Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
Calling 1
AC後ティファの不安を、オリキャラの恋を交えて。
◆一話に軽~い (オリキャラ)
◆二話にCloud×Tifaの性描写ありです。
◆一話に軽~い (オリキャラ)
◆二話にCloud×Tifaの性描写ありです。
震える携帯。
取るでもなく、切るでもなく。
それでもそこから、目が離せない...
Calling 1
一瞬の出来事だった。
言い訳すると、俺は面食いではない。
確かに美人だけど、問題はその “雰囲気” だったと思う。
というか、人を好きになるのに理屈なんていらないしな。
「お姉さん、ほんっと綺麗ですね~...」
正面の席で鼻の下を伸ばす同僚。
「おい、やめろよ...困ってるだろ」
フォローを入れたが、慣れているのだろう。
店主はクスクス笑い、なんてことないように言った。
「お飲み物、先にお伺いします?
今日は暑かったから、喉乾いてるでしょ」
じゃ、生二つ!と、こちらに確認もせず注文を取り付ける同僚。
...異存はないけど。
こいつとは学生の頃からの腐れ縁だ。
俺の三、四倍はやかましいお調子者。
まぁ、似た者同士が仲良くしなければならない道理もない。
「な、来てよかっただろ?」
「まだ食ってみなきゃわからん」
そうは言ったけど、本当は少し後悔をし始めていた。
「美味くて安い店があるから行ってみないか?」
帰り際に声を掛けられた。
場所を聞く。
「は?結構遠いぞここ」
一気に面倒な気分になる。
変わり映えはしないが、美味くて安い店なんて、近くに掃いて捨てる程あるじゃないか。
しかしこいつは諦めない。
「美人で有名らしいんだよね~
...店の店主が」
「...」
まぁ、そう言われて全く興味が出ない男はいないよな。
ただの野次馬根性のはずだった。
それなのに店に入って一分で、彼女から目が離せなくなっている自分がいる。
それだけならまだいいが、俺には長い付き合いの恋人がいる。
そして、“後悔”...そうは言ったものの、しばらく忘れていた、恋が始まる瞬間特有の高揚感を喜ぶ俺もいた。
「おまえら、最近どうなの?」
ビールに口をつけ、うめぇー!と一息ついた直後の事。
動揺してビールの泡が飛んだ。
...こいつには俺の考えてることがわかるのか?
「どうって?」
「いや、そろそろ結婚とかさ、しねぇのかなって」
もう三年一緒に住んでいる。
考えてるさ。
...さっき料理のオーダーを取りに来た彼女を見る今の今までは、かなり迷いなく、真剣に。
「給料がなぁ...お前も知ってるだろうけど」
だよなぁ。と嘆く同僚。
それとなく他の話題を振る。
その日の会は、同僚にとってはいつものそれとなんら変わらなかっただろう。
ついでに言うと、飯も文句無しに美味かった。
その日以来、俺は毎日その店に通った。
俺の席は最初のテーブル席からカウンターへと移る。
店の客が呼ぶから、彼女の名前も知った。
もう一週間にもなるだろうか。
しかし、彼女と交わした会話は一言だけだ。
“また来て下さったんですね”
まさか顔を覚えてくれてるとは思わなかったから、嬉しかった。
それだけで十分だ。
俺は別に、彼女との距離を詰める気はない。
こんな美人だ...当然、相手だっているだろ。
ただ一つ、心に引っかかるのは、今も首を長くして俺の帰りを待つ恋人のこと...
彼女を超える誰かに出会ったからといって、彼女に対する気持ちがすっかり変わったかっていうと、そうじゃない。
“ごめん、急に接待が入って...”
“今日はあいつと飲んでくるから、先に寝てていいよ”
最初の内はなんてことない風にしていた彼女も、流石におかしいと感付いてる頃だろう。
これ以上言い訳も思い浮かばず、今日は連絡すら入れてない。
その時、カウンターに置いた携帯が震える。
着信だ。
見なくたって、相手はわかる。
しばらく続いていたコールが鳴り止み、ふぅ、と息をつく。
と、安堵したのも束の間、すぐにまた震え出す。
音が響いたため、それを手で握り締めた。
二度目のコールもやり過ごすと、目の前の店主はこちらを不思議そうに見やる。
そりゃそうだ。
大の男が携帯握り締めて “居留守” を決め込む図なんて、そうそうない。
「俺、大切な恋人がいるんです。
何年も一緒に住んでいて。
なのに、別の人を好きになってしまって...
...帰り辛いんです」
その “別の人” 当人を前に、随分大胆だな俺は。
しかし、その方が逆に俺の気持ちはバレない気がして、安心して話せたのだと思う。
グラスを拭く手を止め、彼女はこちらを見つめる。
なんとなくだけど、俺を見ている訳ではない気がした。
再び手を動かし始める彼女。
「相談に乗ってあげられればいいんですけど、私には無理みたい。どうしても、その彼女に肩入れしてしまいそうだから」
「それは...女だから?」
「ううん」
また手を止めた。
「私にも、黙って家を出て行った彼を、ひたすら待ってた事があったから」
「それに、今みたいに電話も出てもらえなかった」
「...忙しかった?」
ベッドに入り込んだ際、聞かれる。
眠れなかったんだろう。
「ああ、ごめん...
...ずっと手が離せなかった」
酒の臭いをさせてそう言う俺に、彼女はもう返事をくれなかった。
「今日は機嫌が良いねぇ」
すっかり座り慣れたカウンター席。
俺と同じ頻度で訪れる常連客に、「普通ですってば!」と返す彼女。
「一週間ぶりくらい?」
「そう...ですけど」
何の話をしてるんだ?
相変わらず彼女のプライベートは謎に包まれたままだ。
無意識に避けてたんだと思う。
割り切ってはいたが、彼女の男の話を具体的に耳に挟むのは嫌だった。
しかし、良くわからないことだらけだな。
早い時間に来ると、店を小さな子供がちょこまかしている。
彼女を名前で呼ぶから、安心したが。
まさかあの年であんな大きな子供はいないよな。
三人暮らしなのか?
今日は客の入りがいい。
こんな日は、長らく彼女に視線を向けても気付かれないのを良い事に、さっきから俺の眼はやりたい放題だ。
ふとカウンターの隅から視線を感じる。
そこには初めて見る金髪の男が座っていた。
俺みたいな類の仕事をする男じゃなさそうだ。
太くはないが、鍛え抜かれた体付き。
何より珍しい色をした瞳が、不躾(ぶしつけ)な視線を送ってくるのが気になった。
(なんだ?感じの悪い奴だな...)
気にせず、彼女との一方的な時間の共有を楽しむ。
そうこうしている内に、男はグラスを握り締めたまま、あろうことかコックリ...コックリ、と舟をこぎだした。
(迷惑な客だな)
心底彼女に同情した。
しかし、次の瞬間目に飛び込んできた光景に、俺は頭を殴られたようになる。
その男の居眠りに気付くと、店主はすぐさまカウンターを出て、男の肩に両手を添えながら言った。
「クラウド、先に上で休んでて」
男はハッと目を覚まし、「いや、いい」と不満顔の彼女を無視してカウンターに入り、黙々と皿を洗いだした。
「水に触ったら、目が覚めてきた」
「もう、本当にいいのに」
すると奴は彼女の腰を一瞬だけ引き寄せ、耳元で囁いた。
「一週間ぶりなのに?」
他の客には聞こえない、しかし、彼女と俺にはしっかり届く音量で。
そして勝ち誇った眼差しを俺に投げてきた。
頭にカッと血が昇る。
(ああ、確かに俺は彼女が好きだ。
でも見てるだけで何もしてないだろう?
第一、俺は金を払ってる客だぞ?)
“割り切ってる”
そう思い込むだけで、本当は俺はこんなに期待してる。
惨めな気分にやるせなくなり、その日はもう店を出た。
いつも閉店まで居座る俺が家に帰る気になった事に、店主はどことなく嬉しそうだ。
彼女にとって、俺はこれっぽっちも何でもない。
家に着くと、恋人はまだ起きていた。
俺が酔っている事を知ると悲しそうにしたが、それでも笑顔を作る。
「今日は、早いね」
ああ、惚れた女の男に小馬鹿にされて、むしゃくしゃしたから帰って来た。
よっぽどそう言ってしまいそうなくらい苛ついてたが、そんな勇気は俺にはない。
無言で彼女の腰を掻き抱いた。
さっきアイツがそうしたように。
そしてそのまま乱暴に彼女を抱いた。
夢中で腰を打ち付けながら、目を閉じる。
脳裏には愛しいあの人の微笑み。
しかし俺を見下ろす碧い瞳も頭にこびりついて離れない。
きっと彼女も、今頃アイツに抱かれてるんだ。
「...最近、少し変だよ?」
...わかってる。
「でも、しばらくこんな風に求めてもらうことなかったから...少し嬉しかった」
俺は、サイテーだ。
Calling 2に続きます。
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