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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

One tiny trump 2


本編長編パラレルOne tiny trump 1、の続きです。
まずはそちらをお読み下さい。

今回、少し流血を伴うグロ表現が入ります。
苦手な方はお気をつけ下さい。



One tiny trump 2 ~FF7 Another Story~


翌朝早く、ティファとレッドは別の目的地へ経った。

「気を付けて」

そう神妙な面持ちで言う彼女の台詞は、社交辞令からは程遠い。

「私もすぐに追いつくから」

ここからコスモキャニオンまで往復となると、少なくとも丸二日はかかる。
だがこれからよじ登るガイアの絶壁の上からロープを垂らしておけば、追いつくのも可能だろう。
そして俺もそれを願った。
戦力としてではない。
大切な戦いを前に、彼女とこれが最後は嫌だった。





先程から俺を突き刺すのは、氷点下の雪の槍。

俺達は今雪原を歩いている。
歩いてると言えば聞こえはいいが、もう這いつくばってるのと同じだった。

絶壁を越えるどころか、そこまで辿り着くのが至難の技だった。
顔も上げられず、なんとか足を前に出す。
背後に置いた赤い目印はその瞬間風に吹き飛ばされ、もう元いた村へ引き返すことも出来ない。
ユフィは先程からヴィンセントにおぶわれている。
動くことを止めた彼女の体は冷えていく一方だ。
心が絶望で支配され始める。
越えたのか?奴は一人で、ここを...
その時だった。

「おい、クラウド!あれを見ろ!!」

メンバーで一番声のでかい大男が叫ぶ。
バレットが刺す指の先に、希望の光を見出した。





「とにかく目印を背に、北へ北へと進むんだ。
そしたら二時間で絶壁に着く。
長年繰り返してる私が言うんだ、間違いないよ」

そのホルゾフと名乗る男は、俺達を自らの山小屋に温かく迎えてくれた。
聞けばもう20年間もここで絶壁に挑み続けているらしい。
それを登る際の助言もくれる。
もっとも彼自身はおろか、それに成功した者は未だいないようだが。

「ユフィは?」

無言で部屋へ入って来たその男に問う。

「よく喋ってるし、物も口に出来た。
しかしまだ動くのは無理だな。
他の仲間の状態も見る限り、出立は早くても明日の朝だ」

「平気なのはモルモットの私とお前くらいだ」と、そんな冗談も忘れずに。
相変わらず冷静沈着な判断と余裕に、この男の存在を改めて有り難く思う。
しかし次にヴィンセントが発した言葉は、的確であるだけに俺には辛かった。

「このまま、突き進んでいいものか」

ハッと息を飲む。

「正直、勝てる気がしない」

「私は、ここで二人からの連絡を待ってからでも遅くはないと思っている」

わかってる。
だって俺達は救えなかった。
手を伸ばした先で慈悲なく貫かれた彼女の体。
笑うあいつ。
その場で俺達を始末出来たはずなのに、奴は去った。
あいつはエアリスだけを脅威に感じてた。

しかしここでティファ達からの報告を待って何になる?
彼女の言うことも一理あるから行かせはしたが、俺はそれに期待はしていなかった。

エアリスは確かに "何か" をしようとしていた。
おそらくそれは、今更取り返しのつくことではないのだろう。
だってエアリスは俺達に黙ってそれをした。
何故か?
それが彼女、古代種にしか出来ない事だったからだ。
そして失敗した。
だから今の俺達にはセフィロスから黒マテリアを奪う以外、出来ることはない。

「明日の朝、予定通りに出発しよう」

ヴィンセントはもはや異論は唱えなかった。

チラリと携帯電話に目をやる。
朗報は、まだない。





掴んだ先の岩の上で手が凍り、慌てて引き離す。
その繰り返しで手の皮はもうボロボロだ。
ホルゾフの言う通りに雪原を越え、俺達は今絶壁の中程にいる。
確かに厳しい道のりだが、雪原と違い吹雪いてはいないため、仲間と会話をし易い。
互いに励まし合いながら先へと進んだ。

「おう、クラウド。
少しは俺様達の事も考えやがれ!休憩だ、休憩」

その男は口に煙草をくわえそれに火を付けると岩場に腰掛けた。

ここは骨休めが出来る洞窟があるのも助かる。
七色に光る水晶が張り巡らされた不思議な空間。
この色の原因はライフストリームか?

「ティファとレッド、連絡ないね。
大丈夫かな?」

ユフィが彼らにメールを打ちながら呟(つぶや)く。
エアリスの一件で、ナーバスになってるに違いない。
俺も少し気になった。
しかし俺はそれを、彼らが目的の物を得られず落胆しているとのメッセージと捉える。

「あたし、あんなに色々話した気でいたのに、肝心な事は何も知らなかったんだな」

いつになく肩を落とすユフィ。
言ってくれるなよ、それは皆一緒だ。

「もし誰かに何かを話してるとしたら、ティファが一番可能性が高いと思う」

それは俺も同意する。
でもティファだって何か知ってたら、流石に話してくれるだろう?

(私に行かせて?)

彼女の提案には、有無を言わさぬ勢いがあった。
しかしおそらくあれは友人の死を無駄にしないため...

「探したぞ」

瞬間背中が凍りつく。

何故ここでこの声がするんだ...





身構える仲間達。
まさかこんなに早く決戦が訪れるとは夢にも思ってなかった俺達は、戸惑いを隠せない。

('探した'?)

俺達なんかには目もくれず、メテオ発動の場所に向かったんじゃなかったのか?
しかしとやかく言ってもしょうがない。
剣を構えそいつの名を叫んだ。

「セフィロス!ここまでだ!!!
お前の思う通りにはさせない!」

しかし意気込む俺に対し、奴は刀を抜く事もせず近づいてくる。
後ずさる俺。
しかし殺気は.........ない?
奴は俺の目の前でピタリと足を止め、片手を前に伸ばす。

「渡して貰おう」

(?)

「...何の、ことだ?」

真意が読めず、戸惑う。
セフィロスにもそれが伝わったのだろう。
奴はぐるりと全員を一人一人見渡すと、何かを悟った様に笑い出した。

「クックック...成る程、そういう事か。
では聞く。あの女の死体はどこだ?」

「何を探しているのかわからないが、エアリスは湖の底にいる。
手遅れだ!」

「ならばお前達に用はない。失礼する」

奴は背を向け歩き出す。
歯をギリっと鳴らした。

「そうはさせない!
だいたいお前が言っている事は、意味不明なんだよ!!」

奴はピクリとその体を止める。

「勘違いをするなよ、小僧。
お前の命など、ここでなんなく奪える。
俺はただ遊んでいるだけだ。
目的の達成に、多少の刺激は心地よい」


「今からその証明をしてやる」


そう言うと、躊躇うことなく俺の右腕に正宗を振り下ろした。

『クラウド!!!』

仲間達の緊迫した叫び声。
一瞬何が起きたかわからなかった。
しかし次の瞬間耐えられず、悲鳴をあげる。

「ぐわああぁぁぁぁああああああ!!!!!」

「あ...あ...」

俺は左手で右腕を掴み、そのなくなった先を愕然と見つめていた。
セフィロスはその足元に転がった手首を拾い上げると、血の滴るそれをペロリと舐めた。

狂って...る...

「そういえば」

「メンバーが足りないようだな」

な...に...?

「念には念を、だ」

そして奴はかき消えた。


メンバーが...足りない?
まさか...

ティファ、逃げ...るん...だ...


しかし出血多量から起こる貧血と激痛に耐えかね、そこで意識を失った。





One tiny trump 3、へ続きます。


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