Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
Hug Me!
お仕事で失敗をしてしまったティファにクラウドは...
Hug Me!
「はぁ、落ち込んじゃう...」
仕事場で忙しなく手を動かし続けるティファは見るからに肩を落とす。やたらと行動量が増えるのは落ち着かない時の癖だ。食い違う日付と曜日を予約の際に伝えてきた客。違和感を覚えつつも時間に押され片方を信じたティファは運に恵まれなかったらしい。彼女が仕事において失態を犯す姿はそうそう見ない。以前一度だけあったのはグラスを倒し客の服だか鞄だかを汚した件だったか。
“私だって最初はたくさん割ったのよ”
ひょんな拍子に食器が小さな手を滑り抜けてしまうことのある子供達にかけられる慰め文句の真偽の程は不明である。接客態度が悪いとしょっちゅうクレームが入る自分と異なり、ティファは今や僅少と言える数まで減ったミス一つ一つを重く受け止める。だが、前回はこんなにも落ち込んではいなかった。それは失敗の性質が取り返しがつくか否かの差だろう。ティファを悔やませるのは双方の過失の有無などではなく、“客を失望させた” その一点である。
「ごめんね、愚痴ばっかり言って」
心を乱しつつも心優しい相棒は聞き手への気遣いも忘れない。
「聞いて貰ったら少し気が楽になったみたい」
そしてまだ下がる眉を無理矢理持ち上げ、早々に表情を取り繕おうとする。子供達には手厚いフォローを忘れないティファの相談相手である朴訥(ぼくとつ)な男は、始終無言で無力極まりない。
“お皿なんてまた買い足せば良いだけだよ。怪我がなくて本当に良かった”
そう言いぎゅっと抱き締めてやると、魔法の様にマリンの瞳に溜まった涙は乾き、デンゼルでさえしおらしく肩にもたれてきたりする。そう、ぎゅっと。...ぎゅっと?
“ああ、くたびれた...”
ソファに雪崩れ込んだティファは甘え声で少女を手招きして両手を広げる。
“ねーえ、マリン。ぎゅ〜〜ってして?”
トタトタ足音をさせ駆けつけたマリンは小さな腕で「ぎゅ〜〜〜!!」とティファの身体を目一杯締め付ける。「ティファ、元気出して?」そんなオマケもつけて。
“ふぅ、癒された。ありがと、マリン”
「ティファ」
仏頂面のまま背後に歩み寄ってきた男にティファは手を止め首を傾げる。クラウドはその身体に腕を巻き付け、強めの圧を加えた。
「ぎゅーー」
下を向くと目を丸めあんぐりと口を開けたティファと目が合った。しまった...外したか?いや、そもそもいい歳した男が “ぎゅーー”って...そんなキャラでもないし...
だが狼狽えだすクラウドの目の前で、焦げ茶色の瞳はグスッと歪む。そして咄嗟に表情を隠そうと顔を胸に押し付けてきた。
「もう一回やって...」
子供みたいに甘えてくる仕草にホッとして、今一度腕にグッと力を込め直した。
「ん、声もつけて...」
「...!?」
あわあわするクラウドは、咳払いをして喉を通した。これしきの事で効き目があるんだったら、お安いもんだ。クラウドに頭を擦り付けその言葉をじっと待つティファの目許には涙の跡が残りつつも、いつの間にか微笑みが戻っていた。
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