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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

prithee... 4


prithee... 3、の続きです。







もしも一つだけ願いが叶うなら、迷わず選ぶ。

どうか...

どうか......


......彼女の時を、止めて下さい。


prithee... 4


「まぁまぁ、だった...かな?」

正直な感想に思わず吹き出した。

「確かに前に観たやつの方が面白かったな。
飯、食いに行こうか?」

あれから数週間。
エアリスとの仲は順調だ。
彼女と一緒にいるのは飽きず、楽だった。

“何しよっか?”

ではなく、

“次はあの映画、観よ?”

“学校の近くに、美味しいパスタ屋さんが出来たんだって!”

いつだって能動的な彼女。
今まで誘われるがまま女と数回遊んだだけの俺でも、彼女とのデートはスムーズだった。

(人を好きになるって、こういう事なのかな)

当然、初めての彼女だった。





薄暗い廊下をキョロキョロする姿が目に止まる。

「どうかした?もう門が閉まるよ?」

「あ、先生!クラウド、見なかった?
ついさっきまでここにいたはずなんだけど...」

困った顔をするのは、噂に聞いた彼の彼女。

「見てないわね。なんで?」

彼女は手元の番号が書かれた布に溜息をついた。

「クラウド、部室にゼッケン忘れてっちゃったの。
これがないと試合に出られないのに。
届けてあげたいけど、私は今から塾があるし...」

受験生の彼女は明日模試があり、応援には行けないらしい。
ふと思い当たる。
彼女なら “あの話” も知ってるだろう。

「代わりに届けてあげよっか?
...バイト先、確かあの駅よね。今日もいる?」

声を潜めると、いたずらそうに微笑まれた。

「先生、新しい方も知ってたんだ?」

「他の人には絶対に内緒よ?
前にそれでかなり揉めたんだから」

「もちろん!
やっぱり先生って最高。ありがと!!」

時間が押していたらしく、颯爽と階下へ駆け出す。

(今日は彼の家に行く予定はなかったけど、せっかくだし寄ってこうかな)

連絡は後で入れればいいや。
そう決め、白い布を握り締める。



「え!あ、それ俺の...ありがとう!」

すっかり忘れてた、と頭をかく。

「お礼は気付いた彼女に言ってあげて?
じゃあ、明日は頑張ってね!」

以前の様な事になるといけない。
すぐさま店を出ようとする。
その時、微かに自分の名前が聞こえた気がした。

「いいなぁ...あの子、超可愛いじゃん」

「でもあいつ俺にベタ惚れだからさ。
寄り戻すの、楽勝だったぜ」

「でも例の職場の子にもモーションかけてんだろ?」

「まぁな。
そっちが上手くいけば、その子一筋だ。
ティファはキープってやつよ」

「この、極悪人が...いらないなら俺にくれ!」

足が震えた。
この声は...

「先生、どうかした?」

後ろで声がするが、固まって動けない。
棚で隠れていた姿が現れた。

「...ティファ?お前、ここで何してんだよ...
今日は約束、してないよな?」

青ざめる彼。私はまだ動けない。
次の瞬間、背後でガタンと大きく音がした。

「キャーーー!!」

店員の一人が彼に殴り掛かり、女性客が悲鳴を上げる。

「クラウド!何してるんだ!!」

奥から店長らしき人が現れ我に返った。

「もういい...
もういいよ、ありがとう...」

「はぁ、はぁ、はぁ...」

間に入ると手を止め肩で息をし、床の男を睨み下ろす。

「いてぇな。なんなんだよ、このガキ...
ティファ?悪い冗談だって。
俺ん所に来る気だったんだろ?行こうぜ...」

立ち上がり、懲りずに伸ばされた手を振り払った。
瞬間、涙が滑り落ちる。

「さよなら...」





「先生~、ページ間違ってますよ?」

「え?あ、本当だ...ごめんね!」

一見普通に振る舞う先生は、きっとまだ立ち直れてない。
心なしか目元も腫れぼったい。
だけど俺に出来る事は何もない。
バイト先にも二度と来ないだろう。
釈然としないまま、帰りの電車に揺られる。

(そうだ...)

鞄の奥で丸まっていた教職員名簿を引っ張り出す。
少々ルール違反だが、一度くらい良いだろう。
それに、さっき誰かが言っていた。

“先生、今日誕生日なんだって?”

住所を見る限り、先生は一人暮らし。
せっかくの誕生日を一人落ち込んで過ごしてると思うと気の毒だった。



(遅いな...)

雨まで降ってきた。
マンションのドアの前に腰を下ろす。
傍らには、ケーキと適当なお菓子の詰まった箱。

(ケーキはもう駄目かもな...)

生ぬるい保冷剤に手を当て、息をつく。
日持ちする物も詰め込んでおいて良かった。
もしかしたら友達に祝って貰ってるのかもしれない。
それならそれで安心だ。

(終電までには帰ろう)

その時、階段を登る音がし、立ち上がった。

「え?...何してるの?」

現れた姿はずぶ濡れだった。
そして少し足取りがフラついていた。

「...酔ってるのか?」

「はは、みっともないところ見られちゃった...
ねぇ、本当にどうしたの?
もう遅いよ?帰らなくっちゃ...」

雨で気付かなかったけど、泣いてるんだろう。
目が真っ赤だった。
思わず手を伸ばし、冷えた身体を抱き締める。

「ちょっ...何す...」

「先生は馬鹿だよ。
あんな下衆野郎好きになって...」

先生の良さはみんな認めてる。
俺みたいな捻くれ者でさえ、心を開いたんだ。
それに俺ならあんな思い...

...“俺なら”?

「離して!!」

思い切り腕を降り払われた。

「ごめん...」

「もう帰って?お願い...」

慌てて鍵を出し、ドアを開けようとする。
俺を拒絶する背中に、ゆっくりと階段へ足を向けた。


俺はいったい、何をしてるんだ...





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