Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
My own sanctuary
精神世界イベント後の飛空艇生活で。
オリキャラ出現、かつ、ややコメディ風味です。
苦手な方は、ご遠慮下さい。
勘違いじゃなければ、俺とティファは最近ちょっと良い感じだ。
くつくつと耳に心地よい鍋の音。
鼻をくすぐる香りは、前に美味いと褒めたグラタンだろう。
そしてまるで生きているかのように躍る、腰の後ろでキュっと結ばれた蝶々結び。
そう、ここは俺だけの聖域。
My own sanctuary
あのライフストリームでの一件で、ティファとの関係はぐっと縮まった気がする。
近い距離。
どちらからともなく絡まり合う互いの視線。
その後慌てて目を逸らした彼女の、赤く染まる頬。
そして夕飯前の厨房には、暗黙の了解のように仲間は顔を出さなくなった。
裏で何を言われているのかと思うと決まり悪いが、それは他人の目にも俺達の仲が公認に映る証拠のようで、ここは益々特別な場所となる。
本当はこんな厨房よりも、部屋へ連れ込みたい。
触れて。
抱きしめて。
キスをして。
そして...
だけど俺は焦らない。
奥手なティファに無理はさせたくないし、物には順序ってものがある。
(きちんと言葉で伝えてからだ...)
そう思う一方俺は現状に満足し、誰も見ていないのを良いことに今日も彼女との距離を詰める。
1cm...
また1cm...
胸板が彼女の服を掠めた。
ビクッと揺れる身体。
調子に乗り、調理台と俺の間に挟み込むよう、後ろから片手を付く。
互いの身体が触れ合うまで、あと1cm。
ふと気が付くと、俺の顔の目と鼻の先にある耳の裏は真っ赤だった。
(可愛い...)
そう、ここは確かに俺だけの聖域だった。
...あの日が訪れるまでは。
「おう、クラウド。今ちょっといいか?」
この船の主に声をかけられ、武器を整備していた手を休める。
「こいつ、こないだ体調崩して船から降ろしたクルーの代わりだ。
若くてちょっと危なっかしいが、筋は良い。
まぁ、可愛がってやってくれ」
そう言うシドの横には、まだ少しあどけなさの残る青年。
「リーダーのクラウドさんですよね?
物凄い強いって聞きました。
俺、精一杯頑張りますんで、船ではよろしくお願いします!」
青年はハキハキと俺に挨拶をし、俺もそれに手短かに答える。
「ああ。こちらこそよろしく頼む」
ハイ!とまた威勢のよい返事をして、そいつはシドに連れられ、他のメンバーの元へと去って行く。
(感じの良い奴だな)
その時はまだ、そんな印象しか持たなかった。
その日もいつもの様に、誰よりも早く夕食の献立を知った俺。
(皆には内緒ね?)
ティファはそう言いこっそり一番大きい肉をよそってくれる。
上機嫌で目の前のポトフを口に運んでいた時だった。
「初めて見た瞬間、それはもうビックリしちゃって...!」
「すごいなぁ、アレで腕っ節も強いなんて!」
クルー達は少し離れたところで食事をとるが、今日はそこから例の新入りの元気な声が響いてきた。
どうやら思った事は全部口に出す男らしい。
俺とは真逆のタイプだ。
そうこうしている内に何を思ったか、そいつはこちらにトコトコと歩いてきてティファに話しかける。
そして唐突に聞いた。
「ティファさんとクラウドさんって、恋人同士なんですか!?」
フォークを手に固まる一同。
無言のまま、徐々にタコのように染まっていくティファの顔。
しかし次の瞬間、彼女は叫んだ。
「なっっっなななな何言ってるの!?
ただの幼馴染だってば!!!」
「よかったぁ!
皆が噂してるから、てっきり...
それじゃ俺、遠慮しなくていいってことですね!?」
ニッコリと笑うそいつ。
「んん!?」
ポテトを喉に詰まらせるティファ。
俺のフォークに突き刺さっていた人参が、皿の上にべちゃっと落ちる。
...悲劇の始まりだった。
「ティファさん、お帰りなさい!」
「ティファさん、買い出しですか?俺荷物持ちに一緒に行きますよ!」
「ティファさん、今日も綺麗だなぁ...」
「はは...ありがと。今日も元気ね」
乾いた笑いを返すティファ。
そいつはティファより一つ下の19歳。
年下ということもあり、無下には扱えないのだろう。
休まず耳に飛び込んでくるそいつの声に、さっきから人差し指はテーブルを叩くのをやめない。
ティファティファ騒いでるだけならまだいい。
あろうことかそいつは、俺の今一番大切にしている場所にまで入り込んで来た。
「うわ~美味しそうだなぁ。待ち切れないです」
「うん、ちょっと待っててね!」
二人の背中を恨めしく眺め、自室へ引き返す。
(いったい何なんだ、あいつは?
俺たちは星の命を救う旅の途中なんだ。色恋沙汰どころじゃない!
いい加減に誰か注意しろよ!!)
しかし、自分の事を棚に上げ心の中で責める俺に、周りは冷たかった。
「ちぃ~っとばかしうるせぇけど、飲み込みはビカイチだな」
褒めるシド。
「おろ~、典型的な爽やかイケメンって奴?クラウドやばいんでないの?」
からかうユフィ。
「休憩時間にサッカーして遊んでくれるんだよ!オイラ、大好き!!」
尻尾を振るレッド。
「ストレート過ぎて、逆に見ていて気持ちが良いな」
淡々とヴィンセント。
そいつは社交的で要領も良く、仲間受けがすこぶる良かった...
「ま、まぁ、悪い子じゃない...かな?」
そんなティファの言葉が一番こたえる。
なぁ、ティファ。
あの時間が特別だったのは、俺だけだったのか?
厨房に近づけない日が何週間か続いたある夜だった。
「はぁ、はぁ、はぁ...」
膝に手を付き、肩で荒い息をする。
日課である、外での鍛錬に一人励んでいた。
ここ最近溜まった苛つきを発散するためでもあるが。
(そろそろ戻るか)
顔を上げ、袖口で汗を拭いていた時だった。
視界の片隅に何かが飛び込む。
(ん?アレは?)
そこには俺には気が付かないまま、森へと入っていくあの青年の姿があった。
何をやってるんだ?こんなところで。
ここのモンスターは強い。止めなくては...
そう思い反射的に動き出した足は次の瞬間ピタリと止まる。
(ほっとけよ、あんな奴...)
脳裏に走った映像は、ティファと肩を並べて厨房に立つあいつの背中。
気にせず地面に刺した剣に手を掛けた。
しかしそこでまた頭の中に声が鳴り響く。
(俺、精一杯頑張りますんで、よろしくお願いします!)
悪い奴じゃ...ない。
勢いよく剣を引き抜き、地面を蹴った。
案の定そいつは八匹ものウルフに囲まれていた。
一匹一匹はそこまで強くはないが、こいつらは仲間を呼んで無限に増える。一発で仕留めなければならない。
今まさに青年に襲いかかろうとしている数匹目掛けて刃を投げつけ、同時に残りはイフリートに片付けさせる。
その数匹を絶命させた剣を握り直すと、炎でフラフラになったウルフを片っ端から叩き切った。
青年は腕から血を流し、地面に尻餅をついていた。
手を貸し、回復魔法もかけてやる。
そこでふと、そいつの手に握られているものに気が付いた。
...剣?
こいつ、船乗り志望じゃなかったのか?
一瞬の出来事に惚けていたそいつは、我に帰ると丁重に礼を言った。
「でもクラウドさん、こんなところで何を?」
それはこっちの台詞だが。
「鍛錬だ。お前こそ剣なんか持ち出して何をしていた?」
「鍛錬?そんなに強いのに?」
問いに答えることなく、そいつは下を向き考え込んでしまう。
いったい何だっていうんだ。
しかし突然顔をクッと上げ、力強く言った。
「クラウドさん、俺、決めました。
前任者の体調が戻り次第、俺、飛行艇を降りることにします」
シドさんには申し訳ないけれど...と自らの剣に視線を移した。
「本当は、俺の夢はコレなんです。
でも才能を感じなくて。
金も稼がなきゃならないし...数ヶ月前に船乗りの勉強を始めました。
それなのに諦めきれなくて、今日は外に出てきてしまって...
でも、才能なんて言い訳でしたね。
だってクラウドさんでさえ、普段の戦闘に加えて鍛えてるくらいなんだから」
その真っ直ぐな瞳に照れ臭くなる。
魔晄を浴びて、ズルしてるだけなんだけどな...
でもそれは言わない方が良いだろう。
俺はそのまま船に戻った。
「ティファさんにアタックするのは、剣を極めてからだな!」
と相変わらずな調子で騒ぐそいつと一緒に。
一週間後、そいつは来た時と同じ爽やかな顔で飛空艇を降りた。
結果は報告します、ありがとう。そう言い握手を求めて。
一ヶ月ぶりに戻ってきた、平穏な日々。
しかし随分と時間が空いてしまったため、今日からまた厨房へ行っていいものか迷っていた。
もうすぐティファが夕食の準備を始める時間だ。
背中に感じる、パタパタと駆けて行く軽い足音。
「ねぇ、クラウド」
「ん?」
...なんだ?
振り返るとそこには俺の一番可愛い人の、はにかんだ笑顔。
「待ってるね?」
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ライフストリーム後は書きたいネタが多すぎて、メテオ発動からサクッと一年くらい経ちそうな摩訶不思議。
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