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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Overflow 〜Side Cloud〜 2

Overflow Cloud 1の続きです。



共同で設けられたシャワーから戻るとバレットに険しい顔で迎えられた。

「お前、今晩からティファと寝ろ。俺はマリンと寝る」
「はぁ?」

藪から棒に何を言ってんだ?そうクラウドは眉根を寄せた。その頃一行は崩れかけた空き家に身を寄せていて、板で仕切っただけの奥の間にティファとマリンが眠り男達は野ざらしで雑魚寝をしている。

「物騒な輩がいるらしい」
「強盗なんて見向きもしないだろ。金目のものなんて何もないし」

しかしどうやら金品を狙った犯行ではなく、被害者は女性ばかりと聞きクラウドも事の重大さを呑みこむ。「寝てる間はティファだってわかんねぇだろうが」それはその通りなのであるが...
ちょうど湯浴みを終え寝ぐらへと戻ってきたティファの姿を認め、クラウドは硬直した。

「ん?どうかした?」

視線に気付き大きな瞳を瞬きこちらを窺うティファ。まだしっとりと濡れた髪に、短い袖から覗く二の腕。身を覆うみるからに薄手な寝巻き代わりのシャツに、生唾が喉元にじわりと滲んでくる。



「二人とも心配性だなぁ」

段ボールを重ねて毛布を敷いただけの急ごしらえの寝床に横たわってから、クラウドは1ミリも動いていない。故意に身を寄せ合わずとも窮屈な空間にねじ込まれた大人二人の身体は触れ合う寸前で、吐息まで首筋に届きそうだった。「ふわぁあ...今日も一日大変だったね。クラウドもお疲れ様」ところが聞こえてきたのは呑気な欠伸混じりの寝ぼけ声である。

「おやすみ」

嫌な予感に薄目を開ける。信じられない事にティファは早くもスゥスゥと寝息を立てていた。女って...この状況で熟睡出来るもんなのか!?愕然とするクラウドは全身を固まらせたまま開いた口が塞がらない。嫌でも香る甘ったるい匂い。高めの体温は薄っぺらい布を容赦なく貫通してきて至近距離に横たわるクラウドをじわりと焦がした。

「ん...」

寝返りを打ったティファが横倒しになりこちらを向く。手の甲にトンと触れた人肌にクラウドは電気が走ったように肩を跳ねた。目線を下向けた先で暗闇に浮かび上がる真っ白な胸元。あの日以来毎夜思い出している艶めかしい裸体が克明に脳裏に蘇ってきた。ちょっと触るだけでも...クラウドの指先は無意識にティファに吸い寄せられる。

「んん...」
「うわっ、ごめ...!」

いやいやいや、俺が暴漢になってどうする...
慌てて大声を抑え込んだクラウドは肩で息をつき冷静さを取り戻そうとする。こちらの気など知りもせずティファは目蓋を固く閉じたままだ。あどけない寝顔から自分を信頼しきっている安心感を感じ取り、クラウドは邪念を捨て去ろうと瞳をギュッと閉じた。だがすぐ隣の寝息や身動ぎが気になり結局数分ともたない。

同じ事を何度か繰り返し、クラウドは遂に観念し暗がりの中溜息混じりにティファを見つめた。この狂おしい程の胸の締め付けは初めて体験するものではないが、強烈だった。壁一枚を隔てて眠るバレットやマリン、当のティファを蔑ろにしても保たれている均衡を壊してしまいたくなる。でも...

(できるわけ、ないよな...)

力任せに...なんて形はクラウドにとっても思い描く二人の在り方とは掛け離れていた。しかし何かきっかけを作らない限りティファが再び心を開いてくれる日は来ないだろう。そしてそれは彼が最も苦手とする領域であった。気が遠くなるような先の見えなさは延々と渦巻き、今日も半壊した街の夜は更けていく...



「朝っぱらから何やってんだ?」
「鍵つけてる」

「一睡も出来なかった...」釘とトンカチを手に、半開きの眼で扉にかんぬきを取り付ける。「お、おう...それは災難だったな」若い彼には酷な要求であったかとポリポリと頭を掻くバレットであったが、その日も容赦なく寝不足のクラウドに重労働を課すのであった。


Overflow 〜Cloud〜 2


「空いたお皿お下げしますね」

雑談に混ざり耳に届く声に知らず知らず奥歯に力が入る。物資不足のエッジでは衣服も入手し辛く、住民達はその日あるものを手当たり次第身に纏っていた。それはクラウド達も例外ではなく、フロアで忙しく働くティファが本日着ているのは少々サイズの大きめな変哲のないカットソーである。

スタイルが良いと適当な服でも決まるもんだな...などと感心するのも束の間で、昼食を取り始めてからの数十分の間クラウドは無防備に胸元を晒す広めの襟ぐりが気になってしょうがない。配膳のため前屈みになるたびにヒラヒラとはためくそれは不自然とまでは言わないが、当然見逃す男もいなかった。

戦闘の場でスポーティーな格好をする女性は多く、これまでティファの服装を気にかけた事はない。しかし今、彼女の肌が他の男の目に触れるのが嫌で嫌でしょうがなかった。急激な心境の変化に戸惑うと共になす術もなくただただ苛立ちを募らせるクラウドは、空になった皿を重ねる細い手首が一回り大きな手に絡め取られるのを見て心臓をざらりと撫でられるような不快感に襲われる。

「ティファ、この後は?」

真っ向から口説いてくる男にもティファは動じる事なく「それどころじゃないでしょう?」と呆れ顔でするりと手から逃れる。

「こんな時だからこそ、だ。付き合ってる奴、いないんだろ?」

気まずそうに返しに窮するティファに歯痒さがこみ上げてくる。自分が近くにいないのであれば彼女は即座に切り返し、結果もう少し卒なくこの場を切り抜けるだろうと直感的に悟った。

「男には興味ないってか...」

理想とは程遠い手ごたえに落胆し引き下がろうとする相手に、これ幸いとティファは「そう思ってくれていいよ」と素っ気なく畳み掛ける。その台詞が目前の男ではなく、視界から外れた位置にいる自分に向けて発されたものである事もクラウドは感じ取った。食事を取る手を止めたクラウドは厨房へと戻りつつある背中に無言で問いかける。

あれは、一時の気の迷い...?
だが楽観的な思考も存在する。ティファがクラウドと親密な関係を築く事に二の足を踏んでいるのは伝わったが、だからといって彼に冷たく当たるという最も容易な方法を取るには彼女は優し過ぎた。日々生活を共にする中でされる気遣い溢れる態度は客や知人達に対するものとは異なり、それはクラウドを浮かれさせるには十分だった。

そして何より彼に余裕をもたらしているのは、ミッドガルに戻り目につくようになった旧知の友人やティファに想いを寄せる数多の男達の誰をも差し置いて、自分だけが彼女を手に入れ一線を越えたという事実である。多少の勢いはあったとしても、ティファは心を開いたただ一人の男にしか身体を許したりはしないと絶対的な確信があった。





Overflow ~Side Cloud~ 3、へ続きます。




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