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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

世界で一つの花束を

18' ティファ誕です。
ティファのため、クラウドがサプライズ頑張ります。



世界で一つの花束を


あれは何日前のことだったろう。期待に胸を膨らませた幼い頬が風船みたく膨らみ、唇がこれでもかととんがった。

「ううん、遠慮してるとかじゃなくて。お祝いは次の休みにちゃんとして貰うわ」

通常の営業日に店を閉めることに気が引けたわけではないとわかり、小さな風船から空気が抜けていく。

“お誕生日当日は普段通り過ごしたい”

「なんていうか、何でもない一日が一番幸せを感じられるの」

自らのした発言に照れ臭そうにするティファは、誤魔化すように自分を見上げる少年の目線まで下がり顔を覗き込む。

「ご馳走はデンゼルに作ってもらおうかな?」
「ええっ!?」

「どうしよう、クラウド!」とオロオロすがってくるもんだから、「相談する相手を間違えてるぞ」と隣の少女に助けを求める。ティファはその慌てざまに噴き出し、マリンの肩に手を添えた。

「では、隊長にはマリンを任命するとします」
「ティファの好きなものばかりにしようね!」

お祝いといったって、マリンの提案したいつもより少しばかり豪華な献立を、張り切る足手まとい達の面倒をみながら結局彼女がほとんど作り上げ、団欒を囲むだけのささやかなもの。

フェンリルのエンジンを切り、しょっちゅう顔を合わせる癖に思いの外手こずった一片を手に取った。


――やっほー!っつか先週会ったばっかだけど。「年増女!」とかこき下ろしてたティファもとうとうオ・バ・サ・ンの仲間入りか~。しめしめ、やっぱユフィちゃん一強!若さは正義!!そうそう、これ渡すのにクラウドとスレ違いまくっちゃってさ。ティファの前では涼しい顔すると思うとウケるわ。ウータイ三往復はしてたから、労ったげて!しっかし愛されてんね〜安心、安心。んじゃ、またフラッと遊び行くよん♪


祝いの言葉が見当たらないな。だが丸文字の羅列にキャラじゃない一言を見つけ勘弁してやる。文字じゃなきゃ伝えられないことって、確かにある。それにしても年増女って何のことだ?クラッチを握り直し、再び風を切りだした。


――拝啓 ティファ=ストライフ様   あ、まだ違いましたっけ?でも今の苗字も今回の誕生日までなんじゃないですか?彼、なんだか思い詰めた顔してましたから。それはそうと、クラウドさんて案外ロマンチストなんですね。負けずに私もここは一つスマートに決めようと思います。また一つ歳を重ねられて、一層お美しく、相変わらず皆々の太陽の様に輝く存在でいて下さい。うっかり愛情を込めて大剣にへし折られるのは御免ですので、清らかな友情を込めて...お幸せに。じゃなかった、おめでとうございます。敬具


...これって俺が発破かけられてるんだよな?上等だ。口頭の数倍凄みを感じさせる、毛筆で達筆に綴られた挑戦状を指で弾く。


――おい、こないだ店行ったら二回連続で臨時休業だったぞ。お前あの札貰ってからサボり過ぎなんじゃねーのか!?エロチョコボのくだらねーおねだりばっか聞いてねぇで仕事っしろ!仕事!!少なくとも俺様が突撃する日は開けておけ!!


クレームかよ...女性らしい几帳面な文字が脇に添えられてなければ書き直させたところだ。差出人の口の悪さを考慮すれば、“わざわざ出向いたのに不在で寂しかった” と意訳出来ないこともない。ナナキのものは文章自体は月並みだけど、問題はその書き方だ。想像だにしない作法を伝えた際のティファの反応にほくそ笑む。


――手紙は苦手だ。用件は会った時に直接伝える。


直接会おうがおめでとうなんて言いやしないくせに...いや、もしかして女には言ってるのか?抜け目ないニヒルな男の次の来訪には目を光らせないとならない。

無事最後の一通を手にエッジに辿り着いた俺は、春に咲く花で束ねられたブーケから顔を覗かせるよう、最も親愛溢れる文面である兄貴分からのメッセージカードを差し込む。花束に忍ばせた紙切れの枚数は、実のところ戦友の数よりずっと多い。


――クラウドの奴、相棒がしたためた重苦しいメッセージは回収しなかったぞ。わりと余裕ないんだな。ところで俺の誕生日ももうすぐだ。イリーナが水面下でバレバレのパーティーを企画してる。アンタの店でな。シャンパンの一本や二本、サービスしてくれても構わないんだぞっと。


マリンとデンゼルはもちろん、プリシラやエルミナ、ミディールで世話になった二人...思いつく限りの懐かしい面々からのコメントを散りばめてある。世界が平穏を取り戻した喜ばしい事実に反し、慌ただしい日常へと戻った彼女と各地に散らばる旧友達との接点はめっきり減った。多くを求めない彼女が何より喜んでくれるだろう、気の置けない友人からの祝福の言葉達。そして...

直接渡せるのをいいことに、ポケットに忍ばせてある一通は特別扱いだ。一番の功労者なんだから、それくらいはいいだろう?扉を開けた向こうには、何でもない誕生日を望む、昨日より少しだけ大人になった彼女。今日を普段通りで終わらせるつもりはないけど苦情は受け付けないぞ。俺だって当日くらい何かしてあげたいんだ。

白い便箋には口下手なりに思いの丈を記してあるが、封を切られる前にこれだけは伝えなきゃ。
豪華なプレゼントも、粋な台詞もない。今まで与えてきた感情は不安ばかりで、これからも与えられるのは質素で平凡な暮らしだけだ。ティファ、そんな俺のすぐ側に...


――俺の隣に生まれてきてくれて、ありがとう


******************


ティファ宛でリレーしてみました。クラウドお疲れ様! ティファ、お誕生日おめでとう!愛してる!!


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