Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
無償の権利 5. Tifa (fin. )
無償の権利 4. Denzel、の続きです。
小さなオリキャラが出てきます。
これにて完結致します。
ご閲覧ありがとうございました。
お返しなら、いつだって貰ってる。
お願い、笑顔で受け取って。
子供は誰もが持ってるの。
大人から、当然に愛される権利。
無償の権利 5. Tifa (fin. )
日曜日の昼下がり。
定休日の店内を満たす、いつもとは異なる甘い香り。
そして止むことのない可愛らしい声。
「もうやだ、やめたいよぉ...」
ババ抜きに三連敗し、泣きそうなマリンの声がカウンターまで響く。
「マリンはさぁ、わかりやすすぎるんだよ。
ジョーカーを見ちゃうだろ?
もっと知らん顔しなくっちゃ」
得意顔で “コツ” を伝授するお兄ちゃん。
「じゃあ、次は何する?」
「おねえちゃん、クッキーまだ~?」
我が子とは異なる声が混じる。
普段から仲良くしている、近所の兄妹だ。
二人はそれぞれ、デンゼルとマリンと同い年。
おまけに気も合うようで、お互いの家を行ったり来たりはしょっちゅうだった。
そんな四人の勢いに押され、先程から無言の青年。
しかし溶け込んではいる。
クラウドは何故だか、子供にモテる。
彼がこちらにチラリと視線を送ってきた。
私も無言でメッセージを返す。
すると彼は、おもむろにポケットから小さなメモ帳を四冊取り出し、テーブルに置くとこう言った。
「じゃあ、今から俺が考えたゲームをする」
クラウドの考えた!?
クラウドお兄ちゃんが!?
普段の彼からは想像もつかない提案に、子供達は興奮を隠せない。
「ルールは簡単だ。でも頭を使うぞ。
好きなメモ帳を選んで、今欲しい物、したい事を出来るだけ書くんだ。
一つでも多く書いた人の勝ち。
制限時間は...そうだな、クッキーが焼けるまで。
賞品もクッキーにするか」
実はこれ、あれからクラウドと私が考えた私達なりの作戦だった。
「何が欲しい?」
真っ向から聞いたって、容易には聞き出せないだろう。
では二人が大好きなゲームにしてみては?
それでも二人は好き放題は書かないかもしれないが、友達も一緒にやれば、少なくとも同世代の子供が何を欲しがっているのかはわかる。
何それ~きいたことない!
ヘンなの~!
口々に言いつつも、子供達は結構乗り気だ。
「私、ペン持ってくるね」
クッキーはほぼ焼けたから、冷めた頃に声を掛けようかな。
『よ~い、ドン!』
四人の声が重なる。
結果は予想通りだった。
友達より枚数の少ない、大好物のクッキーを頬張る二人。
見ていて胸が痛む。
手が空いた私もテーブル席へ移り談笑に参加した。
お友達の女の子が選んだ、赤いメモ帳に目を通す。
「もう出てこないよ~」
「宇宙に行きたい、とかなんでもいいんだぞ」
そうクラウドからアドバイスされたせいか、本当に変なものまで混ざっている。
...キラキラのシール
チヨコボになりたい
クレヨンのピンクとあか
くもにのりたい
シンデレラのふくがきたい...
そうね、私もこんな事考えてた気がするわ。
思わず笑ってしまう。
と、そこに少し異質なものを発見した。
「自転車?自転車が欲しいの?」
まだ少し早くないだろうか。
「あ~、おまえ。まだ言ってたのか?」
兄が突っ込む。
「だって、ほしいんだもん!」
「こんどオレがかってもらえるからって、うらやましがってるんだよ。コイツ」
安い物でもないから、まずは兄から、ということになったらしい。
ちゃんと後ろに妹も乗せてあげるという条件で。
「今はもってる子のうしろにのせてもらってるからな~
なぁ、デンゼル?
自分のがほしいって、ずっと思ってたんだ!」
自転車があると、遠くへ遊びに行っても両親と約束した時間に余裕を持って帰れる。
仲間内での “強い味方” だというのだ。
「じゃんけんで負けた人は、おるすばんだもんね...」
マリンも寂しそうに言った。
どうやら現在、買ってもらえた子は、そうでない子よりやや少ないらしい。
自転車、か。
マリンには早いけど、デンゼルにはいいかもしれない。
隣のクラウドとも目が合った。
“いいんじゃないか?”
そんな顔。
「おねえちゃん、クッキーありがとう」
「はい、どういたしまして。
また遊びに来てね!」
暗くならない内に兄妹を送り出す。
しっかりと手を繋いだ小さな後ろ姿。
さぁ、夕食の準備をしよう。
クラウドはというと、カウンターに座り四冊のメモ帳と睨めっこをしていた。
疲れを知らない子供達は、おそらく今度は自室で何か別の遊びをしているのだろう。
「参考になるな」
ハートを飛ばしたクマさんが飛び跳ねている、可愛らしいメモ帳を手に取り真顔で言う。
“興味ない” ようでよく見てるのね、マリンの好み。
「しかしこれといったのは、さっきのくらいか...」
「聞いてみる?後で」
果たして素直に「うん」と言ってもらえるかしら。
「さっき部屋で、マリンにポーカーフェイスの特訓してたんだ」
「うまくなったんだよ、だから後で見てね!」
「ほらほら、よそ見してるとまたこぼしますよ~」
二人共、こういうところで遠慮はしない。
四人揃って食事ができる休日の食卓は、二人の声が途切れる事無く続く。
クラウドはちょっと、タイミングを逸している。
「ご馳走様!」
そう言い自分の食器をシンクへ運ぼうとするデンゼルに、彼は言った。
「デンゼル、自転車買ってやろうか?」
「ほんと?やったぁ!!
うれしい。そしたらマリン、うしろにのせてもらう!」
てんで違う方向から賛成の返事が返ってきた。
「う~ん...あったら便利だけど、俺はいいよ!」
カラッと断る彼。
「...いつかは乗れるようにならなくちゃいけないんだぞ?」
「でもさ、背が低い内に買うと、買い換えなきゃならないから大変だろ?」
...なんて頭の回転が早い子なんだろう。
はぁ、と呆れたような息を吐くクラウド。
「...クラウドもしかして、俺達に何か買ってくれようとして、あんなゲームしたのか?」
卑怯だぞ、そう言わんばかりに目付きを険しくするデンゼル。
怪しい雲行きに、マリンは不安そうだ。
大丈夫だから。私はそんな視線を彼女に送った。
噛み付かんばかりのデンゼルに、クラウドも語気を強めにして言う。
諭すように。
「デンゼル、必要な物は買ってもらって何も悪いことはない。
子供はそんなことに気を使わないで、素直に受け取っておけばいいんだ。
マリン、これはお前もだ」
黙りこむ二人。
「そうよ。
二人共、私達の可愛い子供だもの。
二人が我慢してるの見ると、悲しくなっちゃう」
考えこむマリン。
一方のデンゼルは、まだ納得のいかなそうな顔をし、こう言った。
「子供、子供って...さっきからなんだよ。
ちゃんと仲間に入れてくれよ。
俺はただ、二人の役に立ちたいだけなんだ。
ガマンなんかしていない!」
すかさずマリンが泣きそうな声で言う。
「デンゼルを怒らないであげて。
私も同じ気持ち。
ティファとクラウドの力になりたいの」
顔を見合わせるクラウドと私。
怒っている訳では勿論ない。
確かに二人は我慢をしている事に、辛さより喜びを感じてそうだ。
これが二人なりに見出した、家庭への貢献の仕方なんだろう。
しかし私達大人にとっては、最低限の物も買い与えない=親の役に立つ、という等式は成り立たない。
どうしたものか。
はぁ。
再び深い息を吐くクラウド。
「わかったよ。
じゃあ、取引しないか?」
『取引?』
要領を得ず、キョトンとする二人。
「今は好きな物を買ってやる。
でも将来ちゃんと返してもらうことにするよ」
「返すって...自転車を?」
デンゼルが聞く。
「いや、そんなのじゃない。
フェンリルみたいなすごい奴だ。
自転車の百倍は値が張るぞ」
算数の得意な彼は、生唾を飲み込んだ。
「マリンは...セブンスヘブンの二代目をやってもらうかな。
そして俺とティファに、毎日美味い料理をたらふく食べさせてくれ」
『...』
「なんだよ、乗らないのか?
俺達の役に立ちたいんだろ?
大口叩くだけで、本当は自信がないんだな」
少し挑発的に言う。
デンゼルの性格を利用した、うまいやり方だ。
「そんな訳ないだろ!
将来はクラウドの百倍稼いでやる。
フェンリルでも何でも買ってやるよ!!」
「私も!...百倍はムリかもしれないけど、お店なら出来るもん!!」
取引成立、かな?
再び顔を見合わせる私達。
「それじゃあお風呂の時間まで、もう一度ゲームね。
今度こそちゃんと凄いのを書いてよ?
じゃなきゃ将来私達、あなた達に好きな物買ってもらえないじゃない」
再び二人の元へ渡るメモ帳。
子供部屋の扉を開ければ、天使の寝顔。
(“子供、子供って...”)
だって、子供じゃない。
本気で言ってるから、それがまた可愛い。
目当ての物を見つけるために、机の方に目を移す。
...あった!
堪えきれず、自室に戻る前にそれを開いた。
先ほどより10項目ほど伸びたリストの中に、望んだ “おねだり” を見つけ、私はクラウドの元へ一直線に駆けて行く。
ねぇ、クラウド
ん?
ゲーム、またやらなきゃね
そうだな
自転車がほしい
(一番安いのでいいよ!)
ピアノがならいたい
Fin.
******************
書いてて気になりました。
自転車の二人乗りって、今は確かしちゃダメですよね?
そこはスルーをお願いします。
デンマリは、皆で遊びに行きたいとかは要求しそうだけど、小さい子特有の「買って!買って!」はあまり言わなそうだったので書いてみました。
大人になったら周りは冷たいぞ(笑)
今の内にたっぷり甘えておきなさい!
クラティは、こんな風にふつ~~に夫婦してたらいいよ
後出ししましたが、地味に処女作でした。
家族もの大好きです。
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