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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Short Short

Short Short寄せ集め(旧拍手3つ+77,777hits御礼4つ)です。
※特に表記のないものはAC後です。



Risk One’s Life


「俺ならもっと大切にするのに」

そういった口説き文句をかけられる事は少なくない。少なくとも彼らの目には自分は大切にされているようには映らないのだろうが、それは悲壮感へとは繋がらない。



鼻の先で呼吸にそよぐ、金糸を梳く。

「ねぇ、クラウド。私のために命をかけられる?」

薄っすらと開いた双眼は、夢と現実の狭間を行き来しながらも険しさを増していく。

「...当たり前のことを聞くな」

うん。だから私も命をかけるね。貴方のために。



目の前の自信に満ちた顔に心中問い掛ける。その質問が実際に音として発されたならば、確固たる瞳が瞬く間に揺らいでしまうであろう事を見透かしながら。
大切に?そんな生半可な心意気じゃ私には手を出さない方がいい。無欲な振りして、実は誰よりも貪欲だから。


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(2018.5.29 旧拍手)





本編、エアリスが忘らるる都へ発つ直前です。
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faraway


寝床に深く潜り込み、頭まで布団を被る。ふと腕に小さな手が当てられたのに気付き、ハッと目を開いた。

「さっきはごめんね...」

――だ〜めだよぅ!怖がっちゃだめー!!

今にも泣きだしそうな顔で寄り添ってくる金髪の少年。先程彼は身をていして自分を庇ってくれた。

可愛い...
ささくれ立った心がみるみる和らいでいく。幼いクラウドは俯き、隣のベッドで眠りに落ちているティファに伏し目がちな視線をやる。

「ティファは忘れちゃったのかな、あの時のこと...」
「ティファ?ティファが何か知ってるの?」

だがそれには返答をしないまま、部屋の入口に向かいタッと駆けて行った。透け始める小柄な体に慌てて呼び止める。

「ねぇ、あなたはどこにいるの?」
「とっても...」

ドアの前で一度振り返り、その姿は闇に掻き消えた。

――とっても、遠いところ

呆然としつつも確かな足取りでベッドを擦り抜ける。

「ティファ」

寝息を立てるティファに近寄り未だ涙の痕跡の残る頬をひと撫でする。先程までの迷いは、もうない。
クラウドのこと、お願い。本当は私も側に居てあげたい。でも私は私のやるべきことをやる。だからあなたも...

「ちゃんと思い出してあげて、ね」


あなたの、やるべきことを。


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faraway=遠く (2018.6.17 旧拍手)





盗み聞きのススメ


「ねぇ、ティファ。ティファはクラウドのどこが好き?」

カウンターに両肘を乗せ、マリンは足を交互にブラブラさせながら瞳を輝かせる。
問われたティファがまず思い浮かべたのは腕。比べものにならない太さは男性らしさを感じさせるし、逞しいそれに包み込まれる時間はかけがえない。普段は喜怒哀楽に乏しいクールな瞳がこちらを見つめほころぶ瞬間も捨てがたかった。はたまた外見的要素はさておき寡黙な裏に垣間見れる情の厚さ、時に自分だけに見せる甘えた姿、いざという時に発揮される頼り甲斐...

「う〜ん、沢山あり過ぎて決められないなぁ」
「でっ!!」

二人からは死角となる壁の裏から上がった素っ頓狂な声に、視線は一斉に一点に注がれた。階段下に近寄ったティファは腕組みし、壁におでこをぶつけうずくまるクラウドを「ふぅん」と冷ややかに見下ろす。赤く腫れたコブをさすり、調子に乗った男は上目づかいで窺う。

「...例えばどこが?」
「立ち聞きするような人は大嫌い、よ」

プイと背を向けたティファの耳は可愛らしいピンク色だ。言葉に窮する交渉下手な青年に、マリンは幼稚園児でも知っている人として当然な礼儀を耳打ちする。

「クラウド、相手に聞く時はまずは自分からだよ」

入れ知恵を真摯に受け止めしばし思いを巡らせた彼は、だがすぐに途方に暮れた。

「確かに、沢山あり過ぎて困るな...」
「...!!」

損して得を取った父親に陰ながら賛辞を送り、マリンはクラウドと入れ違いで階段を駆け上って行く。後目に映るのは言葉を詰まらせ真っ赤に染まる二人。互いのどこがお気に入りなのかのお披露目会は、多分しばらくお蔵入り。


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(2018.7.19 旧拍手)





本編、ハイウィンドのシャワールームにて。
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あなた(俺)で良かった


目が合ったと思った瞬間、心臓が脈拍を止めた。時が再び動き出すより前に可能な限り無駄のない動きでドアを引き、すぐ脇の壁にもたれかかる。喉の奥の辺りでバクバクと鼓動がうるさい。やがてキィ...と控えめに開いたドアからおずおずと顔が覗いた。

「クラウド?ごめん...」

再び目見えた身体は当然ながら上下とも衣服を身につけている。

「何も見てないから」
「うん...」

いくら言い張ったって、気まずそうに瞳を伏せる彼女も俺も知っている。スカートは穿いていた。だが後ろ向きとはいえ露わだった背中。咄嗟に交差された両腕からこぼれ隙間から覗く柔らかそうな...
真っ黒な脳裏にぼんやりと浮かび上がる白い像をクラウドは頭を振り懸命に追い払った。

「いいか。もう絶っっ...対に鍵かけ忘れるなよ!」
「はい...」

付き合ってもいないのに彼氏気取りかと突っ込みたくなるが、釘を刺さずにはいられない。でも...

(見られたのがクラウドで...)
(見たのが俺で...)

背を向け自室へと引き返すが再度頭に舞い降りるのはつるりと陶器の様に艶めかしい背中。折れそうに細いウエスト。それとは対照的な、チラリとうかがえた豊かな...今宵はシャワーではなく水浴びに決定だ。少し離れた場所で男女の心の声が重なり合った。


((良かったなんて、絶対に言えない...))


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(77,777hits御礼 その1)





Definitely


愛憎とはよく言ったもので、この相反する感情は常に表裏一体である。たった今私からの愛の告白を無下に打ち捨てた男の放った言葉を嘲笑する。こんな安っぽい台詞を吐く人間だったなんて...みるみる嫌気が差してきた。

「“絶対”?絶対なんてこの世に存在しっこないわ」

その言葉を臆面もなく掲げた愛がこれまでに一体いくつ呆気なく終わりを遂げただろう。

「俺には存在する」

無表情の中にも重圧を感じさせる眼光に不覚にも引けを取った。それを最後に立ち去って行く男の背は仄めかす。この世に存在するのは二種類の女。男に “絶対” を遂行させる女と、そうでない女。余りあるほど美しく生まれた私はたった今、何かが足りないが故に前者へとなり損ねたようだ。


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(77,777hits御礼 その2)





本編。ライフストリームイベント直後。ユフィ視点。
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愛はまだ知らない


「ちょっと、狭い...」
「へへ。いいじゃん、久しぶり!」

久々に病院の簡易ベッドではなく広々とした宿に泊まれると喜んだのも束の間、半ば強引にシングルベッドに潜り込んできた年下の彼女。細身といえども背丈はあるし十分に大人の体型である。

存分に手足を伸ばそうと意気込んでいたティファはガッチリ絡められた腕と固定された頭に早々に降参をする。それに、“久しぶり”...何気なく言うユフィとこうして寄り添って寝たのはエアリスが葬られた日の夜のただ一度だけだった。豪気な彼女は腕にしがみついたまま丸まり、心なしか一回り小さく見える。

“ウソでしょ...”

大地に亀裂が入り崩壊した地盤の裂け目へと為す術もなく落下し、淡いグリーンの海へと飲み込まれてしまった二つの身体。心臓をざわりと撫でつけてくるのはあの感覚。大切な人が今この瞬間世界から失われたのだという喪失感。母さんと...エアリスと、一緒...

――クラウドなんてほっといて、逃げて!!

それが起こる寸前に無我夢中で叫んだ台詞。残酷かとも思うが、今でも後悔はしてないし責める者もいなかった。結果オーライではあったが、そうすべき状況だった筈だ。だが何度繰り返してもティファはあの男を見捨てないだろう。

自分より大切なものって、何なんだろう。淡い恋心、憧れ...その程度のものは知っていた。だけど無条件で自らの命さえ捧げられるほどの衝動とは何だろう。

怖い...それが正直な感想だった。特に自分は利己的な部分が強い人間だと思う。そんな自分の根源をも揺るがす何か。それを隣で穏やかな寝息を立てる友人は知っている。狂気を孕んだ刃に儚く倒れた友人も...

それでいて彼女達は目を見張るほど美しい。沸き起こる憧れに、見ている自分も紛れも無い女性である事を自覚する。少し年配である女性達が見せたその感情を、私はまだ知らない。


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(77,777hits御礼 その3)





LEFTOVERS


「ごめん、クラウド!俺ほかに用事出来た!!」

起き抜けの寝ぼけまなこは、階下に降り立った途端浴びさせられた謝罪と慌ただしい足音にポカンとする。ドタバタと出掛けて行ったデンゼルは既に影も形もなく、店舗兼ダイニングであるそこにぽつりと取り残された男は所在無さ気に首の裏をポリポリやる。

「あれ、フラれちゃった?」

洗濯籠を抱え首だけをよこしたティファの言い回しがなまじ現実味を帯びてくる。どうやらその通りのようだ。“ごめん”って...遊んでやってると思われてたのは自分の方だったとは。思いもよらない視点にクラウドはクックと肩を震わせる。

ガレージに置かれた物置には腕白坊主が家にやって来て以来、半ば躍起になって収集した遊具が所狭しと敷き詰められている。確かに途中からは彼だけのために献身していた訳ではない事は認めよう。

早熟なマリンに言わせると俺達の遊びは幼稚で時に野蛮ですらあるらしく、彼女が早々に輪を抜けていった日は記憶に新しい。そんなデンゼルも学校に通い出すと見る間に新たなコミュニティに所属し始めた。

「早く食べちゃって。コーヒー淹れてあげるから」

多忙な彼女の周囲を寝覚めの悪い男が質悪くつきまとう。

「ティファは...」

肩に顎が気怠く乗っかり、緩く腕が巻き付けられた。

「どこにも行かないでくれ」
「はいはい」

傷心の男に配慮しちゃっちゃとテーブルを片付ける算段は後回しにする。手の掛からなくなり始めた下の子二人と異なり、大きな長男にはいつまで経っても独り立ちの兆しはない。


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残り者同士、楽しくやりましょう。(77,777hits御礼 その4)



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