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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Calling 3


Calling 2、の続きです。

ティファにベタ惚れのオリキャラの、友人視点から始まります。






強い眼差し。

彼女にあって、私にないもの。

変わりたい、愛しい人のために...


Calling 3


“ランチしない?”

元々は俺の友達だった彼女。
それをあいつに紹介したら、くっついた。
だから俺は、彼女と二人で飯を食いに行っても全くもって気にしない。
どうせ彼女からもあいつに報告がいくだろ。

あいつと違い、俺も彼女も喋る方。
加えて半年ぶりだ。
自然と話に華が咲く。

食後のコーヒーに手を付けた。
そろそろ戻らなくちゃな...
時計を気にし出すと、彼女は今までと打って変わった顔付きになる。

「ねぇ......彼は、元気?」

何を言ってるんだ?
一緒に住んでるんだろう?
俺の方が聞きたいくらいだ。

「まさか...別れちゃったの?」

不自然なくらいあいつの話を出さなかったのは、そのせいか?

「ううん...別れてはないんだけど...
...最近毎日帰りが遅いの。
どこかで飲んでるみたいで。
まともに...顔合わせてない...」

「...ねぇ、仕事って、今忙しい?」

「そりゃ、忙しいことには忙しいけど...
ごめん、思い当たる節がないよ」

そんなことになってただなんて、思いもよらなかった。
何やってんだあいつ?

「そうだよね。知らないよね。
でも...いつも彼の話相手になってくれてありがとう。
この前の金曜も、二人で飲んでたんでしょ?」

「? 俺、ここ二週間くらいあいつと飲んでないけど」





気になる事があったんだ。
数日前、上司から聞いた話。
俺に “あの店” を紹介してくれた人だ。

「な?言った通り、‘よかった’ だろ?」

上司とは思えない程気さくな人。
というか、ただのスケベ親父。
俺はこの人が大好きだ。

確かに ‘よかった’ ですねぇ、と、ニヤニヤ話に乗る。
肝心なのはその先だ。

「ほら、お前が仲良くしてるあいつ。
名前なんて言ったっけ?
総務課の仏頂面のイケメン」


あいつの事か?

「あいつもあの店が気に入ったみたいだな。
昨日店で見たよ。
カウンターにいたから、向こうは気付いてないだろうけど」

あれか?ムッツリって奴か?
と、大口を開けて笑う。

俺も合わせて笑うが、頭の中は疑問符だらけだ。
あの店からの帰り道、奴は確かにこう言っていた。

“美味かったけど、流石に遠いな。
次からは別の店にしようぜ”

アレは嘘だったのか?
いったい何のための。
...一人あの店に行くための?

(今日のこと、彼には言わないでおいてもらえる?)

何故大切な人が待つ家に帰らない。
まさかあいつ...





「毎晩、どこをほっつき歩いてる?」

思い立ったらすぐ行動。
その後の事は、後で考える主義だ。

奴は質問に質問で返す。

「...聞いたのか?」

“彼女から”、か?

「ああ、聞いた。上司からな。
お前をとある場所で散々見かけたって」

カマをかけてみたらチッと舌打ちされる。

...ビンゴか。

「なぁ、どうしちゃったんだ?
彼女、心配してるんじゃないのか?」

‘毎晩’ 帰って来ないと言っていた。
嘘までついて。

俯き何も言わないこいつ。
でも、何となく考えてる事はわかるものだ。
長い仲だからな。

「...惚れちまったの、か?」

「...っ」

...マジかよ。

(金がなくて結婚出来ないって嘆いてたぜ?
なぁ、元気出せよ。
長年付き合ってたら、こんな事もあるって!)

彼女に投げた言葉が虚しく宙に浮く。
信じてたのは、彼女だけじゃないんだぞ。

「勝手にしろよ」

まさかこんな言葉が待ってるとは思わなかったのだろう。
奴は怪訝そうにこちらを見た。

「むしろ、都合が良いくらいだ」

「...何の話だ?」

「どうなっても知らないからな」

「だから何の...」


「俺は彼女のことが、好きなんだぜ?」





「はぁい?」

扉を開けるとそこには同い年くらいの女の人。
確か...知らない顔だ。
女性って、綺麗な人の顔は忘れない。

「何かご用ですか?お店はまだ準備中で...」

「あの...」

「少しだけお時間いただけますか?」

思い詰めた顔で彼女は私を見つめた。





目の前に置かれたアイスティーのグラスは、無数の水滴を身に纏い泣いている。
あたかも彼女の心を表すかのように。

その人は、“例の彼” の恋人だった。
夜中まで家に帰って来ない彼。
そこまでは私も聞いている。
彼と共通の友人に私の話を聞き、今日はここまで来たのだという。

(あいつはとある店に通ってる。
そこの店主目当てだ。
なぁに、心配することないぜ?
とてもあいつなんか相手にする人じゃない。
すぐに振られて戻って来るって!
...待っててあげてくれないか?
俺も一緒に一発殴ってやるから...)

「私が本当の事を知りたがる質(たち)だから、教えてくれたんだと思うんです。
聞いたら居ても立ってもいられなくなって...
でも、あなたにはとばっちりかけて...本当にごめんなさい」

私も真実を伝えた。
確かに店には来るけど、親しい仲ではない事。
自分には決まった人がいて、彼はお客様以上の何でもないこと。

おそらくそれは彼女が望む返答だったろうが、私が彼の素性を何も知らない事に彼女は少なからずショックを受けたようだ。
つまり彼は私との未来を期待してないのに彼女を拒絶してる。

「もう...ダメなのかな」

「気休めにね、なるかもわからないんだけど。
実は私も一度彼に家出されたことがあるんだ」

今の彼、と言うと彼女は「信じられない、こんな素敵な人...」と目を丸くした。
...あなたも十分素敵なんだけどな。
なんだろう...前にもあった、この感じ。

「他の女の人のところに?」

「まぁ...ね」

本当は事情はもっと複雑だが、今は目の前の相談者に元気を出してもらう事が優先だ。

「私、彼と話してみます。
このまま指をくわえて待ってるのは癪(しゃく)だから」

強い眼差し。

私はあなたを尊敬する。
だって私は動かなかった。
傷つくのが怖くって。
本当は彼は探して欲しかったのかもしれないのに。
その罰として、今もわだかまりを抱えてる。

「一度だけね、会話をした事があるの。
彼、あなたの事を “大切な恋人” って呼んでました。
私に向かって」

それまで気丈にしていた彼女は、そこで初めて涙を見せた。
ごめんなさい...と、繰り返しながら。

一度泣いたら吹っ切れたのか、その後の会話は明るかった。
二人して皮肉を言う。

   男って本当に馬鹿だよね。
   ね、こ~んなに良い女なのにね!

飲み物にもやっと手をつけてくれた。

何が懐かしいのかわかったわ。
あなたは彼女に似てる。
フワフワ可憐で、なのに真っ直ぐな強い眼差し。
そしていつだったか繰り返された会話...


(エアリスみたいな人に生まれたかった...)

(私は、ティファがいいよ!!)


「スッキリしました。ありがとう」

嘘ではないのだろう。
私も楽しかった。

互いに無言で伝え合う。
もっと違う形で会いたかったね、と。

最後に言った。


“きっと彼は、あなたの元へ帰ってくる。
ランチ10回分賭けちゃう!”






タイムリミット、か。

“次、いつ早く帰る?話したい”

メールを確認し、携帯をパチンと畳む。
彼女を誤魔化すのはもう限界だ。
このままじゃ遅かれ早かれ終わるのは間違いない。
俺は決めなければならない。

...会いに行こう。
今、一番大切な人に。

頭にあの台詞がグルグル回り続けていたけれど...


(俺は彼女のことが、好きなんだぜ?)





Calling 4に続きます。





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