Minority Hour
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One tiny trump 10 (fin.)
One tiny trump 9、の続きです。
ここまでご閲覧、本当にありがとうございました。
やはり今回も多少暴力的な描写となりますが、ここまで辿り着けた方々なら問題ないと思われます。
激長です。
One tiny trump 10 (fin.) ~FF7 Another Story~
俺は右手を宙に上げたまま、下ろせなかった。
燃えたぎり迫り来る隕石を、ぼんやりと見つめる。
...終わってしまった。
守りたかった、彼女との未来。
最後に、せめて...
一目...だ...け...
..............ティファ...
その男はエンジンのレバーを引き大きく舌打ちをした。
「さっさと戻れ!撤収だ!!逃げるぞ!!」
頼みの綱のクラウドが、倒れた。
そして...ついにメテオは動いてしまった。
未だかつて誰の目にも触れたことのない、悪しき魔法。
何が起こるかは想像がつかなかったが、目前で蠢(うごめ)く赤い塊を見れば容易に察しがつく。
地球の裏側へ逃げたって、もう無駄なのかもしれない。
それでも目の前の危機から逃げたくなるのは、人間の本能だった。
パニックを起こし、我先にと飛空艇へ乗り込んでくる戦士達の流れの中、一人それを逆流した。
「お願いどいて!通して!!」
船から降ろされた縄バシゴに群がる人々を見て、拉致があかないと甲板の手摺りに手を掛ける。
しかし次の瞬間力を込めた二の腕を、後ろからガシリと掴まれた。
「ティファ。今降りたらもう助からねぇ」
悲痛の顔で引き止めるはシドだった。
「クラウドから頼まれてる。
お前を死んでも降ろすなってよ。
あの捻くれ者は最後まであんなだったが、結局お前の事ばっかりだった」
唇を噛み締める。
シド...でも私には無理よ...
涙で霞んだ視界にも、はっきり映る。
だってあの人は倒れてる。
私の真下で、悲しそうにこちらに手を伸ばしながら...
「ごめんなさい...それでも私........私...!」
勢い良く手を振り払う。
『ティファ!!!』
仲間の声は......もう、届かない。
「はぁっ...!はぁっ...はぁっ...!くっ...!!」
メテオから渦巻く赤い竜巻で、足場が崩れた。
堪らずその場に転がりこむが、すぐに立ち上がるとキッと前を睨み再び走り出す。
あと少し...
あと少し...!
彼は片手を上に上げたまま、微動だにしない。
でもまだ生きている。
私はそれだけで...
......ウド!
...ラウド!!
「クラウド!!!」
「......ティ...ファ?」
真上に上がった右手を握り締め、必死に彼の名を呼んだ。
何度目かわからないその呼びかけに、やっと彼は眼球だけをゆっくりと動かす。
目は開けてたが、そこに流れ込む血と体の痛みで虚ろな瞳。
彼の手を自らの額に押し付け泣きじゃくるだけで、何も言えなかった。
「馬鹿だな...来たのか...?」
「でも、嬉しい......よ...」
ようやくそこで額から手を離し、彼に微笑む。
彼も微笑み返してくれた。
久しぶりの、愛しい笑顔。
彼の手を頬に押し当て、目を閉じる。
涙が一気に何滴も零れ落ちた。
辺りには、何本ものメテオの竜巻が二人の周囲を破壊し続ける音だけが響く。
炎の熱も近づいて来た。
後ろは振り返っていないが、もう戻ることは不可能なのだろう。
そのおぞましい光景にも関わらず、信じられないくらい柔らかい二人の時間。
二人を心地よい沈黙が包みこむ。
「...ティファ?」
「...ん?」
眉を少しあげ、泣きつつも穏やかな顔を作る。
「ごめん...な?」
「いいのよ、クラウド...もういいの」
「俺は、八つ当たりしてただけ、だ...
俺がティファなら...きっと同じ事を、した...」
「...............」
「許して...くれない、か?」
「ううん、私こそ.........私こそ...!!」
必死に首を振る。
(お前さんを想う者への裏切りじゃ)
本当に、その通りだった...
(俺は信じてる)
嘘をついてるのを知った上で、そう言ってくれたあなた...
取り返しのつかない事をしたのは、私の方よ...
「守りたかった...
この手で守りたかった...ティファとの未来。
ティファが命懸けで取り返してくれた、この大切な...手で...」
彼は私の頬を優しく撫でる。
うん、私もだよ?クラウド。
そうじゃなかったら、とっくにホーリーを発動させてる。
頬を包み込む、大きな手。
手に取るようにわかる、互いの気持ち。
言葉がなくても、穏やかに流れる時間。
失いたくない...
失いたくない...
この時間...
この温もり...
「なぁ、この前...言ってやらなくて...ごめんな?」
「 ...ん?」
また少し眉を持ち上げる。
「..........言ってもいい、か?」
目を見開き動けない。
涙で彼の顔はもうすっかりその輪郭をなくしていた。
嫌だ、やめて。聞きたくない。
言ってたじゃない!
"二人で生き残れたら" って...!!
「ティファ......」
「.....................愛してる」
(............っ!!!!)
涙が溢れて止まらない。
歯を食いしばり、目をギュッと瞑る。
彼を......
..........失いたくない...!!!
背中に気配を感じる。
こちらに静かに歩みよってくる何か。
クラウドはそれを見て笑顔を崩し、目を見張る。
彼は私の手を掴み私の身体を地へ押し付け、残った力を振り絞り上に覆い被さってきた。
そのままきつく抱きしめられる。
彼はもう血でぐしょぐしょだった。
真っ赤に染まっていく私の身体。
「ティファだけは勘弁してくれ...」
ガタガタ震え、いつになく弱気な口調で懇願する。
「なぁ、頼むよセフィロス。
俺の事は八つ裂きにしていいから...」
「クックック...クラウド。
そんな理想的な台詞を言ってくれるなよ」
次の瞬間、クラウドは顔の真横に突き立てられた刀をハッと見た。
「ティファ、お前からだ」
地面に手をつきゆっくりと身体を持ち上げる。
力が入らず、自然と私の肩に頭をもたれ掛けてくるクラウド。
「...ティ...ファ?」
血が流れ込んだ片目をきつく瞑り、不思議そうな顔を向けてくる。
座りこんだままそんな彼の腰に手を回し、自らの頭を彼のそれに押し付けしっかりと抱き締めた。
正宗は私の喉に突きつけられたままだ。
私に寄りかかりながらも、クラウドは顔だけを回しセフィロスを睨んでいる。
「怖いか?」
嬉しそうに聞く彼。
「言ったじゃない。怖くないって」
目に涙をため、虚ろな目でセフィロスを見つめる。
「体は死んでも、心は一緒だもの...」
「一人なのは...あなただけよ?」
キシャーーーーー!!!!!
とまたジェノバがセフィロスの後ろで悲鳴を上げた。
「...可哀想な...人...」
涙を流しながらも、今度はしっかりと同情の眼差しで彼を見据えた。
「...っ」
険しい顔をし、セフィロスは刀を握る力をこめる。
(やられる...!!!)
ギュッと目を瞑るが、不思議と体に痛みはない。
(..........?)
「母さ......なん...で...」
目を開けるとそこにはジェノバの触覚に体を貫かれ、口から血を流すセフィロスがいた。
ズルっ...
触覚を引き抜かれ、驚愕の顔のまま倒れ込むセフィロス。
やがて両手のひらをキツく握り締め声を絞り出す。
「...っなんで...なんで......なんで...
何故だぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
わなわなと震え、立ち上がれない彼。
しかしジェノバは自我がないのか、別の方向に歩を進め、メテオの竜巻に体を蝕(むしば)まれ悲鳴を上げていた。
「アレは...ただの化物で、本当のお母さんじゃないからよ...」
ピクリと動くセフィロス。
「あなたのお母さんは他にちゃんといる」
「今もあなたを思ってくれ...「黙れ」
セフィロスは私を遮り、腹から血をだくだく流し悲痛の声で嘆く。
「終わりだ」
「メテオも...俺も...何もかも...」
クラウドを抱き締めながら、力をなくす彼を見つめ続けた。
やがて問う。
「...持ってる?」
再びピクリと肩を揺らすセフィロス。
「かして欲しいの」
「ティファ!?」
驚くクラウドの顔を、真っ直ぐ見つめる。
私には、あの子みたいな特別な力はないけれど...
...精一杯あなたを守らせて?
そしてゆっくりと顔を近づけ、別れのキスをした。
目を見開く彼。
離した頬と唇に、温かい血が移る。
「クラウド、愛してる」
さよなら、世界で一番愛しい人...
呆然とする彼をそっとその場に横たえ、セフィロスの元へと近づいていった。
体を動かそうと顔を歪ませ、私の名を叫ぶクラウド。
「ティファ!!!」
セフィロスはそれを左手に握っていた。
彼の前にひざまづき、手を伸ばしそれを受け取る。
そして両手で包み込み、力を込めた。
すると地面から何本ものライフストリームの糸がゆっくりと這い出し、私に集まる。
緑白色に光りだす、マテリアと私の身体。
「ティファ!!!よせ!!!!!」
彼は私の数歩後ろに這いつくばり、こちらに手を伸ばしている。
...熱い。
身体が四方から引っ張られる。
引きちぎれそう...
ピシィッッ......!!!
二の腕にぱっくりと亀裂が入り、血が吹き出した。
「ティファアアアア!!!!!」
彼はもう泣き声だった。
ピシィッッ......!!!
今度は背中が裂けた。
「あぅっ...!」
痛みに耐えかね地面に手を付く。
「うっ......」
胃がナイフでかき回されるような感覚...
手で口を押さえるが、堪え切れず吐血した。
目に涙が滲む。
ライフストリームはそんな私を温かく包み込んでくれるけど...
自らの体を抱き締め、歯を食い縛る。
(成功する可能性は、万に一つ)
(万一成功したとしても、その時には術者の体は木っ端微塵じゃ...)
お願い神様...
エアリス...
万に一つの...奇跡よ、起これ!!!
ライフストリームは、倒れたまま無表情で私を見上げるセフィロスも包みこむ。
あたかも彼を抱きしめるかのように。
(セフィロス?
ずっと...一人で辛かったね?
よく、頑張ったね?)
その声はあの友人のような、彼の本当の母親のような...
私も知ってる、無条件の愛情に溢れた声だった。
「母親に会うには...どうしたらいい...」
セフィロスは呟く。
「...?........もういるじゃない、ここに」
「.....愛してもらうには?」
「何も...」
「...何もしなくても...いいのよ?」
次の瞬間身体に走った激痛で、地面に突っ伏し倒れ込む。
その様子をセフィロスはじっと眺めていた。
「だって、あなたは...本当は......」
そこで意識を手放した。
霞む意識の中で、微かに耳に届く、短く...けれど温かい言葉。
(....................かせ...)
次に目を開けた時、私は誰かに抱きかかえられていた。
ゆっくりと目を開ける。
......クラウド?
彼は座り込んだまま私の体をしっかりと抱き、じっと上空を睨むように見つめている。
意識を取り戻した私に気が付くと、こちらに視線を送り、「見ろよ」と言わんばかりに再び顔を上げた。
空は青かった。
視線の先には逞しい木の根に支えられ、一際大きなクリスタルの中で眠るセフィロス。
彼が生きているのか死んでいるのかは、わからない。
何を考えているのかも。
しかし私はその時初めて、穏やかな顔をする彼を見た。
私達は一言も発することなく、傷だらけの互いの体を支えそれを見つめ続ける。
やがて遠くから聞こえてきた物音に反応し、彼は私の手をキュッと握る。
私も握り返した。
「帰ろう?.........クラウド」
仲間が、呼んでる。
~Epilogue~
天井には煌(きら)びやかなシャンデリア
ステージには華やかな横断幕
テーブルの上には何種類もの料理とシャンパン
ごった返す、俺とは一生縁のなさそうな着飾った人間達
そんな中、場違いにも俺は...
あれから一週間。
今日はジェノバ戦役の功労者を労うパーティーだった。
一ヶ月前と全く同じ、この場所で。
ティファは朝から機嫌が悪い。
他の女性が着飾っている中、自分一人が腕や足に包帯を巻いてるのが気に入らないらしい。
確かに華やかなドレスに白いそれはちぐはぐだったが、俺に言わせれば一ヶ月前ここで俺に腕を絡めてきた彼女の方が "ちぐはぐ" だ。
すっかり元に戻った彼女は、先程向けられたカメラの前で、俺との距離を50cm程とる。
......それでこそ "ティファ" だ。
だけど...
後ろからその腕をグッと掴み、有無も言わさず会場を出た。
仲間の冷やかしに彼女は居心地が悪そうだ。
連れて来たのは、お互いにとって '苦い思い出' の海岸だ。
ここで言おうと決めていた。
「撤回したい言葉がある」
ティファの目の前に立つ。
「そしてもう一度、宣言し直したい」
腰に手を回し、引き寄せた。
「...ティファ?」
目を閉じ、彼女のおでこに自分のそれを押し付ける。
誰よりも...
「愛してる」
fin.
******************
" その命の終わりを悟り、
そんな私の願望から始まった妄想ワールドに、長らくお付き合いをありがとうございました。
英雄「俺はだしに使われたのか?」
いえいえ彼の超絶マザーコンプレックスも、書きたかったことの内の一つです。
彼が、我が子を思う美しいルクレツィアの存在を知り得たら、展開は何か違ったのかなぁ、と。
ジェノバの首だか腕だかを嬉しそうにプラプラ持ち歩くセフィロスに、なぜ誰も指摘をしないのか。
「ソレ、キミノ母さんジャナイトオモウヨ?」
"困った時の、エアリス頼み" はしたくなかったので(←版権元に張っ倒されそうですが)、彼女はあくまで "一人の女性として" の懐の深さでもってセフィロスに人の心を戻させ、間接的にティファとクラウドを助けてくれた描写にしました。
全編を通してのキーワードはクラウドの『右手 』です。
ティファと、ティファとの未来を自らの手で守りたいクラウド。
逆にそれを守りたいティファ。
互いを思う故に一度は擦れ違いますが最後は...というところが伝わったなら幸いです。
ちなみにクラウドに最後に言わせた台詞は、後にも先にも二度と言わせるつもりはありません(多分)
それくらいの重みを込めて言わせました。
本編のオイシイ要素は残し、逸脱しまくりの我流ストーリーを加えるのはやはりMAME的至高であります。
VIVA捏造。
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