきなり何を言ってるんだ。

小さな紙切れを差し出された。
そこには綺麗な字で書かれた時間と場所。

「行っていいよ」

そう言われ思い当たる。
まさか、これは...

「結婚式、明日だって」

「先生もきっと、待ってると思う」

目を伏せ、グッと唇を噛み締める。
隠してる俺に合わせてるだけで...
平気なフリをしてるだけで...
俺の気持ちは彼女にバレバレだ。

その紙を受け取り、強く握り締めた。










~1年後

人混みに塗(まみ)れた雑踏を一人歩く。
このままじゃ授業に大幅に遅刻だが、歩調は変えない。
いつもの事だ。

俺はあの日、行かなかった。

(行っていいよ)

俺を支え続けてくれた彼女を...
自らを省みず言ってくれた彼女を...
降り捨てられなかった。

視線の先に見つけた姿に愕然とし、足が止まった。
相手も同時に俺の存在に気付く。

「あ...」

薬指の指輪より先に、少し膨らんだお腹に目が行った。

「おめでとう」

「...ありがとう」

互いの間を流れる沈黙を破ったのは彼女だった。

「それじゃあ...」

「あ...」

「...元気で」

寂しそうに微笑み、だけど躊躇うことなく去って行く。

遠くなる背中。
飽きる事なく梳(す)いた、真っ直ぐな黒髪。
確かに腕の中にあったはずの...

...何度も愛した身体。

行かないで...
行かないで!

ずっとずっと...会いたかったんだ!
行かないでくれよ!!

次々と頭に沸き起こる疑問。

今、心から幸せか?
俺の事、本当に好きだった?
“あの日” 俺が式場に行ってたら、何か変わってた?

なぁ、もし...

俺がもう少し早く生まれて、あなたの生徒じゃなかったら、お腹の子供は誰の...


やめろ。


首を振り、唇を噛み締め歩き出した。

もう無駄なんだ。
もう...届かない...

だけど心の叫びは止まらない。
涙も...止まらない。

俺は本当に好きだった。
今でも...
そしてきっと、これからもずっと...

もっと、もっと...
伝えれば良かった。

例え届かなくても。
例え無駄であったとしても。





もしも願いが一つだけ叶うなら、迷わず選ぶ。

どうか...

どうか......

次、巡り会えるならば......


......二人をもっと近くに...

                .........生まれ落として下さい。




fin.


******************


そして幼馴染として生まれ変わったと。
Happy EDもほのめかしてたので、期待されてた方には申し訳ないです。
でも現実世界で結ばれた訳だし、こんなのも許して下さい。

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