Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
Long time no see ~Side Cloud~
精神世界からの帰還直後。
一瞬だけ手をかすめた水色のスカート。
次の瞬間、それは虚しくすり抜ける。
心臓に鳥肌が立った。
“気付かれたら恥ずかしい”
くだらない見栄で空けていた距離。
“弱くてごめん...”
俺の泣き言。
崖の底へ落ちる君。
それが最後の記憶だった。
そして膝を擦りむいただけの俺と違い君は...
Long time no see ~Side Cloud~
「はっ...!!」
慌てて周囲を見渡す。
電気がついたままの、飛空艇の一室。
俺は椅子に座り、前のめりにベッドに肘を付いていた。
(眠ってしまったのか...)
体中、嫌な汗でビッショリだった。
高鳴る心臓を落ち着かせようと深く息を吸って吐く。
そして目の前に横たわる胸元が、微かに上下するのを確認した。
(大丈夫だ)
ティファはここにいる...
今一度、その手を握り直した。
“俺、クラウドにはなりきれませんでした”
“ティファさん...いつか何処かで、本当のクラウド君に会えるといいですね”
地に膝をつき、泣き崩れるティファ。
記憶があるのはそこまでだ。
次に意識が戻った時、視界に映ったのはこちらを不安そうに覗き込む見慣れた顔達。
しばしの沈黙の後、恐る恐る口を開いたのはユフィだった。
「...クラウド?」
皆の顔を順繰りに見据え、俺ははっきりと伝える。
“ああ。俺は.........『クラウド』だ”
その後の仲間の態度は元通りだった。
遠慮なく頭を叩かれ、怒りを帯びた声を浴びさせられる。
“この、バカが...!心配かけやがって...”
笑いながら目に涙を浮かべる人間を見たのは、初めてだった。
人差し指を折り曲げ、頬を伝う雫をすくう。
ティファは眠りながら、時たまこうして涙を流した。
これまでの経緯を説明する口から、再三聞かされた名前。
“一日だって、側を離れなかったんだよ?”
俺は目を閉じ思い起こす。
途切れる事なく俺を呼び続ける声を。
それだけじゃない...
君はあんな遠い所に閉じ籠った俺に、会いに来てくれたんだ。
“ありがとう”
俺はそんな台詞を彼女に言うつもりはない。
そんなんじゃ...伝わらない。
最後に見た時よりも、ずっと痩せ細った身体。
止まる事のない涙の訳は、鈍感な俺でも流石にわかる。
次の日の夜中、ティファはとうとう目を開けてくれた。
俺は慌てて手を離す。
彼女はしばし呆然と俺を見つめていたが、やがて瞳を涙で一杯にして言った。
「...お帰りなさい」
意識の戻ったばかりの彼女にそれを言われるのは不自然な気がしたが、心はすんなりと受け入れた。
ティファは両腕に力を込め、ふらつきながら体を起こす。
慌てて制す俺を無視し、まじまじと見つめてきた。
「夢...じゃないよね。本当に、クラウドなんだよね?」
数日前にもされた質問だった。
俺も同じ台詞をそっくりそのまま返す。
彼女はまだ信じられないのか、更に聞かれた。
ほんの少し、からかう様な笑みを浮かべて。
ああ、覚えてるよ。
懐かしい質問だ。
「...何年ぶりかな? こうやって話したの...」
首の後ろを掻き苦笑いし、俺は今度こそ真実を伝えた。
紅い瞳を再び揺らめかせる涙。
「......本当に、久しぶりね」
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ティファサイドもあります。
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