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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

touch me not?

リメイクで新たに生まれたクラウドの罪について。
ミッドガル脱出後のコスタデルソルです。



touch me not?


通りすがりの町人から今しがた貰った忠告の通り、常備しているアイテムの補充に加え、聞き慣れない治療薬を探す。

「金の針? ええと、金の針、金の針.........あ、あった!」

アイテムがずらりと並んだ陳列棚を追っていた人差し指が目当ての品の前でピタリと静止する。すぐ隣で目的の物を同時に探り当てた男の指先が、偶然ティファの手の甲を微かに掠めた。

「あ、すまない...」

焦って腕を引いたクラウドは、気を取り直しティファに購入数を指示すると店員が品物を梱包するのを無言で待つ。釣り銭を受け取り終わり、荷物持ちもさせて貰えないであろうティファは暇を紛らわそうと空いた両手を手持ち無沙汰に弄び始める。気づけば左手は右手の甲にそっと重ねられていた。

(別に気にしなくていいのに。これくらい...)

心の中で独りごちた瞬間、自らが無意識に選び取った表現にはたと気付き一気に頭に血が昇る。

(“これくらい” って...)

赤面を悟られまいと、誤魔化すように後ろ手で指を組み慌ててそっぽを向いた。そして動揺を鎮めると盛大な勘違いを順序立てて冷静に否定していく。まず第一に、彼はむやみやたらに女性に触れてくるような男ではない。むしろ逆で、異性に対する接し方は先程のように一貫して紳士そのものである。つまり戦闘中に何度かティファの身体に触れる機会があったのも、単純に彼女の身に降りかかった危険を回避するためだ。あの一度を除いては...

それが起こった夜を鮮明に思い出し、再び顔が火を噴く。脳裏に浮かび上がったイメージを掻き消そうと必死に頭を振った。あれは...あんな風に泣きつかれたら、クラウドは優しいから放って置けなかっただけ。バレットが慰めてくれたのと同じ。別の人がああやって悲しんでたら、クラウドはきっと同じように...相手が私じゃなくたって...

その時、自分ではない誰かを抱く彼の姿が頭の中にふっと描かれ、同時に胸の中央がズキンと軋んだ。ぼやけて正体は不明である女性の姿形を具体化しようとしている自分に気付き、慌ててストップをかける。自然と大きな溜息が吐き出された。私、何やってるんだろう...

あのミッドガルでの混乱のなか、クラウドが力の限り例の約束を守ろうとしてくれたのは明らかだった。それなのにその事実に満足せずに、他の女性に対する扱いと比べたり、厚意を素直に受け取れない自分がいる。そして最後はなんとも筋違いな恨み節をぶつけてしまうのだ。

15の時に七番街に流れ着いて以来、ザンガン流の使い手としてスラムの自警やアバランチのミッションでは危険な仕事を率先して引き受けてきた。住民達は例え異性であっても保護の対象であったし、口には出さずともビッグスやウェッジでさえ同等だ。そんな中でも極々稀に、腕は立たなくても身を挺してティファを庇ってくれる人はいて、どんな口説き文句よりも心を動かされるのはそんな行いだったかと思う。

だがそういったシチュエーションはやはりそうはなかった。グラスを掲げ熱心に口説いてくる面々もひとたび居住区にモンスターが紛れ込めば見苦しく人を押し除け一目散に逃げ出すか、ティファの後ろに隠れて震え上がるかどちらかである。幼い頃は人並みに女子らしい願望も持っていたがすっかり諦めの境地に達してしまった。なので、おかしいのは自分の方なのかもしれない。もっとか弱い普通の女の子であったなら、もう少し免疫もあったんだろうか?

「行くぞ」

クラウドはティファが差し出した手を当然のように払い退け、大量の荷物を一人で抱え店舗の出口へと向かう。こんな些細な女の子扱いでさえ新鮮であった。全体的に細身な割にしっかりと隆起している上腕の筋肉が目に飛び込んできてどきりと胸が跳ねる。どんなに鍛え上げようとも肉体にはやはり雲泥の差があった。

「ありがとう...」

クラウド...あの時は沢山助けてくれてありがとね。お礼も言えてなくてごめん。だってクラウドにとっては造作の無いことだろうけど、私だけに特別って訳じゃないのもわかってるんだけど、でもあんな風にされたら私...

改めて一つ一つのシーンに向き合うと、怒涛の混乱の中でも肌で感じた温もりが克明に思い出されてくる。戦慄で凍てついた身体を溶きほぐしてくれたのも、絶望で動かなくなった足を立ち上がらせてくれたのも、張り裂けそうな胸の痛みを和らげてくれたのも...数えきれないほどのピンチを救ってくれたのはいつだってこの温もりだった。

「ど...どうした?」

紅潮した頬を両手のひらで覆い隠すティファの目付きからただならぬものを感じクラウドはたじろぐ。

「...責任、取ってよね」
「.........?」

精一杯睨み付けるティファは心の奥底で育っていく矛盾する想いに今日も苦しむ。なんだかんだで皆に優しく、弱い者を絶対に守り抜くクラウドが大好きだ。それなのにどうしても願ってしまう。この先も私達は沢山の人と出会って、そして行手には想像も出来ない事が待ち構えてるんだと思う。だけど誰と何があったとしても...息が止まってしまいそうなくらいに強く抱き締めるのは、どうか私だけにして...


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惚れちゃうだろ〜!


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