Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
湯けむり夢気分 ll 3
湯けむり夢気分 ll 2、の続きです。
湯けむり夢気分 ll 3
淡いグリーンに発色する温泉の脇に設けられた脱衣所に降り立つ。インナーの裾に手をかけるが、目の前の展開を真に受けて良いものか躊躇われた。こっそりと背後を伺うと意外にもティファはホルダーネックのホックを外している。
慌てて前に向き直ったクラウドも止まっていた手を動かし服を脱ぎ去った。これは...期待しても良いんだろうか? ポケットに押し込んだままだった温泉のチケットの存在をふと思い出し、駄目元で誘ってみたら案外あっさりと了承を得られた。
タオルを巻いてはいれど男女で風呂に入るというシチュエーションに期待は膨らんでいく。先程までの雰囲気も悪くなかった筈だ。すぐ横で湯に浸かり両腕をさするティファの腹の内がクラウドは気になってしょうがない。
一方、エステで潤った肌を摩りながらティファは一日を振り返る。本日のメインイベントは何と言ってもクラウドの誕生祝いだった訳だが、思いもよらないサプライズ返しに喜びを隠せない。
彼の頼もしい肩に頭をもたげ、内心囁く。私の料理の方が美味しいって言ってくれて、ありがと。お散歩も素敵だった。子供達もとっても可愛いけど、やっぱりクラウドは特別なの...
――ティファ、俺もだ
「...え?」
「...ん?」
脳内に響いたメッセージを不可解に思い、ティファは首を正すと眉をしかめクラウドを覗き込んだ。
――クラウド、今何か言った?
――ティファ...喋ってないよな?
無言であるにも関わらずテレパシーさながら脳内に直接届く互いの思考にいよいよ何が起こっているかを悟る。そういえば “ライフストリーム温泉”って...
――そういうこと!?
――そういうことか!!
顔を合わせ口をパクパクさせる二人であったが事態は既に取り返しがつかなかった。止めようと思ってもひとりでに漏れ出す心の内にクラウドは自分の顔がみるみる赤く染まっていくのを自覚する。
今日のティファが綺麗過ぎて、女性らしい装いも相まり食事中ずっと盗み見していたこと。元々どうしようもないくらい好きなのに、先の献身的な発言で益々惚れ直してしまったこと...全てが駄々漏れだった。
「ク、クラウド...!?」
際限なく湧き出るクラウドの想いにティファは戸惑いを隠せない。彼にとって最も都合が悪かったのは下心満載で混浴を持ちかけた事である。先刻抱き締め返してくれたティファも多少は乗り気に違いないと信じていたが、愚かだった。
ティファから発せられる “明日の朝ご飯何かな” とか “体、あったまる~” などといった締まりのない発想にクラウドは温度差を見せつけられる。中でも衝撃的なのは...
――手を繋いで歩けて、大満足!
「手で...満足...」
「えっと...私も嬉しいよ?クラウドとこうして...」
しかし思っていないものは思えないのだから仕方がない。気を遣いだすティファにクラウドは尚更気落ちした。だが項垂れる彼の耳に笑い声がクックと届く。顔を上げると気を悪くするでもなくティファは頬を染めはにかむ。
――ありがとう
「私のこと、こんなに好きでいてくれて」
はっきりと口にされ、クラウドの心臓がドキンと跳ね上がった。
「俺、凄いだろ...」
顔を逸らしつつも、ティファ一色な脳内を覗かれてクラウドは観念する。普段は彼からの好意を素直に受け止める事の少ないティファも「うん、凄いかも...」と照れながらも同意した。
寒気を感じたり足元がおぼつかなかったり、ほんの些細な変化でも察してくれるクラウドの愛情は無論感じ取ってはいたが、これほどとは...。服装を褒めてくれたのも社交辞令かと思っていた。
――いつも私ばっかり好きなのかなって...
――そんなことは...!
「うん、今わかった」
反論を満面の笑みで遮るティファにクラウドは嘆息をつく。クールぶっている裏の顔をすっかり暴かれカッコ悪くてしょうがないが、鈍い彼女にきちんと想いが伝わったのは成果だった。そして諦め悪く捨て切れないでいた例の望みに関心は戻っていく。嫌では...ないんだよな?
「ねぇ、クラウド...ちゃんと言ってくれたらいいよ?」
クラウドの強い欲求を肌で痛いほど感じ、ティファの心も揺さぶられる。ティファはクラウドの首筋に顔を埋め心の中でだけお喋りな彼の発言を促した。女性としては、やはり意思表示は相手からして欲しい。恋人からのお膳立てに後押され、クラウドはようやくその願望を吐露する。
「ティファ、抱きたい」
遠くで樹木の葉が夜風にそよぐ。湧き出た泉が湯船に注がれる水音に混ざり、深く重ね合わせられた男女の唇の間からは止むことなく濡れた音が立ち続ける。互いの感触を確かめ合うと同時に、とめどなく溢れて流れ込んでくる相手の想いを感じるのに夢中だった。
――クラウド、もっと...
――可愛い過ぎる...ティファ...
際限なくキスを求めてくるティファが愛おしく、丹念に舌先で愛撫を施すクラウドはとある変化に気がつく。ついさっきまで全くと言っていい程その気でなかったティファだったが、口付けを繰り返すにつれ急速に気分が高揚していた。
遂にはまだ全身に巻き付いているバスタオルに覆われ固く閉ざされている太腿の奥に早くもほのかに火が灯り始めた事実を察知し興奮を覚える。
「恥ずかしい...」
ティファがキスが好きだとは知っていたが、こんなにも直接快感に繋がるものとは知らなかった。意外な真相に感心するとともに、形勢逆転を狙える予感にクラウドの胸は高鳴る。恥じらいから瞳を睫毛で隠しか細い声を絞り出すティファがまたそそり、それを知った彼女は一層縮こまった。
「ね、ねぇ...クラウド、やっぱりここではやめにしない?せめて部屋に戻ってから...」
思いも寄らぬストップがかかりクラウドは目を点にする。
――冗談だろ!?ここまできて止められるわけ...
まくし立てられティファは尻込みする。そもそも男性の性欲自体が彼女にとっては直視するには強烈過ぎた。一転引き気味になるティファに焦り、なんとか引き留めようとクラウドが細い二の腕に指を埋めた時だった。
「おわっ...」
――柔らかい...
とろけそうな感触にクラウドは目を見張る。その反応に一瞬キョトンとするティファは「ああ」と思い当たると「クラウドからのプレゼントのお陰だよ」と笑顔を取り戻した。
「エステって何するんだ?」
「うーん、ハンドマッサージして貰ったり...」
――まさか男にされるんじゃないよな!?
――違うに決まってるでしょ!!
ライフストリームを介しての掛け合いにティファの調子は狂いっぱなしだ。絶え間無く雪崩れ込んでくる熱烈な想いに加え、この嫉妬である。そんな合間にもあの手この手でティファを説得しようと必死なクラウドは頭の中が大忙しだ。
――いや、ティファの嫌がる事はしない。もちろん色々したいけど...い、いや!今のは無しだ。そうだ、誕生日だし今日くらい良いだろ!?
取り乱す様が表面的には物静かな彼から掛け離れていて、ティファの挙動に一喜一憂する心が面白過ぎて、ティファは戸惑いを通り越し噴き出した。
「クラウド...可愛い!」
「え...」
男に可愛いはないだろと幻滅しつつも、ティファがこんなに笑ってくれるなら...なんて易々と許してしまうクラウドを、ティファは堪えられずに声を立ててクスクスする。
「ほんと調子狂う」
こんなの断れないじゃない...
クラウドの脳内に占める途方もない欲望に不安を感じつつも、ティファもとうとう決心を固める。
――ティファ。ティファの全部が見たい。知りたい...
自分を待ち受ける逞しい腕の中にそっと身を滑り込ませる。続いた返事にクラウドの心がわかりやすく踊った。
――今日だけね
湯けむり夢気分 ll 4、へ続きます。
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