Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
Crimson Labyrinth 1
旅の途中でクラウド→ティファ。焼きもちの相手はあのイケメンです。
Crimson Labyrinth=緋色の迷宮
Crimson Labyrinth=緋色の迷宮
Crimson Labyrinth 1
「へぇ〜〜」
驚嘆の声を上げたのは背後にいるユフィだったかエアリスだったか。相槌を打つ者はいないが、誰もが同じ感想を胸にしていただろう。
財宝が随所に眠る洞窟近くで栄えるその街は世界の冒険者達が集う所謂トレジャースポットで、今まで訪れた集落とは毛色の異なる活気を呈している。目に見えて腕に自信のありそうな猛者が其処かしこにひしめいており、目抜き通りには軒並み戦闘用品店ばかりが連なる。かく言うクラウド達も装備品を整えるためここへと立ち寄った。
店先にチラつく逸品達に興味をそそられつつも、まずは宿の確保を済ませることにする。幸い広場にはそれと見られる客引が大勢いて宿探しに苦労はしなさそうだった。
「お願いします!どうか......どうか!!」
尋常でない涙声に何事かと顔を持ち上げると、そこには幼い兄弟を連れた若い母親。懸命に何かを訴えビラを配っているが、大抵の旅人は一瞥しては知らん顔を決めこんでいる。こちらとしても厄介事はごめんだった。素通りしようと足を早めると...
「どうされたんですか?」
聞き慣れた声が後方で上がる。恐る恐る振り返るとそこにはお人好しの二人...と興味本位でついていったじゃじゃ馬娘。三人は母子から事情を伺い事態を把握するとこちらに向かいツカツカと真っ直ぐに歩いて来る。彼らの張り詰めた表情からは嫌な予感しかしない。
「クラウド、聞いて。あの人の旦那さんが宝探しに行ったきり行方不明なんだって」
切実な顔のティファが何を言わんとしているかを悟り、慌てて反論する。
「い、いや...こっちだってそれどころじゃないだろ。人助けしてる余裕なんか...「ええっ?クラウド、冷たい!!」「ほぉんと、甲斐性なしなんだから...」
「ねぇ?」「これだから器の小さい男は...」と二人は結託して追い詰めてくる。更にはチラシを手したユフィのぼやきにギクッとした。
「ふ〜ん、結構弾むじゃん報酬。どーせうちらお金足りなさそーだし、お小遣い稼ぎにいいんじゃん?」
その通りだった。チラホラと視界に入った武器の値札に書かれた数字は想定とゼロ一個分違かったりする。それにしてもこんな一か八かの賭けに出ずとも野原でモンスターでも狩ればもっと確実に...
ツンと裾を引っ張られ下を向くと、そこにはいつの間にやらあの幼子達がすがりウルウルした目で見上げていて、思わず言葉を詰まらせた。
「明日はそこの洞窟で探検!...に、決まりだね?」
リーダー以上に主導力に長けた年長の女性に満面の笑みで最終意思決定を下され、クラウドは為すすべもなく肩を落とした。
「シド、ティファ。ちょっとロビーに来てくれないか?」
「おうよ」
「はい」
書き殴ったメモを手に、宿屋の食堂でくつろぐ二人を呼び出した。訝しむ事なくついて来る両人はこれから明日以降の作戦会議が始まる事を予期しているに違いない。
捜索は難航した。探検が尽くされた箇所は地図もあり、一行は難なく奥へと進む。だが問題は地図がなくなってからだった。『迷宮』との呼び名の通り、ダンジョンは蟻の巣状に分岐しており、魔物も奥に行くほど手強くなる。かつ、狭い道幅は大人数での戦闘にも向いていない。結局、人を助けるどころか来た道を戻るだけで精一杯の骨折り損で初日を終える。
高額な報酬...にも関わらずトレジャーハンター達が見向きもしなかったのには相応の理由があったようだ。だが戦力に関してはそこらの奴らには負けない自信があったし、何より人数という強みもある。
「おーおー、ようやるわ...」
躍起になってマテリアを三チームに分けた殴り書きに視線を落としシドが呆れ声を出す。ティファも苦笑した。
「エアリスの姉ちゃんはもうチビっと補強してやらなきゃなんねぇだろ」
「うちのチーム優遇され過ぎじゃない?クラウド、何でこんな役に立たないマテリアばっかり付けてるの?」
急遽任命したサブリーダー達は思い思いに意見を発信し、グループ間の偏りを補正していく。そして全てが終わると頼りになる眼差しで意気込みを表明してくれた。
「いっちょやってやるかぁ!」
「任せて!」
抜けるような青空。それとはコントラストをなし陰鬱に横たう巌穴に重い溜息を吐く。文句なしの陽気にも関わらず、本日も終日薄暗く湿った洞穴に籠りきりだ。そこは早朝にも関わらず既に人で賑わっている。彼らに混ざり、俺達も出発の準備を整えた。
「ティファ、よろしくね!」
「うん、こちらこそよろしく」
燃える尻尾をハタハタ振る獣の喉元をくすぐると、ティファは木にもたれマントに口元を埋める物静かな男にも目配せし親睦の意を示す。
「よろしく」
そいつは片眉を僅かに持ち上げるだけだ。得体の知れない男を女性リーダーのチームに配属させるかは迷ったが、戦闘能力は間違いない。普段あまり組む事のないメンバーとの交流も連携の強化には有効だ。問題なく平穏そうな彼らのやりとりを見届け、自分も自らのチームに加わろうと振り返った時だった。
「ティファ、これが怖いか?」
押し黙っていたヴィンセントが突如ティファに銃をかざす。一瞬何を言われているのか理解出来なかったティファは、しばらくして胸の内を見透かされたかのように決まり悪く言い開きをした。
「ごめんなさい、後ろで構えられるとちょっと...」
ヴィンセントは離れた樹木に向き直り、カチャリとセーフティを外したかと思うと構えもそこそこにパァン!と銃声を轟かせる。その場に居合わせた全員が一斉に顔を上げた。目を凝らした先の土に、季節の終いに一輪だけ残っていた白い花がハラリと落ちる。
「...わぁ、すごい!!」
「ヴィンセント、やるぅ!」
瞬く間の出来事に呆気に取られた一人と一匹は、一拍遅れワッと盛り上がる。
「お前の動きなどスローモーションにしか見えない。好きなだけ暴れろ」
再び腰に銃を収めたヴィンセントは、自らの負った重役に多少気負っていた年下の娘の緊張をほぐすべく、冗談交じりで物言いも柔らかだ。
「...はい!」
底知れぬ実力に加え思いがけない優しさまで感じ取ることが出来、肩の力の抜けたティファも笑顔を弾けさせる。
「クラウド〜?ウチらもさっさと行こうよ!」
「えっ?あ、ああ...」
ユフィに呼ばれ、慌てて方向転換をした。
なんだ?今一瞬モヤっとしたのは...
行く先に見据えた岩窟の奥深くは今いま目に焼きついた光景の残像でぼんやりと紅い。心なしかその闇は昨日より深く感じられた。
Crimson Labyrinth 2、に続きます。
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