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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

諸刃の剣


ヴィンセント視点の、Cloud×Tifa×Lifestream Eventです。
若干Vin×Lucも混じります。

◆お話の前提

ヴィン・バレット・ナナキ
→ゲーム中、クラウド=セフィロスコピー説に肯定発言有り?
シド
→唯一の逆説者?
ユフィ・ケット
→良く覚えてません...

長いです。







廊下を走る、一筋の光。

その光源である、薄く開いた扉を静かに押した。
ベッド脇に腰掛けていた人物は、握り締めていた手を慌てて離す。

「握ってあげてやれ」

「彼女はお前の手を、ずっとそうしてやってくれていた」

「“彼女だけが” 、な」

クラウドはこちらを見たまましばし動かなかったが、深く頷きベッドに向き直ると、再びティファの手を取った。
それを確認し、部屋を後にする。
後ろ手で戸を閉めた瞬間、自然と口角が持ち上がった。
しかし同時に脳裏をかすめたのは、あの美しく哀しい顔。

きっと私にも、あの時にはまだ異なる未来があったに違いない。


諸刃の剣 Moroha no Tsurugi


以前私は彼女に言った。

“膨らみすぎた希望は絶望の裏返し。
大きすぎる愛はお前を打ちのめす事になるかもしれない...”

笑顔を崩し、俯き押し黙る彼女。
しかしやがてゆっくりと穏やかな顔を持ち上げる。

「心配ありがとう、ヴィンセント」

そして表情を引き締めた。

「でも少し違うの」

凛とした声で力強く続ける。

「これは、自分のためでもあるから」

それは、彼女が私に初めて見せる顔だった。





ティファはその外見とは裏腹に、控え目な性格の持ち主だった。
彼女は見るからにクラウドに好意を寄せていたが、その態度は積極的からは程遠い。
そして彼女は...時に酷く不安定だった。

最初はさほど気に止めなかった。
真逆の性格を持つもう一人の女性に引け目を感じているのだろう、そう結論付ける。
しかししばらく行動を共にし、私はその不審な挙動に眉根を寄せ始める。
怯えた様にクラウドから目を逸らすのは、もうその時には彼女の癖と化していた。
果たして恋愛感情だけで、あそこまでなるものか...
疑惑はすぐに確信へと変わる。
彼女はエアリスの死後、その傾向を弱めるどころか、更に強めた。

(クラウドの精神異常に関してか...?)

そう当てをつけたが、私は手を差し伸べはしなかった。
その結果が、この惨事だ。





「俺はよう、クラウドのこと考えると訳がわかんなくなっちまうんだ。
いくら神羅や宝条でもよ、人間を作っちまうなんて信じられねぇしな。
でも、あいつのせいでメテオが来ちまうのは確かだ...
はっきり言って、あいつに会ってもどうしたらいいのかわかんねぇぜ...」

男だらけのコックピットに気弱な声が響いた。
ユフィはどうせまた、甲板かどこかに転がっているのだろう。
私は以前ティファと話を終わらせ、耳に微かに入って来た会話をぼんやりと思い出す。

...それにティファ...オイラ達がクラウドだと思ってたのは...
...わかってる。だから確かめたいの。もう一度、会いたいの...

「やめようよ、バレット。
お医者さんが言ってたじゃない。
希望を捨てちゃダメだって...」

例の会話の主が、弱々しく訴えた。

「......希望か......でもよ、正直な話...
俺はあいつに帰ってきて欲しいと、本当に願ってるんだろうか?
奴がこの世界に何をした? この先、俺達に何をもたらす?
セフィロスの影でしかないのかもしれねぇんだぞ...」

電源は入っていたが、壁際の縫いぐるみは先程から微動だにしない。
彼は新羅の上層部に位置する人間だ。
この件に関しても、何かしらの情報を握っているに違いなかった。

「さっきからおめぇら、ウジウジウジウジうるせぇんだよ!!!
“もしも” の話なんか、してどうする!?
アイツの目が醒めた後に、んなこたぁ考えろい!」

無言で様子を伺っていたリーダー “代理” が痺れを切らす。

しかし私はあの卑劣な男の素性を誰よりも知っている。

(クックックッ......素晴らしい......
私の実験がパーフェクトに成功した訳だな。
お前、ナンバーはいくつだ? ん? 刺青はどこだ?)

奴に嘘を付くそぶりはなかった。
私はもう確信している。


おそらく “アレ” は、クラウドではない...


シドはライターを口にやり、今度は小声で続ける。

「少なくとも一人、今も信じて待ってる奴がいるんだからよ...」

おそらくティファは、今もクラウドの手を握り続けている。

彼女はクラウドの状態を知ると、跪(ひざまづ)き戸惑う事なく手を取った。
それまでの彼女からは想像もつかない程、素直で大胆な行動。
その場の誰もが悟った。
彼女がどれだけ思い詰めているのかを...





それ以降、私達はクラウドの話はしなかった。
いま私達にはやるべき仕事がある。
一行は気を取り直し、北コレルへ向かった。

クラウド抜きでの戦闘は、難航をきわめた。
彼の人間離れをした身体能力に皆頼りきっていたし、戦闘中に見せる判断能力と指示も的確だった。

しかし私達は仲間の動きと強みを良く理解し合っている。
加えてシドは、リーダーとして優秀だった。
徐々に滑らかさを増す互いの連携。
ここにティファも加われば、セフィロスと勝負にならない事はないだろう。
暗闇に一筋の希望の光が差し込んだ気がした。

無事一つ目のヒュージマテリアを回収し、コンドルフォートを目指していた時だった。
操縦席からシドが仲間を見渡す。

「いくら神羅でも、ことごとく俺様達の邪魔が入って慎重になっているはずだ。
そんなに急がないでもいいと思うぜ...
それより、俺様はあいつが気がかりでしょうがねぇんだ」

「クラウドの事だよね...」

ユフィも青い顔で相槌を打つ。

「ああ。それにティファもどうしてるか心配だしな。
ちょっと様子を見に戻ってみるか、ミディールへ...」





「クラウド、まだ全然なの。
あれから何も進展がなくって...」

狭い病室に響く、か細い声。

ティファは明らかにその体重を減らしていた。
その手は未だクラウドの手に添えられたままだ。
泣き腫らした名残か、目の下が赤く腫れあがっている。
そんな彼女にバレットが追い討ちをかけた。

「ティファ...こんな事は言いたかねぇんだが...
奴は確かに、お前の幼なじみのクラウドに間違いないのか?
セフィロスの影なんかじゃなく」

「え!?それは......」

ティファはバレットから逃げるようクラウドの顔を覗き込むが、相変わらずそこに彼の意思はない。
しかしすぐに手を握る力を強め、キッパリと言い切った。

「多分......ううん、きっと!」





その日はミディールに宿を取った。
食事の席で代わる代わる仲間から声を掛けられ、ティファも徐々に笑顔を見せ始める。
しかし彼女は長居はせず、素早く食事を終えると診療所へ引き返す。

「ティファ、たまには宿で体やすめなよ。
あたしの部屋ツインだしさ。
それに一日くらい平気だって!」

ユフィが物を詰め込んだままの口を動かす。
ティファは目を伏せ、少しだけ振り返った。

「うん、でも体を拭いてあげたいし...」

「...それに、寂しがってるかもしれない」

その発言に自らの願望が含まれている事に気付いたのだろう。
決まり悪そうな笑顔で誤魔化し、場を立ち去った。

一度は明るみを帯びた空気が再び温度を下げる。
レッドが肩を落とし嘆いた。

「早く全員で、ティファのご飯が食べたいね...」

「心配すんな!!
そんな日、すぐ来るに違いねぇ!!!」

シドは威勢良く言い捨て、食後の煙草に席を立つ。
私も少し遅れ、「先に宿へ戻る」そう店を後にした。





月明かりとメテオだけが照らす、薄暗い病室。

ティファは床に座り、車椅子のクラウドの膝に頭を倒し乗せていた。
相変わらず彼女の手の中に包まれる、クラウドの手。
彼女は部屋の奥の窓に顔を向けていて、入口に立つ私には気付かない。

「ティファ」

驚かせないよう、慎重に声を出す。
頭をもたげ、ゆっくりとこちらに向き直るティファ。

「私は知っている」

「愛だけでは、どうしようもない事もある」

私はもうクラウドの心配はしていなかった。
目の前の廃人の意識が戻った時、傷つくのはクラウドではない。
打ちのめされるのは、期待して待つ人間だ。

恋しさから握り締めている、その手は危険だ。
それはまやかしの安らぎを与える諸刃の剣。
いつかはお前の心をズタズタに切り裂くだろう。
クラウドが目を醒ましても、醒まさなくても。
そうなる前に、離さなくてはならない。

ティファは俯きながら応える。

「愛...とかじゃないと思うの」

「今までの私の彼に対する態度、酷かったでしょ?」

そして自嘲気味な顔を私に向けた。

「それなのに、言ってくれたの。
“ティファに支えられてる”って」

今度はクラウドを見上げる。

「彼を全く信用していない私を、彼はあんなに信じてくれた」

そして視線を手元に落とした。

「なのに私はその手を、いとも簡単に振り払ったんだわ。
自分が傷つくのが怖くって...」





“彼女が幸せなら......私は構わない”

夜道を行き、かつてと今とでは考察を変えた自分の決断を思い起こす。

ティファは恋心からむやみにあの手にすがり付いているのではない。
最悪の事態を予測した上で、最善を尽くしている。
自らの過ちを償うために。
傷つく事など恐れずに。

それが彼女にとって良い事なのかどうかは...わからない。
おそらく、誰にもわからない。

一つ確かなのは、私は過去に過ちを犯した。
私は彼女の手を離し、結果彼女は奈落の底へと落ちた。

暗闇の中立ち止まり、自らの手を見つめ、ティファの最後の台詞に想いを馳せる。

“クラウドのためだけじゃない。
そんな自分を変えたいの”





二つ目のヒュージマテリア回収に成功し、再びミディールへ戻った折、事態は急変する。
ウェポンの襲来を乗り切ったは良いが、その際に地盤から噴出したライフストリームに二人が飲み込まれてしまった。
地揺れが落ち着くのを待ち探すが、見つからない。
もう一時間が過ぎようとしていた。

「いたぞ!!こっちだ!!!」

突如バレットの大声が周囲に響き渡る。
駆けつけると、彼は意識のないティファの身体を必死に揺さぶっている。
クラウドも近くに倒れていた。

「おい!大丈夫か?ティファ!!」

やがて、薄っすらと開かれる瞳。

「う...ううん?
バレット...帰って来たのね、私」

“帰って来た”?

そうか。
行っていたのだな。クラウドの元に。

彼女はまた気を失うが、呼吸も確かで見たところ異常もない。
ライフストリームに一時間も浸かっていたのに、だ。
私はかつてここの村人が口にした “守り神” という言葉を思い出す。
私達はこんなにも互いに支え合い、奇跡の連続の中で生きている。

「しかし、お前にゃ負けたよ。たいした女だぜ、まったく」

微笑み、私も無言でその意見に同意した。





先に目を醒ましたのはクラウドだった。
そして、彼は本物の “クラウド” だった。

数日遅れて意識を取り戻したティファを待ち、彼は状況説明を行う。

「捻くれ者の、クラウド君ね!」

「それじゃ、今までと変わんねぇぜ!!」

会議室を飛び交う、久方ぶりの明るい声。
そして続く、もうすっかり旅の合言葉となった “あの台詞”。

新たな目的地へ向かうため機内を移動中、ティファと目が合った。
彼女は輝きを取り戻した瞳を向ける。

「ね、私...ライフストリームの中で本当のクラウドを見つけたんだ。
ううん、私が見つけたんじゃない。
クラウドが...彼が自分自身の力で見付け出したんだわ...」

私は昨晩の出来事を思い出す。

「クラウドはそうは思っていない」

ティファはきょとんとし、不思議そうに首を傾げる。

「あいつは眠っているお前の手を、三日間離さなかった」

目の前でみるみる赤らむ頬を、微笑ましく見つめた。
人の本質は、そう変わるものではない。

しかし...

彼女が今後、クラウドから瞳を逸らす日はないだろう。





ルクレツィア、私は今から君の息子を殺しに行く。

彼女は過ちを犯した。
私も過ちを犯した。

私を拒絶した彼女。
私は傷つく事を恐れ、簡単にその手を離した。

愛する人の最愛の息子の命を絶つ事でしか、罪を償えぬ現実は...神が二人に与えた罰に違いない。

罰を受けた後、襲うのは身を裂く様な苦痛であろう。
それでも迷いはない。
それが正しい道だと、疑わない。

しかし彼女を一人で苦しませはしない。


私はもう二度と、彼女の手を離さない。


******************


ミディール中、他の仲間が割と冷めてると思ったのは私だけでしょうか?
でもそんな中一人信じ続けたなら、更に萌える!!!

愛情もあると思いますが、彼女を献身的な看病に駆り立てたのは、罪悪感と自分のふがいなさが先に来るのでは?と思っています。

瞳を逸らし続け、最終的には手も離してしまったティファ。
でももう過ちは繰り返さない。








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