Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
3rd Gold Night ~前編~
プロローグ小説前半頃。
Aeris×Cloud×Tifaの関係に初めて向き合う二人。
ヒロインズに対して割と中立的なクラウドが出てきます。
ご注意を。
ヒロインズに対して割と中立的なクラウドが出てきます。
ご注意を。
『花火に消された言葉 ~Aeris's date~』の後日談です。
切ないまま終わります。
切ないまま終わります。
あの旅の中心には、いつだって二人の女性。
“がまんがまん、こんな苦労話、笑って話せる時が来るよ。
だから、がんばろ!”
“じゃ、思いっきり気にしちゃえば?”
一人は花の様に明るく強い人。
彼女は彗星のごとく現れ、そして突然去った。
俺の中に強烈な何かを残し。
それは枯れる事なく永遠に咲き誇る。
“急がないで、クラウド。
ゆっくり...少しずつでいいの。ね?”
“想いを伝えられるのは言葉だけじゃないよ...”
もう一人は優しく温かい人。
近くにいながら遠く離れ離れだった彼女は、ある日俺の心の真ん中で目を覚ます。
そして彼女は今も俺の真ん中にいる。
あの二人がいなければこの星は消えていた。
そして俺も、消えていたんだ...
3rd Gold Night ~前編~
「今度の土日、一泊でどこかに行こうか」
私達はその提案に顔をほころばせた。
クラウドは来週からデリバリーの仕事を始める。
軌道に乗るまではどんな小さな依頼も断る事は不可能だろう。
必然的に減る家族の時間。
心遣いが嬉しかった。
バレットが家を出て数ヶ月。
心配していた彼と彼女の仲は順調に前進している。
積極的に接するとまではいかないが、彼はマリンからの呼びかけに必ず手を止め丁寧に対応し、今まで聞いた事もない声色を用意する。
そして彼女は今もクラウドの膝の上だ。
今週末となると、早急に行き先を決めなければならない。
私はこの旅の主役に問いかけた。
「どんな所に行ってみたい?」
「う~~ん...」
マリンはクラウドのマネをして腕を組み床を眺め続ける。
その小さなつむじを見つめ、私達は辛抱強く彼女を待った。
やがてマリンはパッと腕を解き、同時に顔を上げる。
「二人が ‘あの旅’ で行った所に、行ってみたい!」
最初に思い浮ぶのは白と青のビーチ。
しかし季節は冬だった。
コスモキャニオンは険しい谷の中だしウータイは遠すぎる。
ロケット村はロケットなき今は観るものがなく、ゴンガガは...まさかね。
となると、クラウドには悪いが選択肢は一つ。
それにそこは夢の詰まった子供の園。
「遊園地はどう?」
マリンは予想通りバンザイをして飛び跳ねる。
クラウドに目配せすると、“しょうがないよな” と肩をすくめられた。
翌日たて続けに遠方へ電話を入れた。
深い意味はない。
‘あの旅’ と言われ思い付いただけだ。
バレットは当然の事、目的地の最寄りに住むナナキも私の申し出を二つ返事で受け入れてくれる。
続くユフィは電話に出ず、ヴィンセントは携帯を持っていない。
シドは先約、リーブには仕事で断られた。
「遊園地って柄じゃないし、いいんじゃないか?」
確かにヌイグルミを脱いだ彼にあの場所はそぐわない。
「あ!ユフィだ」
鳴り出した電話を耳に当てると、クラウドはお風呂場の方を指差し席を立った。
『なに~?』
変わらないトーンに一瞬で懐かしさに包まれる。
彼女も私からの提案を喜んでくれた。
そしていつもの調子で一方的に事を進める。
『マリン見ててあげるからさ、少しはクラウドと周りなよ』
『変な気回さないでよ...
そんなんで誘ったんじゃないってば』
『でもさ、忙しくてしてないんでしょ?
デートなんか』
ドキっとして言葉に詰まる。
‘忙しくて’ というのはお店の事を指しているのだろう。
マリンとクラウドの関係に気を払い見て見ぬフリをしてたが、彼と私の間には時間以外の問題も山積みだった。
‘仲間’ から突如 ‘同居人’ となった私達は、その過程で踏むべき関係を、まだ成り立たせていない。
それどころか二人きりになると突如漂い出す居心地悪い空気。
私はそんな現状を変えたかったけど、その方法を考えあぐねていた。
『どうせクラウドは乗り物ムリなんだしさ。
あたしらが乗ってる間に、二人で次のやつに並んでてあげてよ』
ユフィは私の性格を上手く利用した任務をふる。
幼いマリンを長く待たせるのは難しいし、その役目をクラウド一人に任せるのも気の毒だ。
沈黙を承諾と解し、ユフィは逃げるよう電話を終わらせる。
『そいじゃ、そういう事でよろしく~
あ、ホテルもあたしが予約とっとくよ。
二人はもちろん同じ部屋ねん♪』
あっという間に切られた携帯電話を赤い顔で睨む。
それを膝に降ろし、はぁっと息をついた。
“デート”
私はまだ、それをクラウドとした事がない...
聞き慣れた軽快なBGM。
その世界を彩るビビットカラーは、大人の私にさえ高揚感を呼び起こす。
「父ちゃん、早く~~~!!!」
マリンはその十倍はあろうかという巨体を、足を踏ん張り引っ張っている。
“なんこのれるかな!?”
行き路で高ぶった彼女の興奮は、目的地の入口にサプライズゲストを見つけ、絶頂に達した。
“そんなにはしゃぐと、最後までもたないよ?”
喉まで出た言葉はすぐに引っ込む。
どんなに疲れたって、今日は彼女を抱っこしてあげられる人員に事欠かない。
チケットを手渡され、夢の国に入る権利を得たマリンは一目散に駆け出した。
「マリン!そんなに走ると転ぶぞ!!」
前を行く大小のデコボコな背中を眺め、私とクラウドは目を見合わせた。
今日、私はここで彼と沢山の “初めて” を体験する。
「ん?」
原色の黄色で書かれた注意書きにクラウドは顔をしかめた。
「これ、マリンには無理だぞ。背が足りない」
「本当?」
私もそこを覗きこむ。
「じゃあ、似たのを探そっか。
私、バレットにメール入れとくね」
私達は最寄りの案内図を求め動き出した。
一つのアトラクションに並んでは皆を見送り、また別の列に加わり15分ほど皆を待つ。
とてもテーマパークとは思えない時間の過ごし方を数回繰り返した後、クラウドは申し訳なさそうに言った。
“なんか悪いな、巻き添えにして。
ティファは皆の所に行ってもいいんだぞ?”
私はそれにヤキモキする。
その僅かな15分の繰り返しに私はこんなに胸を高鳴らせているのに、彼は違うのかな?
いつもなら引き下がったかもしれないが、来週から変わる私達の生活と...
心に根付く、昔ここで経験したほろ苦い思い出に後押された。
“一緒にいたいんだけど...ダメかな?”
珍しく飛び出た大胆な発言に冷や汗をかく。
“ダメじゃない、けど...”
『けど』?
その汗は更に温度を下げた。
“緊張する”
ひた隠しにしていた自分の気持ちと全く同じ思いを率直に伝えた彼が可愛く、また滑稽に思い一気に気が緩まる。
“毎日一緒にいるじゃない”
私のあっけからんとした態度とは裏腹に、彼は顔を背け呟いた。
“周りの人が見るからだ。
ティファは、その......綺麗だろ?”
心臓が飛び上がった。
彼の口から初めて出た、私を “女” と意識した台詞。
二人で夜を過ごす事はあったが、彼は甘い言葉を囁いてはくれない。
黙り込む私達。
でもそれはいつもの気まずい沈黙とは種類が違う。
クラウド?
私達、擦れ違ってるだけで...
本当は同じ気持ちなの?
「腹減った...」
端的な嘆きに吹き出した。
今並んでいる列の傍らの、食欲をくすぐる香りを漂わせるホットドッグのワゴンを物欲しそうに眺めるクラウド。
「大した威厳ね、お父さん」
皮肉を言う私にクラウドが苦笑する訳は、先程彼がマリンにもっともらしく諭したからだ。
“マリン、もうすぐ夕飯だから我慢しろ”
「半分ずつなら、いいだろ?」
「え...?」
「どうせ皆あと10分は来ないんだし」
固まっている私の了承もなしに、列を抜けていく。
これから起こるだろう出来事を想像しドギマギした。
おそらく恋人同士しか...でも恋人同士なら、普通にやってのける事。
「そいじゃ、30分後にここね!」
“混む前に夕飯を済まそう”
誰からともないその提案に全会一致した私達は、園内巡りを一時中断する。
今からマリンが向かう場所は少し時間がかかる。
“シアター” という名称に一瞬希望を感じたが、それが色付きのゴーグルをつけ、激しく動く映像を楽しむものだと知るとクラウドは青ざめた。
「どっか行くか?」
突如二人に舞い込んだ、少しまとまった時間。
「どっかって?」
「...歩きながら考える」
素っ気なく言いつつも、彼はスッと私の手をとった。
周りのカップルを羨ましく眺めながらも、いつ皆が現れるかわからない私達には出来なかった事。
人前で手を繋ぐのも...初めてだ。
半歩前の背中にのぼせながら、こっそりカウントする。
今日、彼が私にくれた “初めて” の数を。
(ティファは、その......綺麗だろ?)
代わる代わる口をつけたホットドッグ。
斜め右前で緩く結ばれ、揺れる二つの手。
そして...
これは私達の、 “初めて” のまともなデートだった。
だけど私はその時まだ気付いていない。
この場所が持つ意味を...
PR