Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
Jelly × Jelly lV
携帯電話でのトラブル。ティ→クラ編。
Jelly × Jelly lV
ーー今日はお会いできて嬉しかったです
開封するなり目に飛び込んできたメッセージを二度見したクラウドは、まず先方の誤送信を疑った。なぜなら送付元である人物は客であり、その者と接点を持った理由は依頼品の収集のただ一点に尽き、顔さえまともに覚えていないのだから。
懐の読めない奇妙な便りはスルーするに限る。だが数える程しかない通知の中でいやに目に付くそれはただならぬ存在感を発していて、無性に後味の悪さを覚えた。勘弁してくれよ。これだけを見たなら、まるで...
「クラウド、メール?珍しいね」
受信ボックスに並ぶ字面に気を取られ背後に迫る気配を察しそびれたクラウドは思わぬ声掛けに図らずも握り締めた通話機器を胸元へと隠してしまう。無意識のなせる技にティファは一瞬面食らったが、すぐに表情を変えぷいと体の向きを反転させた。
「ちっ...違う!!」
賢明とは言い難い言い弁明だった。「何が違うの?ごめんね、覗くつもりなんてなかったの。もう上行くからお好きなだけどうぞ」一息で言い終えスタスタと階段を目指すティファは、慌てふためくクラウドに全く取り合わない。
「だから本当にそんなんじゃ...「でも、女の人からなんでしょ?」
隠し立てをするつもりはない。しかし相手先の性別を明かした上で事の経緯を機転よく説明する力量が備わっていなかったクラウドは咄嗟に返答に窮してしまう。図星に加え、あたかも後ろめたい事があるかのような反応に傷ついたティファは、クラウドを置き一人上階へと上がってしまった。
寝室のドアをやや乱暴に開け、ティファはバッタリとベッドに身を投げ出す。クラウドが追ってくる気配はない。しばらく放心していると、脇に置いていた携帯電話が音を立てメッセージの受信を知らせた。うつ伏せたまま腕だけをズルズルと伸ばし冷んやりとしたそれを掴む。送り主はクラウドだった。
『ティファ、さっきは誤解されるような態度を取ってすまない。住所を知らせたいと言われて客にアドレスを教えたら全然関係のないメールが届いたんだ。見られたら勘違いされると思わず隠してしまったが、やましい事は決してない。俺からは何も送ってないし、なんなら携帯を見てくれたっていい』
身の潔白を訴える文面は辻褄は合うし、こちらも既に冷静さを取り戻している。元来彼にはメールをする習慣はなく、最近だってアレ以外に誰かと通信をしていた様子はない。真実はクラウドの主張する通りなのかもしれないが、ティファは再び力を失いシーツに身をもたれた。
全然関係ないメールって、どんなの?可愛い娘だった?本当は少し嬉しかったんじゃないの?見ても良いって、証拠なんていくらでも消せるじゃない...
沸々と湧いてくる嫉妬以上に打ちのめされたのはあの余所余所しいリアクションだろう。どんなに分かり合えたと思っても、やはり侵入出来ない個人的な領域は他人である限り存在し、そこにてんで違う誰かが自分の知らない内にひょんなきっかけで入り込んで来たりもする。
一方的にボールを渡して終わりという対処法もずるく感じた。今度はこっちが主導権を握らないとならないのだろうか?確かに聞く耳も持たなかったのは悪かったが、このままでは自分が無実の彼に言い掛かりをつけ続ける話の通じない人になった気さえしてくる。
許す以外に道はない訳だが、返事をどう書くかは難しい。ましてや携帯の中身までチェックするような見苦しい真似はこっちから願い下げだ。見つめた先の理路整然とした釈明文にもどかしさを覚える。自ずと動いた指先は液晶内に短い一文を書き上げた。
ーー好きって言って
「...ティファ?」
「!!」
ドアの隙間から不意を突き掛けられた声にティファはビクッと肩を揺らしサッと目の前のスクリーンを伏せる。振り返った先のクラウドは目を見張り、そして「本当だ。嫌なもんだな」と決まり悪そうに頭をかいた。
「俺が馬鹿だった。あんなの、怪しくしか見えないよな」
「...そうだよ」
「けど、反射的にやっちゃっただけなんだ。ティファだって...」
ふてくされ声ながらも返答があったことと、今いま自らが受けた同等の仕打ちに余裕の生まれたクラウドはベッドに腰掛けからかい混じりに不平を零した。少々体裁は悪いがこちらは他者とやり取りをしていた訳ではなく、事情が異なる。
「私のは見せられないやつだったりして」
トーンの低いティファの発言に目を丸くしたクラウドはすぐさま「...どうせはったりだろ?」と一蹴する。平静を装いつつもそこには微かな動揺が見てとれた。だんまりを決め込むティファにクラウドは「おい」と先を促す。
「クラウドには見せられないのは確かね」
まさかの発言を受けクラウドは「...男?」と信じがたいよう呟いた。
「そ、男の人宛。さしづめ貴方に対する愚痴ってとこかしら」
あるまじき返しにはとうとうクラウドは顔色を失い「なんだよそれ...」と強く拳を握り猜疑心を露わにする。そこで限界を迎えたティファは即席で作り上げた自らのなかなかの性悪ぶりにプッと吹き出すと身を起こしクラウドの首に腕を絡めた。
怪訝な顔の上に窺える非難の色に胸がチクリと痛むがお互い様だ。こうでもしないと伏せて隠してある文面を暴露する度胸のないティファは、クラウドが直接足を運んでくれたことにまずまずの満足をしている。互いの不可侵領域が消える日はないし、その必要もない。それでも寂しさを感じてしまった時は、ちょっとの勇気を振り絞り甘えてみるの良いかもしれない。
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