Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
異世界を百倍楽しむ方法
DDFF OOでクラティ+ザクエア。
女子が集まるとなると話題は一つ!ノンシリアスです。
※ザックラ再会イベントのネタバレを含みます。
女子が集まるとなると話題は一つ!ノンシリアスです。
※ザックラ再会イベントのネタバレを含みます。
異世界を百倍楽しむ方法
闇夜に揺らめく焚火の炎を虚ろに眺め、クラウドは夢のような邂逅の連続により高揚した心を鎮めようとする。今宵は大所帯が一堂に会する夜で、戦士達は元いた世界の仲間同士火を囲った。腹の膨れた連中は寝転がり、雀のように肩を並べお喋りに耽る二人の軽やかな声だけが辺りを満たしている。もう二度と拝めないと思っていた光景に碧眼はじわりと霞む。だがしっとりとした感傷は、耳に飛び込んでくる早口に見る間にぶち壊されていった。
「選り取り見取りの癖に、バッツって浮いた噂がないわね」
「彼はなんて言うか...てんで鈍そうよね、そっち方面は」
「うんうん、そんな感じ。ねぇ、知ってた?ロックとセリスって7歳差なんだって。ちょっと驚いちゃった」
「へぇ...ロック、若く見えるわね。セリスも同い年ぐらいなのかと思ってた。十代ってこと?」
「彼女とっても美人よね。セッツァーもぞっこんだとかなんとか...」
「私は最初はロックはティナとなのかな、なんて思ってた」
「ロックも罪作りよねぇ。それより驚きなのはカインよ。ローザだって。彼女、セシルの恋人でしょう?」
「それはまた...禁断愛ね...」
「ね。イケメンなのに不遇よね。ところでスコールの彼女って、ティファに少しだけ似てない?」
「自分じゃわからないなぁ。誰かがスコールに突っ込んだら “全然似てない!”って怒られたって...ふふ、ムキになって可愛いよね」
す、凄まじい情報量だな...誰と誰が、なんて俺は一つも把握してないぞ。
それどころか何人かは未だに顔と名前が一致しない。口をあんぐり開けるクラウドには言いづらいが、これらは公然カップルについての基本事項は既知のものとして省かれた極々一部である。ノンストップで繰り広げられる恋愛トークに目を回していると、隣で丸太にもたれていたザックスがムクリと身を起こした。
「...ったく。しょうもねぇなぁ、女ってのは」
あけすけな物言いを笑い、「まったくだ」と同調する。そうだよな、知らなくて当然だよな。なんとなく安心した矢先、地面から腰を浮かせた旧友の取った行動にまたしても度肝を抜かれる。
「なぁ、エアリス。エアリスは俺とだろ?」
大声で割り込んできた男にエアリスは「はぁ?」と眉を顰める。また始まった。ティファは肩をすくめ苦笑いした。
「おい、ティファ。そこ代われって」
「ちょっと!話してるのに...」
「はいはい、アッチ行った!」
ティファを無理矢理追い払いエアリスの隣を占拠したザックスは密かにクラウドにウインクを送る。「もう、無茶苦茶なんだから...」移動してきたティファから漂う甘い香りにクラウドはカチンと身体を強張らせた。
“お前まさかエアリスからのアプローチを本気にしてたりなんかしないよな。俺達トモダチ、だろ?あ?”
“あ、ああ...”
次元を飛び超え再会を果たした数少ない友は “トモダチ” にも時と場合により様々な用法があるとただならぬ形相で教えてくれる。ザックスには頭が上がらないという事情もあるが、それ以前に心配には及ばない。クラウドはすぐそこの横顔をチラリと覗き見た。
この空間に集った面子の時系列はまちまちで、ティファはクラウドの真相こそ知っていれどメテオが存在する時点の記憶までしか無さそうだ。対するクラウドはやや先を行き、世界平和を取り戻し彼女と初々しい同居生活を始めたばかりなのである。
ティファはザックスから猛攻撃を浴びせられるエアリスを無言で見守る。「ちょっと待ってって言ってるじゃない」「待った。もう五年も待った。充〜分に待った!その間、脇目も振らずにエアリス一筋だったんだぜ?」とザックスは人目も気にせず細い腰に手を回した。大きな手の甲は「コラ、離しなさい」とつねられるがビクともしない。
“はぁ、もう...やっと踏ん切りつけたところだったのに...。頭がぐちゃぐちゃ...”
何年も前に忽然と姿を消した想い人に言い寄られるとは一体どんな気持ちなのだろう。かなり複雑な心境である筈の彼女のもう一つの恋も知っているが故に、ティファは事の成り行きを傍観するのみだ。
“でも...また会えて、良かった”
瞳を潤ませ肩を震わせるエアリスに心の底から同意する。
――久しぶり!怪我は治ったか?
長年胸につかえていた後悔を一声で吹き飛ばしてくれた太陽の様な彼。色々あったけど、やっぱり良い人だな。それに...
「...いいな」
ポツリと呟かれた一言にクラウドは「何がだ?」と顔を上げる。
「一生に一度でいいから、あんな風に誰かから好かれてみたいなって」
ついぞ耳にしたことの無い願望に鼓動が早まる。「苦手じゃないのか?ああいうの。ティファは...」わざと何気ない調子を装い探りを入れた。
「人前でってのはともかく!でもグラっときちゃうよ。あんなの誰だって...」
ほんの少しの期待と共に発した警告。いいの?クラウド。エアリス、ザックスに奪われちゃうかもしれないよ?ザックスが親友だから平気なフリしてるだけ?それとも、もしもそうじゃないなら...
クラウドは微動だにせず無反応だ。何やってるんだろ、私。他人ばかり気にして肝心な事は何一つ口に出せない。結局、恋敵の有無なんて関係ない。私にとっては...
「なんてね。エアリスみたいな素敵な人だけの特権だよね!」
沈黙に耐えきれなくなったティファは明るい調子を繕い先の発言を笑い飛ばす。そうは言いつつもややシュンとしてしまう様子に、ここで話を途絶えさせるのは冷淡だと鈍感なクラウドも察知していた。
“ティファだって、負けないくらい素敵だ”
なのにこんな簡単なフォローさえ喉がつかえてスマートに出てこない。
――ま、ちょっと不器用というか人付き合いが苦手というか...とにかく、イイ奴に違いはないぞ!
滅入った気持ちを瞬く間に晴らしてくれる温かい声。思い出すだけで得も言われないくすぐったさが蘇る。
――クラウドだって、こう見えて胸の奥にはアツ〜い思いを秘めてんだぜ?
思わぬ指摘にどきりとなる。この友人には何でもお見通しだった。
――こういう時は声を張り上げて「行くぜ!」くらい言わなきゃダメだって!
膝で固めた拳がギリっと音を立てる。やる時はやるんだ。俺だって...
「...俺なんか、五年じゃ済まない」
口から飛び出た思いのほか核心に迫った告白にクラウドは生唾を飲み込んだ。「...何が?」首を傾げるティファの背後に転がっていた猫型ロボットの電源ランプが赤から緑に変わり、起動音が低く唸った。そのまた後ろのユフィが不自然な寝返りを打ち、背を向け片手を上げるとグッと親指を立ててくる。ヴィンセントの両手のひらはそっと耳へと当てられた。クラウドの全身をダラダラと汗が伝う。と、そこに頭の後ろで腕を組んだ男が通りがかりこちらをヒョイと覗き込んでくる。
「あ、ティファだ。なぁ、デザートない?」
妙齢の男女が見つめ合う神妙なムードも何のその、ヴァンはさらりと割り込んでくる。「あるわけないでしょ」そこそこ面識のある彼に対しティファも気さくに応え、クラウドは止めていた息をブハっと吐きゼエゼエ喘いだ。だがヴァンが悪意なく放った質問に再び呼吸が止まる。
「なぁ、ティファってバレットと長いこと一緒に住んでたんだろ?奥さんなのか?」
誤った事実関係をティファはやんわりと訂正するが、隣でくつろぐバレットに向け「そういえばスラム時代もよく間違われたわよね。私が十六の頃は流石になかったけど」と昔を懐かしみさして嫌がる素ぶりもない。
「よせよ、俺にはミーナだけだ。それに一回り以上の差なんて気味悪いだろうが」
「はーいはい」
おい、バレット...何故お前が嫌そうにする。あのティファだぞ。気味悪いとか...もっと光栄に思え。クラウドは口惜しさに身を震わせた。「おい...今の噂、どこまで回ってる」ヴァンに詰め寄り「みんな知ってんじゃないの?」という回答に顔面蒼白となる。「俺に関する話題は何かないのか?」そう、例えば俺とティファの幼馴染以上恋人未満の焦ったい関係から目が離せないとか...
「クラウドの?ああ、そういえば...セフィロスとの切っても切れない縁とか中性的なツーショットが堪らないとか、一部の女子の間で盛り上がってるぜ!」
淡い希望を抱いていたクラウドはかすりもしない返事に気が遠のきそうになる。必死に意識を保ち、よろめきながらもヴァンの胸倉を掴んだ。
「お前、常識無さそうだから教えてやる。いいか、そういった趣向が世の中に存在する事は認めるが、そいつらの騒いでる事には全く根拠がない。デートだってよっぽどの事がない限り女とする」
「よっぽどの事って...クラウド男とデートしたことあるのか!?」
「少なくともここの読者はそのルートは通らない。それと男女が複数人で同居しようともそこに婚姻関係は生まれない。ただの共同生活だ。相思相愛な男と女は二人きりで暮らすんだ。その場合は子供が同居してても問題ない。そういった同棲を数年経たカップルこそ事実婚状態と呼ぶに相応しい」
「あ、ああ...長々とサンキュー。クラウドって案外喋るんだな」
「わかったなら真っ赤な嘘を撤回してこい。今すぐだ」
「ええと、何だっけ。同棲から数年経ったら事実婚...子供もオーケー...」
「違う、それじゃない。空気を読め!」
クラウドったら、いつの間に他の世界の人ともこんなに仲良くなって...
過去を取り戻し若干積極性は増したものの結局昔馴染みの周囲ばかりウロチョロしている内弁慶から良い傾向を認め、先程までの会話も忘れティファは感慨に耽る。
確かに彼は不器用かもしれない。しかしこうも行間を読んで貰えない人々に囲まれていなければ、人間関係も此れ程までこじれなかったに違いなかった。
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最大の市場規模を誇るのはクラティでもクラエアでもない。セフィクラだ!!
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