Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
One tiny trump 7
One tiny trump 6、の続きです。
One tiny trump 7 ~FF7 Another Story~
海岸では、ティファの死体は見つからなかった。
血の跡のような、傷つけられた痕跡もない。
なのにティファは今日も帰って来ない。
そして、セフィロスの気配が北の大陸に戻る事もなかった。
もうあれから一週間が経つ。
俺は来る日も来る日も、当てもなく歩き続けた。
最初はジュノンの周辺。
何もないとわかれば、更に足を伸ばす。
宿にも帰らず、風呂も入らず。
夜になると地面に転がった。
目を閉じると頭痛と共に蘇って来る言葉達。
(言ってよ)
(せめて、抱いて欲しい)
(一生のお願い...)
エアリスのマテリアを持ち去ったのは、おそらくティファだ。
本来古代種でなくては使えないはずが、ティファはなんらかの抜け道を見つける。
よってセフィロスに目をつけられた。
今なら全てが繋がる。
黒マテリアと対照的な、あの白いマテリア。
きっとあのマテリアから発動される魔法には、メテオに対抗する力があるんだろう。
でもティファはその情報を誰とも共有しない。
考えられる理由は一つ。
きっと彼女は知っていたからだ。
あのマテリアを使ったら、自分の命は助からないと。
暗闇のなか目を碧く光らせ、溢れ出る涙を我慢することなくギリっと歯を鳴らす。
それから3日後の事だった。
携帯電話が鳴り響く。
『クラウド!今どこ!?早く帰って来て!!!』
ジュノン支社に、遠い山奥の村に住む老人から電話があったらしい。
10日前に瀕死の状態で保護された女性が家にいる。
その女性はつい先程目を覚まし、自分の名前を "ティファ" と名乗っている、と。
家...と言うよりは山小屋に近いそれ。
その持ち主に丁重に礼を言う。
自分のベッドを明け渡し、自身は知人の家に身を寄せて、名前も知らない彼女の命を救ってくれた。
俺より先に、担架を担いだ救急隊員がそこへ入る。
開いた扉の先で薄暗いその部屋に、ゆっくりと進んで行った。
ティファは顔以外の全身を包帯で巻かれていた。
未だそれに薄っすらと染みる、生々しい鮮血。
10日間何も口にしていない身体は痩せ細っていた。
そんな彼女を抱きかかえ担架に乗せようとする二人の青年に「大丈夫、起き上がれます」と意外にもしっかりとした口調で伝えた後、彼女は入口に立つ俺の存在に気が付いた。
すさんだ目をしていたであろう俺に、ティファは何も言えずに俯いた。
やがて消えいるような声を出す。
「ごめんなさい......」
俺は冷たく言った。
「何で言わなかった?」
彼女は肩をピクリとさせる。
「セフィロスの事だけじゃない。
エアリスのマテリアの事もだ」
ティファは目を伏せたまま答えない。
ただならぬ雰囲気を感じとった隊員達は、気まずそうに顔を見合わせる。
「それを使って死ぬ気だったから?
そうだよな?俺に黙って」
「......」
ゆらりと彼女へ近づいていく。
「あの日も最後に俺に抱かれて、一人勝手に満足してたんだよな?
もう死んでも良いって」
「何も知らずに取り残される俺の気も知らないで」
両手で彼女の肩をグッと掴んだ。
相変わらず彼女は何も言わない。
「エアリスの事で思い知ったんじゃなかったのか!?
ティファは!!!
大切な人に死に急がれる身がどんなに辛いかって!!!」
俺の口は止まらない。
「信じてたんだよ...俺は信じてた。
きっと話してくれるって!
何かを隠してることなんて、わかってた」
「二人で生きようって願ってくれてると疑わなかった」
「許さないからな」
「顔も見たくない」
「...もう、俺には話しかけないでくれ」
それを最後に部屋を出た。
背中に彼女の二度目の謝罪を聞きながら。
気付いたらそこには、あの救急隊員達はもういなかった。
それから二週間後、突如北の大陸にセフィロスの気配が戻る。
俺達は飛行艇に乗り込んだ。
しかし俺はその二週間はおろか、北の大地に辿り着いてからも、ティファとは一切口をきかなかった。
One tiny trump 8、へ続きます。
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