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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

WE DO

仲間への結婚報告でどんちゃん騒ぎ。



WE DO


「ね〜え〜、まだぁ?待ちくたびれたんだけど!」

片付いた皿をシンクで洗い続けるティファに痺れを切らしたユフィがのしかかってくる。無遠慮な重みに顔をしかめつつも、「バレットなんか半分寝てんじゃん!」という指摘は一理あった。このメンバーでの飲み会はダラダラ長い。いつが終宴ともなくバタバタと人が倒れていく終わり方に、目的を達成すべきは終盤と前もって擦り合わせてあった。

「ほら、クラウドも!」背後からかかった催促にクラウドはティファをチラリと見やる。微かなアイコンタクトから意図を汲み取ったティファは濡れ手をタオルで拭うとカウンターを回りクラウドの隣にストンと腰を降ろした。

「ええと...皆に報告がある」

場違いな真面目ぶった声に酔っ払い達は一斉に視線を中央に集めた。ティファが伏せた目線の先には銀色のリング。肌身離さず身につけているアクセサリーは新しい居場所に馴染んできた頃で、お揃いの輝きを放つ指輪は真横に座る亭主の薬指にもはまっていた。相方と目を見合わせるとクラウドは軽く息を吸い込み切り出した。

「籍、入れたんだ」

主語のなかったそれに一同はしばしポカンとするが、酒の回った頭をなんとか回転させ始める。

「...んだよ、やっとかよ」
「ね〜、ホントだよねぇ」
「あれ、ユフィはんは知ってたんですか?ひゃ〜、一気に酔いが覚めましたわ。今年一番のビッグニュースじゃないですか?めでたいでんなぁ!」
「もぉ、ずっと黙ってるのキツかったよ〜!!」

プハっと大袈裟に息継ぎをしてみせるユフィ。ポツポツと沸いてきた祝福の言葉達にクラウドとティファもホッとした顔を見せる。

「事後報告かぁ?水臭ぇじゃねぇか」
「すまん。電話じゃなんだし直接伝えようかと...」

「バッキャロー!んなのどーでもいいに決まってんじゃねぇか!!」興奮を抑え切れず辻褄の合わない文句を危うい呂律で述べ、シドはクラウドの背中をバシッとはたく。ジワジワ込み上げてくる感動を「そうかそうか。や〜〜っとまとまったか」と噛み締める彼に賛同し目を覚ましたバレットもウンウン頷いた。バレットと、たまたま家に遊びに来ていたユフィにだけは事前に報告を済ませてあった。周囲の盛り上がりに遅れをとった獣が背で飛び跳ねるぬいぐるみに問う。

「“せき”?...せきって、何?」
「正式な夫婦になったってことですよ、ナナキはん」

「それって今までと何が違うの?」との問いかけに「んー...特に何も変わらないかも!」とティファは答える。「身も蓋もねぇなぁ」とバレットが突っ込むと一同はドッと笑った。

「よかったな」

騒ぎが落ち着いた頃を見計らい投げかけられた短い台詞。飾り気の無い祝言はそれ以上でも以下でもなく、ただただ的を射ていた。珍しく向けられたヴィンセントの清々しい笑顔を二人は有り難く受け止める。と、そこまではシナリオ通りに進み新米夫婦が肩の荷を下ろしたのも束の間、時刻は明朝へと向かう頃だというのに特大の燃料を投下された饗宴の勢いは収まる兆しがない。

「なぁんだ、何も変わらないのか」拍子抜けして眠そうに床にへたり込んだナナキの大欠伸を盾にしようとするが、ティファは「そろそろお開きにしない?」の一言をかけるタイミングがなかなか掴めない。せっかくお祝いをしてくれているのに水を差すのもと躊躇したのが甘かった。プロポーズの台詞は何だ等の質問攻めが式の話題に移った時である。

「こんなご時世だしね」
「俺はしてもいいと思うんだけど...」
「えーー!?やんないかもしんないの!?やろーよぉ、パーティ!!」
「ティファ、絶対に綺麗なのに...」
「見たいなぁ、ティファはんのウエディングドレス姿!」

なんとも煮え切らない方針に酒飲み達は口々に反意を示す。そして次にユフィから上がった要求にピシッと音を立てティファが凍りついた。

「じゃさ、今して見せてよ。結婚式でやるチュウ」

頬を引攣らせたまま微動だにしない隣席の伴侶を取り巻き始めた不穏な影に、クラウドは「しないなんて言ってない」と慌てて話の矛先を変えようとする。

「でもしないかもしれないんでしょ?いいじゃん、これくらいのサービス」
「サービスって...見世物じゃないわ」
「ええ〜?あんだけ皆に心配かけといてぇ?安心させてくれないわけ?」
「う...」

そこを突かれると弱い。先の家出騒動以降、確かに友人達から絶えず惜しみ無いフォローがあった事は否めない。そうこうするうちに「「「キース!キース!」」」と手拍子まで巻き起こり、「思い切りいけ、思い切り〜!」と悪ノリした野次まで飛び交い始めた。

「クラウド、恥ずかしがると余計恥ずかしくなるよ?」
「諦めろ。お前にこの場を収拾する力はない」

その通りだった。あの旅の最中からジェノバの英傑達はもっぱら飲み方が汚い。そしていじられ役になるのはクラウドと決まりきっていた。無害な一人と一匹にまで淡々と諭され、うなだれていたクラウドとティファはチラリと互いを窺う。

「...嫌か?」
「ほっ...本気でするの!?」
「だってそうでもしないとおさまらないだろ、コイツら」

心構えの整わない細い肩をクラウドが掴み自らの方へ向かせると、外野は「おおお!!」と一層湧き上がりティファは生きた心地がしない。こうなるのが嫌だったのに...どうして今日に限って皆寝ないのよ!ゆっくりと近づいてくる唇に居た堪れず両目をギュッと瞑った時、ユフィがキシシとクラウドに耳打ちした。

「クラウドぉ、まさかチュッてするだけで済まそうなんて思ってないよねぇ?誓いのキスの長さは愛情の深さって言うよ!」
「え...」

クラウドは寸前で思い留まりティファを見つめ、再び「...え?」と腑抜けた声を出す。その首を真っ青になって取っ掴み、「クラウド、真に受けないでよね。一瞬でいいの、一瞬で!」とティファが締め上げた。「わ、わかった...」息を止められたクラウドの首根っこをガシっと巨漢が捕まえた。

「いや、お前は信用ならねぇ。今まで一体どれだけティファに迷惑かけたと思ってんだ。この場で命賭けて誓え。男を見せろ!」

他のメンバーと一味違い大男の声はドスが利いている。命懸けの誓いって何だ?戸惑うクラウドに「俺様は熱いやつをかましたぜ、シエラによ」とシドが追い打ちをかけた。

「クラウドはん、一人前の男になるには避けて通れない道ですさかい。にしし」

ケット、お前はやってないだろ!声にならない抗議を喉に押しこめるクラウドはドタバタ騒ぎに紛れて吹っ切れだし、改めてティファに向き直る。まな板の鯉状態の彼女は完全に引いており、またしても決心はグラリと揺れ始めた。

そ、そんなに嫌か...どうする?調子付いて長いのなんかしたら明日一日...いや、一週間口聞いてくれなくなるかも。でも短く済ませてもやり直しなんてことに...

及び腰となったクラウドの動きは亀のように遅々としており、見物人達は暇を持て余し雑談混じりだ。

「どーせ子供達に隠れてしょっちゅうやってる癖に勿体ぶっちゃってねぇ」
「いや、それがよ。マリンによると最近は随分とおおっぴららしいぜ」
「ええ!?それは勿論クラウドはんからということですよね?」
「.........」

雑音にプチンと集中の糸を切らしたクラウドは「うるさい!気が削がれるだろ!!」と観衆に牙を剥く。それには長時間に渡り目を閉じたまま羞恥に耐えたティファも「もう!するならさっさとしてよ!!」と堪らず叫んだ。

「わお、ティファったらダイタ〜ン!!」
「おらおらクラウド、新婦様がお待ちかねだぞ!」

このメンバーでの飲み会はダラダラと長い。世界平和のお陰か底なしの体力を持て余している面々の今宵の集いは殊更に長かった。日頃はクリーンな営業に徹しているセブンスヘブンもこの日ばかりは近隣から騒音のクレームを受け家主達にとってはとんだ祝福となったが、お騒がせカップルのために戦友達が気を揉んだ時間の長さを考えれば致し方無いかもしれない。


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we do=(結婚式で)誓います


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