Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
Blue Eyes 3
Blue Eyes 2、の続きです。
火曜サスペンスに血はつきものです。
一瞬、流血シーンが入ります。
長い廊下。
それは心の距離。彼と少女の。
そしておそらく彼と...
Blue Eyes 3
...ファ?
...ィファ!
「ティファ!!」
「あ、え...? ごめん、何?」
目の前には、眉根を寄せ私の肩を揺さぶるクラウド。
「しっかりしろ。ティファが悪いんじゃない。
それにまだ、どうにかなったと決まった訳じゃないんだ!」
その台詞をゆっくりと咀嚼(そしゃく)する。
しかし奥歯を噛み締め、顔を歪ませた。
「フェンリルを表に転がしたままだ。
止め直して来るついでに、リーブに電話を掛けてくるから...」
“いいな?” と肩に手を置いたまま続ける。
何が “いい” のかちっとも理解出来ないまま頷いた。
今度は笑顔を向けられる。
「二度も逃げて来られたんだ。
今回だって......きっと平気だ」
......二度も?
ううん、違う。
逃げられたのは、二回とも不意を突けたからよ。
今回はそれは通じない...
“もう一人の” 犯人は私達が家を離れるのを何処かから確認し、いとも簡単に人さらいを成し遂げたに違いない。
悔しい...
床に転がったウサギの人形に目をやり、拳を握り締める。
カーテンが風に揺れる音で我に返った。
クラウドはもういない。
“まだどうにかなったと決まった訳じゃないんだ!”
...そうね。
惚けてる場合じゃないわ。
少しでも手掛かりを見つけなくちゃ...!
物が散乱した部屋を見渡した。
(そういえば...)
ふとベッドのヘッドボードに目が行った。
(確かここに...)
マットレスとそれとの隙間に手を差し込むと、指先に何かがぶつかった。
破らないよう慎重に引っ張り出す。
出て来た物に、大きく息を飲んだ。
「2人いた...だと?」
椅子に腰掛け、父親は随分と長くうな垂れたままだ。
リーブが恐縮して謝罪する。
「油断してしまい申し訳ありません...
お父さん...娘さんの安全のためにも、ここはひとまず相手の要求を飲んだ方が...」
その時、近くの電話がけたたましく鳴り響いた。
一同に緊張が走る。
「逆探知、準備出来てます!!」
隊員の一人がすかさず叫ぶ。
「...お父さん、落ち着いて下さいね?
出来るだけ、会話を引き伸ばすんです」
しかしそれは不可能だろう。
相手は逆探知を警戒し、毎回要求を端的に伝えすぐに電話を切っているという。
父親はそろりと受話器を持ち上げる。
仕込んだマイクのおかげで、全員の耳に犯人の声が飛び込んで来た。
『...娘は預かった。金が振り込まれるのを待つ』
(切られる...!)
しかし逆探知をする隊員の顔が苦々しく歪むのと同時に、父親はポツリと言った。
『金は......振り込まない』
周りはギョッと顔を引き攣らせた。
『もうない.........ないんだ...』
『......もう少しマシな嘘を付くんだな』
『本当だ。
だからもう、こんな事をしても無駄だ...』
『......これでもか?』
パァン!!という銃声と、『お父さん!!』と叫び声が響いた。
すかさずリーブが小声で鋭く言う。
「お父さん!嘘でもあると言って!!」
父親は少女の名前を呼び、震える声で続ける。
『ごめんな...
もう、ない...ないんだよ...』
『お父さん!?』
叫び声は泣き声に変わった。
『役立たずが......わかった、今から殺す』
電話はブチっと切られた。
「逆探知、出来ました!!!」
クラウドは勢い良く立ち上がる。
走り書かれたメモをむしり取り、キーの音をさせ走り去った。
残りの人間も慌てて後を追う。
しかし私は、受話器を耳に当てたまま硬直する姿にそっと質問を投げ掛けた。
「お父さん...
電話の声は、何回目から違いましたか?」
彼はゆっくりと電話を置き、怒りを露わにして嘆いた。
「動転してたんだ...それに、一瞬だったんだぞ...?」
「そんなもの、気付く訳がないじゃないか!!」
震える背中を見つめ続ける。
手のひらに包まれた紙切れを握り締め。
リーブの切羽詰まった声が耳に届くまで。
「2人とも!! 急いで!!!」
現場はフェンリルでも30分はかかる場所だった。
表でエンジンを掛け待ってくれていたクラウドの後ろに乗り込む。
もう明け方に近かった。
朝焼けを受けた広い背中が無言で語る。
電話で伝えられた言葉が本心だったなら...
...もう、手遅れだろう。
そこは、もう使われてない古ぼけた倉庫だった。
クラウドは “立入禁止” のロープを飛び越え入口まで走り抜く。
リーブの車はまだ姿を見せていない。
中から鍵をかけてあるのだろう。
押しても開かない扉を彼は乱暴に蹴りつける。
数度繰り返すとそれは結合部分が外れ大きく前に吹き飛んだ。
次の瞬間目に飛び込んで来た光景に、私達は言葉を失う。
倉庫の中は、めちゃくちゃに破壊されていた。
そして...至る所に血が散乱していた。
壁際に崩れ落ちた赤黒い塊は、おそらく屍だろう。
返り血を浴び体を赤く染め、少女は手足をがんじがらめに縛られたまま、しゃくりあげて泣いていた。
「......っ...だから...」
「私がっ...青い目をした、化け物だから...」
「...お父さんは...私の事が、嫌いなんだぁ...」
手には緑色のマテリアが握られていた。
何のマテリアかは見てとれなかったが、その威力から察するに、常人が簡単に扱える物ではないのだろう。
ましてや普通だったら、たった6歳の子供が使える代物ではないはずだ。
悲痛の泣き声を聞きながら、私達はその場に立ちすくんだまま動けなかった。
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