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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Alone at Last

とうとう二人きりに...!
ギャグです。



Alone at Last


パチ!と安っぽい音を立てプラスチックのパーツは今度こそ水道管の定位置に収まり、クラウドは自室でひっそりと胸を撫で下ろした。自慢じゃないが生まれてこの方、家事と名のつく行為に精を出した経験はとんとない。

見た事もない形状をしたフィルターを逆向きのまま強引に押し込み危うく破損させてしまうところだった。ティファの失望した顔を思い浮かべクラウドは身震いする。何でもない時ならまだいい。でも今だけは...面倒な猫探しもやっつけではあるが片付け、あまり得意とはしない飛行タイプのモンスター退治にも二度耐えた今だけは、ようやく手に入れたこの時間に水を差したくはなかった。

フィルター交換に手間取ったのは、部屋に上がり込んだ後の切り込み方を思案していたせいもある。だが齢21にもなってこういった状況に相応しい所作は不思議な事に一切思い浮かばない。まぁ、なんとかなるだろ。実際、五年のブランクを物ともせず二人の関係性はまずまずだった。

...アイツが噂の幼馴染み...
...ティファちゃんのお隣になれるチャンスだったのに...!...
...ティファお姉ちゃん、その人だれ?...

噂話にちょいちょい紛れてネットリと絡まってくる羨望の眼差しに、涼しげな口元を維持するのは難儀であった。しかし一つ一つを改めて思い返すと少なからず物足りなさが込み上げてくる。道端ですれ違った男が自分の存在を無視して「ティファちゃん、今度店に行くよ〜」などと馴れ馴れしく話しかけてきた一コマを思い出し、クラウドは苦虫を噛み潰したような顔になる。けれど!

ボロアパートの変哲のない扉を前に、クラウドはゴクリと派手に唾を飲み下す。けれど、数秒後には俺は選ばれし者となる。このドアの内側へと飄々と消え去った瞬間、スラム中にどよめきが走ることだろう。何人かの男はショックのあまり卒倒してしまうかもしれない。明日からは流れ弾に要注意だ。それだというのに...!

天望荘の外廊下から辺りを見渡したクラウドは舌打ちをした。これほど見通しの良い場所だというのに奇妙にも誰もこちらに視線をよこさない。目の前の広場で井戸端会議をくり広げていた連中も今は何故か忽然と姿を消してしまっている。

「あー、あー...ゴホン、俺は今からティファの部屋に入る。何を隠そう、向こうから招かれたんだ」

不自然な独り言を呟いてみたが状況は変わらずクラウドはポツンと立ち尽くした。アイテム屋の店前でせっせと呼び込みをしている女を仰ぎ見るが、先程から道行く住人と長話をしている。気付けばカイティの良く通る声さえ止んでいた。

今度は外廊下の柵をブーツで蹴ってみた。カンと金属音が響くが顔を上げたのは猫だけである。腕組みをしたり剣の柄を手で握ったりするだけでは飽き足らず、遂には外面もかなぐり捨て極力人目に付くよう鼻歌交じりに軽くステップを踏んでみた。

「クラウド...何してるの?早く入って!」
「あ、うん...」

玄関から顔を出したティファに奇行を目撃されクラウドは凍りついた。キョロキョロと周囲を見回し、しかも心無しか嫌そうにしていたティファに少々傷ついたクラウドは落胆して素直に中に吸い込まれていく。

クソっ...見てろ、まだ部屋から出る時がある!本来の目的から脱線したクラウドは室内に入った途端、場をリードするどころか棒立ちとなるが、ティファの真の目的を鑑みるにそれで正解だったに違いない。


******************


...ゴクリ!



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