Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
capriccio
旧拍手です。
AC後。雪の積もった休日。
白い置物は暖房の熱に耐え切れず、やがて姿を消した。
絶え間ない歓声と私を遮断する扉は相変わらず閉じられたまま。
だけど小さな水溜りに浸る木の葉と木の実に、代わりに語りかけられる。
“一人ぼっちなんかじゃ、ないよ”
capriccio
「あ!クラウド、やっと起きたな?早く来いよ!!」
「かまくらの雪ダルマが重くて転がせなくなっちゃったの。クラウド、手伝って!!」
一瞬だけ開いたドアは再び勢い良く閉じられ、時間差で舞い込んだ冷気だけが後に漂う。
返事をする間も与えられなかった彼はまだ寝惚け眼だ。
その全身に、つい物珍しい眼差しを送ってしまう。
「なんか、新鮮」
「そうか?俺だってこんな日くらい着込むさ」
...そうでもなかったよ?
季節を問わず暑がりなクラウド。
故郷で部屋の窓から覗き見た、黙々と雪かきをこなす姿を思い出す。
母親に着せられたであろう厚手の服を一枚、また一枚と脱ぎ捨て、最後にはTシャツだけになる様子を面白く眺めたものだ。
「じゃあ行って来る。...ティファは?」
「私はお昼の用意があるし...」
時計を仰ぎ見た彼は、朝を抜いたせいで腹ペコなのだろう。
特にそれ以上誘う事もしなかった。
私はシンクの食器を片付けながら献立に頭を巡らせる。
ふと気付くとクラウドはまだ後ろに立ったままだ。
「行かないの?」
「...うん?」
肯定とも否定ともとれる返答に首をかしげていると、引き寄せられ軽く唇が重なり合った。
「...行って来る」
「.........うん...」
耳の後ろを真っ赤に染めた彼は逃げる様に立ち去り、私は熱い頬を押さえ一人台所で惚ける。
ふと遠くに上がったマリンの高い声に我に返った。
(ボーっとしてないで、ご飯作らなくちゃ!)
コンロに向き直り忙しく手を動かす間にも、楽しそうな声は止まない。
...なぁ、マリン?...
...あのなぁ、デンゼル...
(役得だなぁ...)
“女親はしつけ役兼、食事係。男親は遊び相手” とは良く言ったもので、私がクラウドを差し置き二人に遊びをせがまれる事はまずない。
(元々そういうタイプでもないし)
そこで、ゴールドソーサーに行っては羽目を外していた女友達2人を思い浮かべる。
(昔は、違ったのにな...)
私も子供の頃はああだった。
こうなってしまったのは、多分あの日から...
そしてたまに寂しくてたまらなくなる。
特に立ち慣れた床が冷たく凍てつく、今日の様な日は...
そうこうしている内に料理は目処がついた。
(外の様子、見に行ってみよう)
エプロンを外し、戸口へ向かう。
上着を羽織らない身体に張り詰めた空気が突き刺さるが、雪に反射する陽のお陰で目に映る景色はどこか暖かい。
「かまくら、出来た?」
しかし良く見るとマリンの背丈程もある大きな雪の塊は、穴を掘られないまま遠くに転がされている。
「あ、ティファ!丁度よかった。いい?よ~く見ててよ!」
両手に雪の塊を持ったデンゼルがニヤニヤする。
「おい、デンゼル...」
「? ...なぁに?」
状況が読み込めずマリンに視線を送るが、彼女はお腹を抱えて笑うだけだ。
クラウドが慌てて私の肩に手を置き、家の中へ押し戻そうとする。
「ティファ、寒いだろ。中に入ってた方がいい」
「...私、いない方がいい?」
「そうだな」
「...そう。ご飯、いつでも食べられるからね...」
容赦なくバタンと閉められた扉を恨めしく睨み、リビングのソファーで唇を尖らせる。
“私、いない方がいい?”
“そうだな”
(何よ、あんな言い方しなくてもいいのに!)
結構、傷ついたかも...
除け者にされ、すっかり意気消沈する。
(どんなに家事をしてたって、一番人気はクラウドだもんね!)
膝を抱え一人不貞腐れていると、入口で物音がした。
(戻って来たのかしら?)
だが様子を見に行っても誰の姿もない。
(水を飲みに来ただけかな)
キッチンに視線を巡らすと、つい数分前にはなかった物を調理台の上に見つけた。
(...雪うさぎ?)
「!!」
顔がみるみる熱を持つのがわかる。
片方は赤い目、もう一方は緑の目をした二匹の雪ウサギは、互いに向き合い口の先端がくっ付いていた。
...見られてたんだ。
「もう!デンゼルね!!」
窓の外を睨むがそこに人影はない。
いたずらの張本人の得意気な声が響くだけだ。
決まり悪さから赤い方をつつき、くっついている体を離す。
ストーブで暖まった指先に、真っ白な雪の冷たさが心地よい。
何年ぶりかの感触に懐かしさが沸き起こった。
最後に雪遊びをしたのはいつだろう。
その時と比べ確実に変わってしまった私。
でも...
...思ったより、悪くないのかも。
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何だかんだ言って、三人の話題の中心はいつもティファ?
capriccio=いたずら
イタリア語です。
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