Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
Broken Promise
すっかりupし忘れました、17' クリスマスは幼少期×AC後です。
ティファパパ×クラパパ×クラウドで、ほんのりクラティ。クラウドのお父さんがクラウド5歳くらいまで生きてたらな~という話です。
きっと俺にもあったんだ。
当たり前の様に守られ、愛されていた時代。
記憶はおぼろげ、いつしか曖昧になっても
思い出は、色褪せないまま。
Broken Promise
「あれ、クラウド?」
ふと気が付くと、先程まで隣に居た姿が見当たらない。何時の間にかはぐれてしまったようだ。
12月の混み合った街のおもちゃ屋さんは、耳に心地よい軽やかなクリスマスソングとカラフルな装飾でもって賑やかな空気に包まれていた。
人のごった返す狭い通路を引き返し、周囲を見渡す。 しばらく行くと、透明なガラスで囲われたディスプレイを前に佇み、その中の物に目を奪われた彼を見つけた。
「いたいた!何か良いのが見つかったの?」
クラウドはその質問には応えず、目線を前に向けたまま口を開く。
「これ、ティファも持ってただろ」
「...え?」
そう言われ視線の先を追うと、そこには当時流行った懐かしい玩具。確かに持ってたけど...ブロックで家や車を組み立てるそれは男の子向けで、少し恥ずかしい。そんなことより何で...
「4歳の時のクリスマスプレゼントだ」
「えっ、え?何でそこまで知ってるの?」
しかし不思議がる私に、クラウドは得意げな顔をして微笑むだけだ。
結局、その後いくら問いかけても彼は口を割らず、腑に落ちないまま私達はプレゼント選びを再開した。 だけどあの柔らかく、幼い眼差しに想像する。きっとアレは、彼にとっても思い出の品なんだ...
「はい、どちら様ですか?」
玄関の扉を開けた先の闇夜に佇む隣人の姿。それは珍しい客だった。家が近いにも関わらず、寡黙な彼と言葉を交わす機会は少ない。
「遅くにすまない。車を借りたくて来たんだが...」
村で一台きりのトラックを使う際は、村長である自分の許可を求めている。個人的な用があった訳ではない事に心の片隅で納得し事務的な会話に移るが、続く申し出に焦った声が出た。
「明日?明日か...しまったな。実は...」
自分も明日、あの車を使う気でいた。その台詞に彼は表情も変えないまま淡々と尋ねる。
「行き先は何処だ?」
「隣町だ。子供のクリスマスプレゼントを買いに行こうと思ってな」
「なんだ。なら話は早い。俺も同じ目的だ。一緒に行くぞ」
その返答に安堵し、翌朝共に村を経つ方針に落ち着いたところで、話は終わりを遂げる。
「ああ、今はああいうのが人気らしいな」
そろそろ交代しようと言い、運転席に乗り込んだ彼はシートベルトを締めながら手短かに答える。聞けば要求されたプレゼントもお互い同じもののようだ。
「しかし、うちのは女の子だというのに...普段も木登りや駆けっこばかりに夢中で困る。来年からはピアノを習わせようと思ってるんだ」
「この村は男の子が多いからな、皆と同じ遊びがしたいんだろう。 なに、すぐに女の子らしくなるさ。美人になるだろうからな、引く手あまたで大変だぞ」
ティファはどこにも嫁にはやらん!! と唾を飛ばすと、やれやれと肩をすくめられた。
「おい、ここにあったぞ。けど...」
目当ての品を前に、二人立ちすくむ。物は既に一つしか残っていなかった。
...失敗した。 もっと早くに買いに来るべきだった。
“サンタさんは良い子のお願いしかきいてくれないんだ”
その言葉を真に受け、ママの入院が決まっても駄々をこねず、家の手伝いも頑張ったティファ。
売り切れてたと言えればどんなに楽だろう。だが、ティファはまだサンタを信じてる。
“欲しいのが来なかったのは、ティファが悪い子だったから?”
せっかくの祝日に朝から泣きじゃくる愛娘の姿が目に浮かび、打ちひしがれた。
「おい。コレ、譲ってやるよ」
「...え?」
唐突に投げられた提案に我に返ると、彼は近くに積んである船のプラモデルの箱を掴んでいた。
「うちのは夢がなくてな。サンタはもう信じてない。 プレゼントが違っても文句を言われるのは俺だ」
「...いいのか?」
しかし同時に見つけた手前、ややバツが悪い。
「ああ。それに一つ年上だし、男の子だろ。これぐらい我慢させるさ」
こちらの心中を察したのか、返事も聞かずさっさとレジへ進む。その後ろ姿に慌てて礼を伝えた。
「悪いな...ありがとう、助かるよ!」
会計を済ませ再び車に乗り込み、行路と同じ長い道のりを行く。頬杖を付き、暗闇しか移さない窓ガラスの外を静かに眺め続ける無表情に思う。相変わらず口数は少ないが...
(愛想がないだけで、思ったより良い奴なのかもしれない)
確か酒が好きだと以前に聞いていた。今度、礼に一杯奢ってやるか...
リビングの隅で膝を抱え同じポーズのまま早や二時間、壁を睨み続ける小さな背中に今朝何度目になるかわからない声を掛ける。
「クラウド、こっちに来て一緒に組み立てよう?凄いぞ~、モーターが付いてて本当に水の上を走るんだ」
先程まで共に慰めていた相棒は遂に痺れを切らし、溜息混じりの一言を置いてキッチンに戻ると包丁で軽快なリズムを刻んでいる。
“機嫌を崩すと石みたいになるんだから...”
けれど俺はこんな風になったこの子の相手は苦ではない。...自分にソックリだからな。だから何となくわかる。考えている事は意外と単純だ。
「指きりげんまん、したのに...」
固く閉ざされた口が数時間ぶりに開かれた。もっともな主張に決まり悪く首筋をかき、別のプレゼントで誤魔化そうとするのは諦める。
「そうだな。クラウドの言う通りだ。...父さんが悪かった」
玩具を床に置き、真後ろにあぐらをかき座りこんだ。
「実はお前のプレゼントはな、隣の家の子に譲ったんだ」
「...え?」
一つしか余ってなくてな、と付け加える。予想もしない発言に、思わず後ろを振り返りかけた息子の頬が一瞬目に入る。反応が示された事にしめしめとなり、畳み掛けた。
「なぁ、クラウド。あの子...可愛いよな」
肩がピクリとなる。否定出来ずに両手を膝にキツく巻きつけそこに顎を埋め、更に縮こまる様子に笑いを噛み締めた。
「あの怖いパパも、大喜びでお前のこと褒めてたぞ?」
「...ほんとうに?」
顎が膝を離れた。...大喜びまでは本当だ。
「約束するよ。あれは来年必ず買ってやる。それと将来、父さんがティファちゃんにコッソリこの話をしてやるよ」
再び肩が揺れ、今度は開いた唇と睫毛まで覗いた。
「クラウド、格好良いって惚れられちゃうかもな」
「.........!!」
「な?だから機嫌直してくれよ。もう一度、約束だ。指きりしよう」
クラウドはやっと振り返り、半分ぐらいしかない小指をキュッと絡めてきた。
「今度こそ、針せんぼんだからね!!」
約束の一つは母さんの手により果たされ、もう一方は破られた。
...いや、叶ったのかもな。
父さん...あの時隣に住んでいた女の子は今、すぐ横であのオモチャを不思議そうに眺めてるんだ。
俺がこの幸せを掴んだこと。誰より喜んでくれるのは、父さんかもしれない...
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二人も普通に普通の家庭で愛されてた頃があったんだよなぁ。
クラパパはクラウドの良き理解者だったろうに...
生きてたら、村の子達とももっと上手く馴染めたかもですね。
Broken Promise=守られなかった約束
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