Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
First Love
コスモキャニオンにて。
『旅の途中』のナナキを待ってる間のクラティの会話です。
『旅の途中』のナナキを待ってる間のクラティの会話です。
First Love
雨の日も風の日も、何百年何千年と絶やされることのなかった炎。私達の故郷を焼き払ったものとは似ても似つかない、橙色の揺らめき。今まさに執り行われているだろう今生の別れの儀を思い、灯火に照らされる二人の口数は少ない。瞳に明かりを灯したまま、クラウドがポツリと口を開く。
「あの時、エアリスと何話してたんだ?」
宿屋に併設されたパブでの会話を指しているのだろう。「んーー......恋バナ!」とカラリと返された内容は谷の長者の厳粛な説教の後には似合わしくない浮ついたもので、彼は「あ、そう」と肩透かしを食らった相槌を打つ。
「延々と?」
「そ、延々と」
クラウドが呆れるのも当然だ。ナナキのお供でギ族の洞窟を探索するメンバーを募りに飲み屋に現れた彼は、テーブルに置かれたカクテルと赤らんだ顔を見比べ口をつぐむ。
“あ、ごめん。今日はもうお終いかなって...飲み始めちゃった”
エアリスを気遣うよう見やった彼は、場の話題を深刻なものと憶測したのだろう。夜中になり蜘蛛の巣とカビにまみれて帰還したナナキ達。真っ赤に腫れ上がった瞳に、泥酔した私達はもらい泣きして彼の首に抱きついたけど、お酒の匂いにひたすら迷惑な顔をされたっけ。
「ザックスとエアリスは、会えたかな」
最近になりようやく結びついた点と点。私は彼が彼女の過去の想い人だと知らなくて、クラウドも彼の存在を心の奥底にしまい込んでいて。彼の最後を思い出したクラウドの口から語られたばかりの新事実だった。
ーー初恋は叶わないもの
そうだとしても、これ以上に悲しい恋の結末などあるのだろうか。音信が途絶えた何年もの間を苦しみ抜き、遂には姿を現すことなく生き絶えたザックスに対する感情は、恋慕のみではなかったはずだ。私も知っている、恋に落ちた相手だというのに沸き起こる憤りや思い通りにはならないもどかしさ。それでも私だったら、死してもなお会いたいと願う。一度は好きになった人。
「なんだか雲の上の方が騒がしそうだ」
死に別れた友人達を形容するには相応しくないような、一方で的確でもある表現に笑みが零れる。悲恋の一言では済ませられない、二人を特徴付ける根っからの陽気さ。俗世にもメテオにも囚われない下界を上回る賑やかな掛け合いが目に浮かび、「少なくともザックスは猛アピール中ね」と話に乗っかる。
「ティファは?」
言葉足らずの問いかけの思惑が読めず、首を傾げる。
「ティファは誰について話したんだ?」
ストレートな質問に狼狽えた。「さ、さぁ...何話したっけな」と言葉を濁すと、字面通り捉えた彼は「俺じゃないんだ...」と見るからにしょぼくれる。
「私は...エアリスが話してるのをずっと聞いてたの」
苦し紛れの弁明に、「延々と?」と疑わしそうな眼差しが向けられた。
「そ、延々と」
「...五時間以上も?」
よく覚えてるなぁ...
小姑みたいなねちっこさを垣間見せる彼は、理解がある様に見せかけて、自分が太古の亡霊と死闘を繰り広げている裏で女衆が飲み交わしていたことをやはり根に持っているようだ。
「本当の本当に、俺は一言も出なかったのか?」
「クラウド、しつこい」
ピシャリと言い放たれ渋々口を結ぶが、ふてぶてしい顔は諦めが悪そうだ。
昨夜、生まれて初めて抱き締められた男の人。長年疎遠だった彼に対する想いはある日星空の下淡い恋心に変わり、遠く引き裂かれた後、今再び私の隣にいる。不愛嬌で謎めいた存在は、なんのことはない等身大そのもので、どうやら人並みに嫉妬深くもあるようだ。好きとも言われてなくて、言えなくて。だけどやっぱり言葉は心を超えないと思う。私達らしい始まり方。
私の初恋は、叶うのかな。
本当はすぐそこに置かれた手に触れたいけど、そんな勇気さえなくて、あれほど身を寄せ合ったのは夢だったかと見紛う。この旅の終わりと同時に始まる私達の物語は前途多難で先が見えないけども、精一杯、私なりのやり方で幸せにしてあげよう。並外れた悲しみを乗り越えたあなたに恥じないように...
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以前拍手に『Second Love』というお話を書きましたが...ティファの方は正真正銘の初恋ですね。
ブーゲン様のラストイベント、クラウドったらティファにくっつき過ぎ!
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