Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
二人のHERO ~後編~
二人のHERO ~前編~、の続きです。
前編を読まれていない方は、そちらからどうぞ。
二人のHERO ~後編~
「ちくしょう、本当に何もないなここは」
外に出たのはいいが、10分で飽きた俺。
唯一褒められるのは、この満天の星空だが...それはゴンガガを思い出させる。
少なくとも今の俺には必要ないな。
と、その時、見上げた夜空の隅っこで何かが動いた気がした。
ソルジャーの瞳は夜目が利く。
(アレは?)
「おーい!」
突然の俺の呼び掛けに、古ぼけた給水塔の上で膝を抱えていた黒い影がビクっと揺れた。
「ティファだっけ?
そんなところで何してんだ?」
給水塔の下まで回り込み、見上げる。
暇してたから丁度いいや。
しかしティファは何をそんなに動揺しているのか、目を白黒させて慌てて階段に手をかける。
「お、おい。待てって。邪魔したんなら悪かったよ。
俺...そんなに嫌われちまったか?」
動きを止めてこちらをじっと見つめてくるティファ。
本当に何考えてんのかわかんねぇな。
「ごめんなさい、ザックスさん。
嫌ってるとかそんなんじゃないの」
ちょっとビックリしちゃって...と、一度は階段に掛けた手を外す。
意外と生真面目な返事が返ってきて、拍子抜けした。
「ザックスでいいって!星、見てたのか?」
「うん、お気に入りの場所なの」
座る?と、俺のためのスペースを空けてくれる。
本当は良い子なんだろう。
「凄いでしょ。この星空」
「へへへ。そう言ってあげたいところだが、実は俺も、元はとんでもない田舎者なんだ。
こんなんじゃあ驚かないぜ」
「ザックスも、ソルジャーになるために故郷を出たのね。
...ねぇ、ミッドガルってどんなところ?楽しい?」
「楽しいどころじゃない。何もかもスケールが違うね。
ついでに言うと、可愛い彼女も出来た」
...まだ了承取ってないけどな。
「そう...。じゃあ...故郷なんて恋しくならないね」
「まっ、そうだな」
俺の話してるだけなのに、どうしてティファはそんな辛そうな顔してるんだ?
「なぁ。
...さっき、俺に何聞こうとしてたんだ?」
やはり黙り込んでしまうティファ。
しかし先ほどと違い、しばらく時間をやると意を決したように喋り出した。
「...あの...ザックスは、クラウドって男の子知らない?」
知ってるも何も...!と、勢い良く言い掛けて、すんでのところで押しとどまった。
コレって...言っちゃっていいのか?
頑なにヘルメットを脱ごうとしなかったクラウドを思い出す。
(しばらく様子をみてみるか)
「クラウド?どんな奴だ?ミッドガルにいるのか?」
「えっと、二年前にこの村を出て行ったの。ソルジャーになるんだって。
見た目は...金髪のツンツン頭で...」
...ははーん。
「好きなんだ?そいつのこと」
「はっ?えっ!?
いや、そんなんじゃないよ。そんなんじゃなくて!」
「だって気になるんだろう?
普通出て行った奴なんか気にするか?ソルジャーになったら、十中八九帰って来ない」
「...笑わない?」
「何を?」
「...」
「笑わないよ」
何の事だかサッパリわからないけどな。
「村を出る前にね、約束したの」
「...何て?」
「もしクラウドがソルジャーになれたら、私が困ってる時には助けに来てくれるって」
(そういうことか)
「だからちゃんとソルジャーになれたかどうか気になった。
ただ、それだけ...」
「なぁ。これはもしもの話だが。
万が一そいつが一生ソルジャーになれなかったら、ティファはそいつに何て言うんだ?」
「? ...そんなの関係ないよ。ただもう一度会いたかっただけ。
皆出てっちゃったから。そんな中で、そうやって約束をしてくれたのはクラウドだけだったから」
「結論から言うと、俺はそいつの事は知らないな。
ただ、ソルジャーにも2ndとか3rdとか色々あるから、どっかで頑張ってるんじゃないか?」
「手紙もね、書いたんだ。でも返事来なかったの。
きっともう忘れちゃったね、私の事も約束も。だってミッドガルってすごく楽しいんでしょう?」
「そうだけど。
ただ、そのクラウドって奴は、約束破って遊んだり、女の子のお尻追っかけたりするような奴なのか?」
...俺みたいにな。というと、ティファは少し吹き出した。
「...違うかも」
「だろ?なら信じてやれよ」
そろそろ家族が心配するから、とティファは腰を上げる。
「俺はもう少しここにいる。お休み」
「お休みなさい。また明日ね」
(...ん?“明日”?)
手馴れているのか、そう思った時には既にティファは軽快に給水塔から降りようとしていた。
「ねぇ」
顔が見えるギリギリでティファから声がかかる。
「ん?」
「ザックスって良い人ね。
笑わないで聞いてくれてありがとう」
そしてティファは、ここに来て初めての会心の笑みを俺に向けてくれた。
(なんだ、そんな風に笑えるんじゃないかよ。
めちゃくちゃ可愛いな、やっぱり女の子には笑顔が一番だ)
わかったよ、クラウド。
お前が見られたくないのはティファだったのか。
今のお前、最高にかっこ悪いけど、最高にかっこ良いぜ。
でもお膳立てなんかしてやらないんだからな。
男なら、自分の力でなんとかするんだ。
大丈夫。お互い想いあってたら、最終的にすれ違うことってまずないぜ?
不可解な事項の2/3が解決したことで、俺の鬱憤はかなり晴れたみたいだ。
昼間の雨が嘘のように、すっかり雲の晴れた澄んだ空を見上げる。
(こりゃ、明日の天気は期待できそうだ)
ああは言ったけど、改めて見ると田舎の星空も悪くない。
(...とりあえず、田舎には可愛い娘はいないという発言は撤回しよう)
ふと、スラムのあの娘も、今この瞬間俺を想って同じ空を見上げてる気がした。
いや、そうに決まってる。
(クラウドが羨ましくなったかな)
しかしこの時、青年はまだ知らない。
明日は晴れない。
青年が次に青空を眺める事が出来るのは、四年後だ。
そして、世界で一番愛しいあの娘と、あんな形で再会することになろうとは。
それから数日後、物語は急激に動きだす。
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クラウド、エアリス、ティファ、ザックスの四人全員が揃う時がないというすれ違い設定に、ひたすら萌えます。
題名はもちろんクラウドとザックスの事を指していますが “ティファとエアリスにとっての” という意味もあります。
英雄「...」
今一つキャラの掴みきれてない人物視点で書くのはこそばゆいですね。
ということで、自分的には★二つ。
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