Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
prithee... 8
prithee... 7、の続きです。
「え? ちょっ...何するの!?離して!!」
数名の教職員がこちらに怪訝な視線を送る。
「すみません、うるさくして。
大丈夫です、彼は卒業生で...」
言い終わる前に、部屋から引き摺り出していた。
prithee... 8
「先生は以前にも彼とプライベートの関わりを持った事がありましたね?」
高鳴る心臓。
震える身体から汗が吹き出る。
さっきの電話は、これだったんだ...
(ん? 着信...?)
職場でのやりとりはメールのみだった。
(間違えたのかしら?)
「先生、いま少しよろしいですか?」
「あ、はい」
携帯を保留にし、もうすっかり関係を修復した教頭先生の後に続く。
「間違っても、そんな関係ではありませんよね?」
釘を刺され、精一杯冷静な声を作る。
「...はい」
「入試まで、こうやって会うのはやめにしようか?」
「なんで!?
ティファの家で会うのの何が問題なんだ?」
予想通り、動転する彼。
でも、今回の事だけじゃない。
“それに試験さえ終われば...”
“うん...”
一度は納得してくれた彼は、再びズルズルと部屋に入り浸った。
気持ちは分かる。
高校生の彼にとって、一年は短くない。
あまり強くは言えなかったが、この機会は丁度良いかもしれない。
それに...
「この駅に住んでるでしょ...」
「だから?もし会ったとしても、用があるって言えばいい」
「.........」
そうだけど、疑いは増すに決まってる...
やっと楽しくなってきた仕事。
辞めたくはなかった。
眉間に皺を寄せる彼をやんわりと諭す。
「連絡は今まで通りするし...気持ちは変わってないから。
卒業するまでだから。ね?」
彼はしばらくの間私の目をみつめていたが、その視線が揺らがないのを悟ると根負けしたように俯いた。
「............わかった」
ピッ...
残業で一人居残った暗い職員室に、電子音が響く。
メールをmicro SDへ移しては消した。
“初めてB判でたよ!
センター国語も平均超えた!!
この調子で頑張るな!!!”
何度も読み返したメール。
誕生日、日付が変わってすぐにくれた着信。
“気持ちは変わってないから”
“彼への気持ち” は変わってない。
でも...
“卒業するまでだから。ね?”
私にとって、卒業前に関係がバレるのとそうでないのとは、かなり意味合いが違った。
卒業後に付き合ったと言っても、もはや信じる人はいないだろう。
“間違っても、そんな関係ではありませんよね?”
“...はい”
将来私から報告を受けた彼らは何を思うんだろう。
転校?
狭い世界だ、きっと何も変わらない。
傷ついた彼より、身の保身に頭を一杯にする自分の醜さと、それでも彼を失えない強欲さに飽きれ果てる。
「本当に、バカだ...」
悔しくて涙が溢れた。
普通とは違う恋。
何故もっと慎重にならなかったんだろう。
“今年の誕生日も、あそこに行こうな”
携帯の消去ボタンを押す。
そんなちっぽけな約束さえ、もう叶わない...
俺は必死に勉強した。
会えない寂しさを紛らわすように。
幸いあれ以来人前での接触を控えた俺達の噂は、噂で終わろうとしている。
『明日はお誕生日だね』
(会いたい...せめて明日くらいは)
いや、そんな我侭で困らせちゃいけない。
愛しい声に耳を傾け、唇を噛み締める。
『うち...来る?』
心臓が跳ね上がった。
『いいの?』
『うん、誕生日だもん。ケーキ焼くね。
それに...』
“私も、会いたい”
その発言に思い知らされる。
目を背けてただけで...
会えない事なんかよりも...
...俺は、彼女の心変わりが心配なんだ。
合鍵を握り締め、歩き慣れた道を走る。
ドアを開けるとそこには鍵を回す音を聞きつけたティファ。
汗だくにも関わらず胸に飛び込んで来た身体をきつく、きつく...抱き締めた。
(あれだけやったんだ、絶対に大丈夫)
それに...
(1年前まであった不得意科目はなくなった)
受験票を握り締め、掲示板に目を凝らす。
「やったぁ!あった!!」
隣で上がった歓声に体がビクついた。
気を取り直し、自分の番号に近い数字を探す。
...
2501348
2501351
2501360
...
いきなり飛んだ数字に怖気づく。
ゆっくりと視線を下に降ろした。
2501362
受かった...
辺りを見渡した。
手分けして合格発表に駆けつけてる先生達。
幸運にもこの大学の担当は...
遠くにいる彼女と目が合った。
先に確認してたのだろう。
穏やかに微笑み、瞳は赤い。
すぐさま携帯を取り出す。
『先に部屋で待っててもいい?』
『うん、お祝いしようね。
クラウド...頑張ったね。本当におめでとう...』
震える声を背に、迫り来る春が香るキャンパスを駆け出した。
初めてキスした時と同じ、爽快さ。
“高校さえ卒業すれば”
安易にも、そう信じ切っていた。
彼女の懸念と心の変化にも気付かずに。
俺達の苦しみは、まだまだ終わらない...
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