Minority Hour
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男のホンネ 女のキモチ ~前編~
今作にはオリキャラが登場します。裏描写は後編のみです。
裏度数【★★★☆☆】
裏度数【★★★☆☆】
ティファは、乱れない。
いや、別に乱れなくたっていいんだ。
ただ男なら誰だって気になるだろう?
好きな人をちゃんと“気持ちよく”させられているか...
男のホンネ 女のキモチ ~前編~
「よし、決まりだな!クラウド。出発は次の土曜、早朝だ。寝坊すんなよ?」
週中のセブンスヘブン。仕事の早く終わった俺は、早々にシャワーを浴び、お気に入りのつまみを片手に一杯やっていた。
今日は店が混んでいる。子供二人が寝た後だというのに店内は満席だった。本来ならば呑気に座っていないでオーダーでも取りに行くべきなのだろうが、今日俺の隣にはゲストが居た。
その黒髪の明朗な男は、ティファの友人が店に連れて来た恋人だった。二組のカップルが会すると、女は女同士、男は男同士で盛り上がるのは何故だろう。
俺は初対面の男と気さくに話す人間ではないが男はよく喋り、俺の反応が薄いのも気にせず話を振ってくる。俺が洗いざらしの髪と風呂上がりの格好だったせいもあるだろう。俺もその中に古い友人を見ているようで、悪い気はしなかった。
ティファは厨房から手が離せず友人とは一言二言交わす程度だったが本人達は気にするそぶりもない。彼女は同業者だった。混んでいて相手にされないなど、何て事ないのだろう。
「だからもう一人雇いなって。楽よ~、風邪引いた時に頼める人がいるのは」
「簡単に言ってくれるよねぇ。その人件費はどこから出てくるの?」
「店を二倍の大きさに改装。売上も二倍、経費も二倍。これで万事解決! それにあの行列を見なさいよ」
「今よりお店を大きくするのは私のポリシーに反するんです」
忙しくする店主に向かい、友人は後ろに振り返り会話している。俺はティファと女友達のやりとりを見るのが好きだ。珍しい発言を耳に入れられるし、思いもよらない話題で盛り上がる。上機嫌だったせいか男との会話も弾み、何時の間にか俺達は敬称を外していた。
「なぁ、クラウド。興味あるなら今度一緒に行かないか?」
釣りの話をしていた時だった。俺は釣りをした事がない。正直興味はなかったが無下に断わる事も出来ず考え込んでいた。俺を気遣ってか、ティファは言う。
「行って来たら?上手くなって、デンゼルに教えてあげてよ。興味ありそうだったじゃない」
いつかの食卓での会話を思い出す。
「クラウド、ブラックバスって知ってるか?釣るだけで食わない魚なんだって。おっかしいよなぁ。釣りってそんなに楽しいのか?」
デンゼル、「食わない」じゃなくて、「食べない」だろ、と注意しつつも、息子の興味に関心を寄せる。
まぁ、確かに...な。
「いいのか?」
「もちろん!」
即答するティファの後押しも受け、男からの提案に乗った。今回はデンゼルは置いていくことにする。どうせなら俺が教えてやりたい。それくらいの見栄はいいだろう。後々その決断を激しく後悔する事など知らずに...
『本当に大丈夫?田舎なんでしょ?』
気遣わし気な声。有難いがいくら心配されたって状況は変わらない。「大丈夫だ」と「心配いらない」の一点張りを通し、電話を終わらせた。ふぅ、と息を付く。もう夜の11時だった。土曜日で良かった。
結論から言うと、俺は釣りをかなり楽しんだ。たかが糸をつけた棒だろ?とタカをくくっていたが、やってみると中々面白い。
(デンゼルに良い報告が出来そうだな)
日没まで川辺で粘り、近くで夕飯を済ます。当然酒も入り夜は更けていく。しかし最終バスの時間には、まだかなりの余裕があった。ところが店を後にし、バス乗り場の貼り紙に言葉を無くす。
“本日10時以降の便は運行中止となりました。数km先の吊り橋に損傷が見つかったためです。明日の始発便から通常通りの運行となります”
...空腹を満たすのを優先させたのが間違いだったか。俺達は互いの ‘相棒’ に、本日2度目の電話を入れた。こんな時間まで片田舎で時間を潰す輩もいないのだろう。辺りには誰もいなかった。
「...どうする?ここで寝るか?」
バス停のベンチに視線を送る。山奥...という程ではないが、近くに駅もなく宿屋は見当たらない。明かりのついた民家だけが目に入る。
「は?冗談だろ?こんなところで寝たら、凍死しちまう」
凍死は言い過ぎだろ、と思ったが今日は確かに寒かった。しかし例え玄関であっても得体の知れない男を泊めてくれる家がどこにある?
「クラウドはここにいろよ。任せとけって」
何を思い付いたのか、そいつは明るい顔で大通りへ歩いてく。それに従い、ベンチに腰掛けた。
(デンゼルを置いてきて正解、か)
ここに彼が居たらティファも黙ってないだろう。急遽車を借りて迎えに来たかもしれない。それは今日も店を開いてる彼女にはあんまりだ。いや、そもそもデンゼルがいたらこんな時間にはならなかったか。
ああでもないこうでもないと思いを巡らせていると、そいつは満面の笑みで戻って来た。
「泊めてくれるって♪」
背後の車を親指で指し男はウインクする。本当に?車から降りて来る、お人好しに目を向ける。それは...
......若い女二人だった。
「ウソ!もう一人もめっちゃカッコイイじゃん!!」
一人が興奮した声を上げる。
「なっ?言った通りだったろ?」
得意気に肩を組んでくるそいつは小声で囁く。
「クラウド、何真っ青になってんだ?まさかその年でナンパの一つもした事ない訳ないよな?せっかく屋根の下で寝れるチャンスなんだから、無駄にすんなよ」
そして、「俺、右な」と肩をポンと叩き女達の車に乗り込む。目の前には、舌舐めずりせんばかりの女達。
やはりデンゼルを連れてくるべきだった...
「馬鹿は風邪引かないって言うしね~」
グラスを片手に面白おかしく皮肉を言う彼女。1ヶ月前、クラウドを釣りに連れて行ってくれた彼の恋人だ。私達は仕事を同じくする故か、話題に事欠かない。友達と遊ぼうにも休日は家族と過ごしたい私。月に1度程、こうして飲みに来てくれるのが有難かった。
今は先日互いの恋人達が急遽野宿を余儀なくされ、しかしクラウドだけが風邪を引いて帰って来た事に盛り上がっている。
「あ、旦那さんだ」
(クラウドの前で言わないでよ!)
と内心文句を言うが、当然咎める事もなく声をかける。
彼もいつものように返した。
「ただいま」
しかし彼は急に青ざめ、後ずさる。
「クラウド、どうかした?」
「あ~~~~~~~!!!!!」
突如カウンターの若い女性客が大声を出す。
「あ、この前のカッコイイお兄さんじゃん!!」
もう一人も振り返った。
(この前の...お兄さん?)
「いや...気にしないでくれ...俺は出る」
慌てて彼が方向転換すると、一人が衝撃的な台詞を言い放つ。
「なぁによ~~~他人行儀で!一夜を共にした仲じゃなぁい!!」
彼は背中をバァンと叩かれ、大きくつんのめる。
「「い ち や を と も に し た ?」」
友人と声が重なり、常連客も固まった。ゆっくり首を回すと決まり悪そうに頭をポリポリやる彼。私は泣きそうになり、眉根を寄せた。
(まさか...)
(まさか......冗談よね?クラウド!?)
「でもさぁ、大口叩く割にはへったくそだったよね~」
「そうそう。朝ご飯作ってもお礼も言わないし。1度やっただけで彼氏面すんなっつの!」
目の前に渦中の男の恋人がいるとも知らず、彼女達は好き放題を言っていた。
「あの野郎...」
わなわなと肩を震わせる友人をなんとかなだめる。
クラウドの身は潔白だった。確かに1度は彼に合わせ家には行ったらしい。しかし彼女達ははっきりとこう言った。
“このお兄さんは『自分には大切な人がいるから』って、すぐに部屋から出てっちゃった”
廊下ででも寝てるのかと思ったが、朝気付くと家の中におらず彼とはそれきりらしい。先程彼が焦っていたのは、私の友人を気にしてだった。友人には悪かったが、頬が緩むのを抑えられない。
「クラウド...疑ったりしてごめんね?ありがとう、嬉しかった...」
「馬鹿...当たり前の事だろ?」
怒りに震える姿をよそに、見つめ合い甘い空気を作り出す。
「おぉ~見せつけるねぇ!こんな一途な男、めったにいないよ?ティファちゃんは幸せ者だなぁ!!」
普段は恥ずかしいお客様のひかやしが、最高の褒め言葉に聞こえる程...嬉しかった。
いらない罪悪感を生じさせる嘘をつく必要もなくなった今、あの事件は完全に過去のものとなった。しかし今日、あの女達の声で思い出した事があるのも事実。
俺はあの日、本当はあの女達の家の廊下で寝る気でいた。その日は流石に寒すぎた。ところが腰を降ろした途端耳に入る “声”。その声と、愛する人のそれとの差になんとなくいたたまれなくなる。そしてすぐに家を出た。
(ティファは......何が気持ちいい?)
以前 “事” が終わり、うつらうつらし始めた彼女に漠然と聞いてみた事がある。
(やっぱり、キス...かな...?)
顔を赤らめ、照れ臭そうに笑う。
(ギュッて、抱き締められるのも......気持ちいい...)
そのまま目を閉じ、それを最後にティファは眠りに落ちてしまった。
実に彼女らしい返答だ。しかもそれは本心だろう。
加えて俺は彼女のそういう奥ゆかしい所が好きなんだ。でもついつい疑問に思ってしまう。だって俺は、男だから。
なぁ、ティファ。
それ以外は、あんまりなのか?
後編に続きます。
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