Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
PRIDE does not let
ユフィ視点の本編ギャグです。
「もう、思ってもない嘘ついてまで勝ちたい!? 姑息!卑怯者!!悔しい~~!!」
エアリスにヨシヨシをされ地団駄を踏むティファは、事の発端となった男をなじり続ける。その口から零れた、聞こえるか聞こえない程度の台詞を忍びの末裔は聞き逃さない。
「別に、丸っきり嘘って訳じゃ...」
...おろ?
ふぅん、この仏頂面も “あんな” 事、思うんだ。良い気晴らしになったし、思いがけず成果も得られたみたいだ。
いつか揺すりのネタにしてやろうっと。
PRIDE does not let
「は? まだやってんの!?」
テントの入口をくぐると聞こえてきた掛け声に呆れ果てる。狭い空間で延々と盛り上がってるのは腕相撲大会。多少の天候の崩れでは進路は変えないが、足場の悪い地形で豪雨となると話は別だ。要は、一向に弱まらない雨足に見切りをつけた結果、ポッカリ空いた午後を埋める恒例の暇潰し行事である。
「お前はこういった馬鹿騒ぎが好きそうではないか」
スカして言う棺桶男は、以前犬コロに手酷く爪痕を付けられ惨敗してからは片隅で寝たフリを決め込むようになった。
「だって、賞品がしょぼ過ぎるんだもん!」
“ご飯一回大盛り券” なんかに、うら若き乙女が惹かれる訳ないじゃん。
「それに結果はわかりきってるし?」
たま~にバレットとナナキが良い線いくけど、左手のハンデをしょっても大抵クラウドの圧勝だ。本業がパイロットのシドは意外と腕力はなく、リモコンで力加減が自由自在なケットは早々に出場権を失った。
「シドに完勝だなんて...」
勝っても負けても落ち込むティファは、格闘家の血が騒ぐのか元々負けん気が強いのか、なんだかんだでいつも本気になり、今日は初の決勝進出を決めたようだ。
「なんだ、ティファが相手か。両手つかってもいいよ」
「あれ、そんなこと言って...後で後悔しないでよ?」
余裕しゃくしゃくのチャンピオンにムッとし、ポキポキと指を鳴らす挑戦者。
「Ready......Go!!!」
手を離し、ティファ~、ファイト~!と黄色い声援を送るエアリスはハナから参戦の気はなく、専らレフリー役。デブモーグリから引きずり下ろしたケットを抱え、無理やり “フレー、フレー” をさせている。
(もう流石に眠れないしなぁ...)
ふわわぁと大口を開け、クラウドの真横に座りこんだ。
(初の組み合わせだし、見てやってもいっか)
「ぐっ......」
開始約10秒後、タイトル防衛を狙う男がクっと苦しそうに漏らした声に会場はどよめきだした。
「んん!? 元ソルジャーうたって粋がってる奴が、女なんかに押されちまってるってか?」
「アレだけ鼻にかけたのに...クラウド、かっこ悪い」
「わっわっ、ティファ、凄い! 頑張って! あと少し!!」
「えぇエアリスはん!やめて!!手足が引きちぎれてまいまっせ~!!」
「...たいした女だぜ、まったくよ」
ヴィンセントも片目を密かに開け、成り行きを伺いだした。
...ん?
野次に紛れ、隣から低い声が聞こえる気がする。
...ティファ、動揺...ティファ、動揺...
は?コイツ、何ブツブツ言ってんの?キモッ...
仲間内じゃ “クール” で通り、美女二人をはべらせるコイツだけど...アタシにはただの根暗のカッコつけにしか見えない。気にせず前を向くと、クラウドは小声でティファに呟いた。
「今日のティファ、雰囲気が違うな」
「...?」
怪訝な顔をするが力は揺るがないティファに、クラウドは軽く舌打ちした。
「服がいつもより可愛い」
「.........は?」
戦いを終えたティファは、相変わらずカジュアルだけどデニムのショートパンツに白いシャツ。戦闘中、仲間に当たって痛いと不評なポニーテールのお陰でうなじも丸見えだ。
「髪型も妙に色っぽいし」
「いっっ...いいい色っぽいって...!クラウド、何か変な物でも食べたの!?」
隙を見逃さず、すかさずクラウドは怯んだ手を押し倒す。
「心理戦も、勝負の内だよな」
「...へ?」
ポカンとするティファは徐々に事の天末を把握し始めたようだ。
「クラウド......汚いよ...」
怒りに震える肩を余所に、クラウドは素知らぬ顔で言ってのける。
「さっそく今日の夕飯、大盛りな」
ティファからの事情聴取を終えたエアリスが、クラウドの反則負けを言い渡すのは、その3分後の事。
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PRIDE does not let=プライドが許さない
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