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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

山の向こうに 2


山の向こうに 1、の続きです。

流血を伴うやや過激な描写が登場しますが、たいした事はないはずです。
本当に苦手な方はお控え下さい。






俺は自分自身がわからなくなる事がある。
記憶だってあやふやな部分が沢山あるんだ。
 
でも...

誰のどんな言葉よりも、ティファのあの態度に俺は...


“クラウド、久しぶりね”


支えられているんだ。


山の向こうに 2


そいつは息が荒く、涎(よだれ)をダラダラ流していた。
何か言って通じる相手じゃなさそうだ。
しかし顔は完全にモンスターと化してたが、かろうじて体に残された人の面影。
一行は身構えたが、本能的に刃を向けるのを躊躇った。

だがそんな余裕を保ってられたのも束の間、モンスター ‘もどき’ は近くに居たレッドに飛びかかる。

早い!!

俊敏なレッドは、すんでのところで避けた。

ガシャーーーン!!

他のカプセルに突っ込むモンスター。
この上他の物まで開けられたら、たまったもんじゃないんだが。

ノロノロと起き上がり、手近な鉄筋をたわいなく引きちぎる。
そしてあたかも粘土でもこねる様に軽々しく、槍の形に変えた。

多少の魔晄を浴びた俺でさえ、この馬鹿力だ。
こいつは本格的にやばい気がする。
今の行動を見る限り、知能も高いだろう。
......なんたって、元人間だ。
魔晄炉の扉は厚い。
せめて中に閉じこめてしまえれば...

「逃げるぞ! 皆、出口に急げ!!」

叫んだが、一つ問題があった。
奥にいるティファはそいつをやり過ごさないと、出口まで辿り着けない。

すぐさまファイガを放った。
一瞬怯んだが、炎が収まるとニヤリと笑う。
魔法は効かないのか? 剣を抜いた。

「ティファ!俺が隙を作る。
その間に出口まで走るんだ!!」

一度は警戒を払われたが、やはり知能が高いのだろう。
一見頑丈な俺より、打たれ弱そうな獲物を探す。
そして視線は止まった。
逃げ場を失うティファの前で。

「はっ!」

息を飲む音がしたのと、そいつが地を蹴ったのは同時だった。

かわそうと、上へ飛ぶティファ。
よけきったと思ったが足を掴まれた。
そのまま入口とは逆の方向に勢いよく投げつけられる。

ガンっっっ!!!

「うぅ...」

壁に頭を強打し、ズルズルと床にへたりこんだ。
焦る仲間達。

「「ティファ!!!」」

モンスターは、なおもティファから視線を外さない。
声を張り上げ走った。

「ティファ!しっかりしろ!!立つんだ!!!」

「っ...」

しかし脳しんとうを起こしてるのか、頭を手で押さえ立ち上がれない。
モンスターはそんな彼女に狙いを定め突進する。

(ダメだ、間に合わない...!)

目の前まで来ると、槍を高々と掲げる。

(...やられる!!!)

ティファは言うことを聞かない体を恨めしそうに、これから襲う痛みに堪えるべく、グっと目を閉じた。
次の瞬間、槍は勢いよく振り下ろされ...

...てない?

(?)

不審に思い、そろそろと目を開けるティファ。
そいつは、槍を掲げたまま動きを止めていた。
そして信じられない言葉を口にする。

「ティ......ティファ...?」

俺も知ってる声。

「パっ...」


「パパ!?」


その場の全員が凍りついた。

「ティファ...」

ハタハタと流れ落ちる涙。

「あ...あ...」

ティファは目を見開き動けない。
するとモンスターは槍を持つ手に力をこめ、あろうことか自らの頭に勢いよく突き刺した。

ブシューーーー!!!

こめかみから体液が噴き出る。

「パパ!!!」

崩れ落ち、絶命するモンスター。
...いや、ティファの父。

「そんな...そんな...」

“元” 父の亡骸に這って行く。
血で汚れるのも構わず、変わり果てた姿に覆い被さった。

「パパ...パパ...」

次から次へと、溢れる涙。

「こんなのって...こんなのってないよ...
...酷すぎるよ!」

しゃくりあげる姿を取り囲むが、誰一人として声をかけられない。

古ぼけた魔晄炉には、しばらく悲痛の泣き声だけが響いた。





“山を越えるのも、村に戻るのも不可能だ”

冷静な判断を下したのは、つい先程仲間になった紅眼の男だった。
辺りはとっぷりと暗く道に迷うことは必至だったし、何よりここのモンスターは強すぎる。
一行は野宿のためテントを張った。

焚き火の前に腰掛け、ゆらゆらと揺れる炎に小枝を放り投げた。
背後に気配を感じる。エアリスだ。

「ティファは?」

‘アレ’ 以来、初めて発した言葉だった。

「少し落ち着いたけど、まだ泣いてる。
可哀想に...
泣き疲れて眠れれば、まだいいんだけど」

ご飯を食べてきて、私は平気だから。
そうティファが気にかけるから、一旦出て来たという。

ティファはあれからずっと泣いてる。
何も口にすることなく。
テントに閉じこもったまま。

「ねぇ、クラウド。
後でクラウドも、ティファのところへ、行ってあげて?」

目を背け、うつむく。

「俺は...ティファの涙が...
.........苦手なんだ」

「クラウド...人の涙が得意な人なんて、いないよ?
私だって...「違う」

違うんだ。

他の人が泣いてるのとは全然違う、強烈な何か。

(全部...全部、大っ嫌い!!!)

五年前の事か?
それだけじゃない。

(ママに...会いたい...)

アレはいつだ?......頭が痛い。

    遠くから眺めてるだけじゃ...

    何も変わらないって...

頭が......割れるように痛い...

    ...気付いたんだろ?

気付けば立ち上がっていた。

オレハイッタイ、ナニヲワスレテル?





テントの入り口をくぐる。
奥にはへたり込む背中。

「っ...エアリス?」

やはりまだ泣いてたか...

「あっクラウド...っ...ごめんね。
私、雰囲気悪くしちゃってるよね。
皆に心配かけて...ごめんなさい...」

必死に顔を拭うが、努力に反し大粒の涙がこぼれ落ちる。
隣に腰を下ろした。

「いや、そんなのはいいんだ。
悲しい時は泣いたって、全然迷惑なんかじゃない」

何を言えばいいんだ?こんな時は。

「明日には...元どおりになるから...っ...明日には」

強がらないでくれよ。
無理なんかされたって、嬉しくもなんともない。

背中に手を当て、ゆっくり撫でてやる。
...一番触れて良さそうな部分を選んだつもりだ。

驚いた顔を向けられる。

「...嫌か?」

「ううん、落ち着く...よ」

安心し、手をそろそろと肩に回す。
力を込めると、意外にもすんなりともたれ掛かってきた。

「ごめんなさい...今日だけ、こうさせて...」

しゃくりあげる度に、肩が揺れる。
なんで俺の顔はこんなに火照ってるんだ?
同時に起こる、いつもの頭痛。

  俺は膝を擦りむいただけで済んだけど...

  ティファは...守れなかった...

...また、アンタか?

  ......な子を、

  守ってあげられなかったんだよ...

なんて言ったんだ?
ティファが俺の、何だって?

ふと気付くと、泣き声が止んでいる。
ティファはスースーと寝息をたてていた。
少しは役に立てたんだろうか。
安堵を覚え、寝顔を覗き込む。

だが閉じた瞳から雫がこぼれ落ち、ハッとなる。
それを拭うよう、頬に手を当てた。
眠りながらも涙する姿を前に不謹慎にも、驚いたのはその感触だった。
ひんやりとするそれは、物凄く柔らかい。
心臓が高鳴った。

「今日だけ、なんて...言うなよ」

大丈夫。

ティファは眠ってる。

気付かれない。

顔をゆっくりと近づけ、唇をそっと重ねた。
涙のせいか、少ししょっぱい。



今夜はティファの手を握り締めて眠ろう。
夜中に目を覚ましても、一人で泣かないように。





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