Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
One tiny trump 1
こちらは...
・エアリス死亡時にホーリー発動失敗
・クラウドの自我崩壊なし
を前提とする、本編パラレルです。
完全に別展開な話になりますので、苦手な方はご注意下さい。
それと、軽めですが18禁描写・グロ表現が混じります。
二人にとっては残酷な描写が続きますが、それはあくまで伝えたい物を優先させた結果です。
根底は、二人の信頼と絆をテーマとするクラティのラブストーリーです。
Disk 2から始まります。
※ trump=切り札
足を抱えて座り込み、膝に顔を埋め目を瞑る。
目の前の湖を見つめるより、その方がよっぽど彼女を思い出せるから。
手のひらの中で小さく、しかし確かな存在感を主張する、あなたからの最後のプレゼント。
その存在を、仲間に明かす日はないだろう。
あなたの死、決して無駄にはさせないわ。
この命に代えたって...
One tiny trump 1 ~FF7 Another Story~
「エアリスがどうやってメテオを防ごうとしたのかは、わからない。
今となっては、俺達にはそれを知る方法もない。
でも!まだ、チャンスはある。
セフィロスがメテオを使う前に黒マテリアを取り返すんだ。
...行こう」
私達に、悲しみに打ちひしがれている暇はなかった。
仲間の死を惜しんでその歩みを止めてしまったら...今共にいる仲間はおろか、全世界の人間が星と共に...死ぬ。
瀕死の傷を負った星と二人きりで残されて、一体彼は何を得られると勘違いしているのだろう。
(...母さん...もうすぐだよ、もうすぐ...一つになれる)
私にはわかる。
彼は母親を奪われ癇癪(かんしゃく)を起こす、ただの小さな子供。
甘え足りずに。
かつてはその精神も含めて世界最強と呼ばれた男だった。
人の心は、こんなにも脆い。
「後でな」
有無も言わさぬ言い方だった。
彼とこういう関係になったのは、7番街の駅で再会してからすぐのこと。
他の皆が寝静まった夜中、お店のカウンターで手酌をしていた彼は真顔で言う。
「なぁ、ティファ。
...風呂上がりに男の前をうろちょろしちゃだめだ」
「なぁに?改まって。
平気よ~
ここには私に興味を持つ人なんかいないじゃない。
それに私、本当に強くなったんだから!」
拳を握り締め、二の腕に力こぶを作ってみせる。
はぁーっと長い溜息をついた後、彼はゆっくり立ち上がる。
カウンターの中で戸棚の整理をしていた私は、そちらを見た。
そろそろ寝るのかしら?
しかし彼は寝床へと続く階段ではなく、私の方へとその進路を向ける。
「ティファは何にもわかってない」
手首をグッと掴まれた。
...痛い。
それを振りほどこうと手首を捻るが、彼の力はそれに対してビクともしなかった。
「クラウド?」
その時はまだ、これは何かの戯れなのだろう、そう思っていた。
しかし次の瞬間彼は空いた手で私の腰をかき抱き、私の体を彼のそれに密着させる。
「くっ...クラウド!?」
反射的に彼と私の間に手を差し込もうとするが、彼はそれを許さない。
耳元で囁かれる。
「無駄だよ。もう、するって決めた」
何を言われたのか理解ができない。
「男がどんな生き物か、思い知らせてやる」
快感もないけど、嫌悪感もないその行為。
ただひたすら彼の真意が読めず、いたたまれない朝を迎えた。
おそらく、私はもうこの時には彼を好きだったに違いない。
それからというものの、甘い言葉を囁くことなく気まぐれに私を抱く彼。
こんなこと間違ってる...
そう思いながらも、私は幸せだった。
あの日までは。
「公園にいた人?クラウドと一緒に...」
二人の間に突如現れた素敵な女性。
出会えた喜びより先に、焦燥感を感じてしまう自分に憤(いきどお)る。
きっと彼女は彼の心にすんなりと溶けていく。
私を置いて。
予感は的中した。
日に日に深まる疑心。
きっと彼は彼女とも深い関係に違いない。
だって私とも、あんなにあっさり一線を越えた。
「やだ...」
なんてことないよう、今日も身体に手を這わせてくる彼。
「なんで...」
他の人を触った手でなんか、触れられたくない...
「エアリスが、いるじゃない」
「言ってる意味がわからない」
怒ったふりして、誤魔化すの?
「他の人で満たされてるのに、私を抱くの?
欲張りなのね、解放してよ...」
「ひっぱたくぞ」
私を鋭く睨みつける。
「俺はティファしか、抱きたくない」
涙が出た。
命をかけた旅の途中。
恋に現を抜かしている暇はないのはわかっていたが、気持ちは止まらない。
初めて本気で好きになった人。
その人が私だけを見ててくれたなんて...
周りも二人の関係に薄々感付いてはいたのだろうが、今回の事でそれは完全に筒抜けとなった。
仲間と相部屋だろうとなんだろうと、彼は私の部屋で夜を過ごす。
これから起こる事への不安と、仲間の死による心の痛み。
それらをまやかすための麻薬を、私達は毎夜本能のまま貪った。
「パーティーを、二手に分けない?」
「...ん?」
心地よい暖炉の熱を生身の背中に受け、彼は半分意識を手放しかけていたようだ。
「やっぱり知るべきだと思うの。
エアリスが何をしようとしてたのか」
「最悪の事態のために」と、ポツリと付け加える。
「さっきの話、か?」
「...うん。レッドが言ってたよね?
コスモキャニオンに古代書が山程あるって。もう誰も読まないような。
何か手掛かりが見つからないかしら」
「そう...だな」
「私に行かせて?」
「ティファが?」
「ほら、他に本を読み漁るのが得意な人もいなそうだし」
少し茶化すように言う。
「そりゃそうだけど」と、彼もおかしそうにした。
「離ればなれ、か」
珍しく素直な反応に、私も少し調子に乗る。
「未来で離ればなれと、どっちがいい?」
「それもそうだな」
クラウド、私本当は知ってるの。
エアリスがしようとしてたこと。
だけどそれをあなたには伝えないわ。
言ったって無駄だから。
だって、光っていなかった。
彼女の大切なマテリアは。
ふと髪の中に手櫛(てぐし)が通され、そこで思考を止める。
私も彼の髪に手を差し込んだ。
私達は、お互いの髪を弄ぶのが好きだ。
人間危機迫ると何が大切か、はっきり見える。
好きよ、クラウド。
世界で一番大切な人。
本当は、行くのが怖い。
あなたは救えるけど、あなたとの時間は救えないかもしれないの。
私の考えている方法じゃ。
...失いたくない。
この温もり...
One tiny trump 2、へ続きます。
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