Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
花火に消された言葉 ~Tifa's date~ 後編
花火に消された言葉 ~Tifa's date~ 前編、の続きです。
文句を言いながらも、本当はわかってる。
一番幸せな誕生日の過ごし方。
だって私は20年前のちょうどこの日。
女の子として、生まれて来たんだから...
花火に消された言葉
~Tifa's date~ 後編
一度楽しむと決めた後は、意外と肩の力が抜けた。
改めて見ると、本当に華やかな街。
ニブルヘイムとも、ミッドガルとも違う。
プレートの上は、こんなものだったのかもしれないが。
「あ!チョコボだ!」
まさかここで見るとは思わなかった動物に遭遇し、つい子供っぽい声がでる。
屋台には、産まれたばかりの沢山の雛チョコボ。
可哀想に、変な色にペイントされている。
「か~わいいねぇ...」
「誰が買うんだ?こんなの」
「そっくり~!」
「......」
「あ...」
視線の先には気になるお店。
「クラウド、ここ入ってみてもいい?」
そう気軽に言えたのは、本当に用があったから。
小洒落たキッチン用品屋さん。
私はあるものを探していた。
「う~ん。さすがに綺麗なお店ね~、ちょっと高い...」
七番街で使っていたものの二倍近くもすると、なんだか買うのが悔しくなった。
「...なんだ?それ」
「マッシャー」
「まっ...?」
「マッシュポテトをね、作る時にあると便利なの」
あの人数分を作るとなると、これがないと肩が凝るのよね~と、私は彼を一人置き自分の世界に入る。
「保留かな。ありがと、クラウド」
次は化粧品の店に付き合ってもらった。
見るからに居心地悪そうな彼。
ごめんね、ちょっと待っていて?
「お客様、お綺麗ですね~
きっとこちらの色なんかお似合いですよ?」
お世辞を並べる美容部員をやり過ごそうと、こちらも負けじと微笑み返す。
私だって、営業スマイルなら負けないんだから。
「今日は友達の物を探しに来たので、そちらは結構です」
今つけているリップをくれた彼女へ。
「クラウド、エアリスにはどれが似合うと思う?」
「どれって...全部赤だぞ」
目の前に並ぶ何十本ものリップを、八百屋の野菜でも見るかのように眺める彼。
「もう、良く見てよ!微妙に違うじゃない!!」
「......」
結局、彼女が付けているリボンに一番近い色を選んだ。
思い描いた通りの買い物コースを巡ることが出来、私は上機嫌で通りを先へと進む。
ふと気づくと隣にクラウドの姿がない。
振り返ると、彼は私の五歩ほど後ろで何やら物言いたげに佇んでいた。
「...なあ。さっきの二つ、どっちか買ってやるよ」
「二つって...マッシャーと口紅?
いいのよ?そんな気、使わなくって。
一緒に見てくれただけで嬉しいんだから」
「誕生日だろ、それくらいさせてくれ。ただし、一つな」
そして「選んで」と言う。
確かに馬鹿高いものではない。
変に意地を張るより、ここは甘えておこうか。
「う~ん...じゃあ、マッシャー!」
「わかった。口紅な」
「えっ?え、なんで...」
「戻るぞ」
彼は戸惑う私を無視して踵を返す。慌ててその後を追った。
「ティファは、他人の物ばっかりだ」
振り向き様に、呆れたような...だけど優しい瞳。
やめてよそんな顔...
勘違いしそうになるじゃない...
第一、皆が食う飯を作る物を何故ティファが負担する、と、マッシャーも旅の経費で買ってくれた。
手には、お洒落で小ぶりなバッグが、互いにぶつかり合いながら三つ。
久々の、幸せな重み。
と、そこで、賑やかな雰囲気に馴染まない異質な黒に気付く。
(ん?アレは...)
クラウドも同時に気付いたようだ。
『ツォン!』
30メートル程先には、この旅ではもう見慣れたスーツ姿。
「まずいな...」
宿からはかなりの距離を来てしまった。
なんとか彼に見つからないように帰らなければならない。
「クラウド、とりあえず逆の方向に...きゃっ!」
焦った私が勢いよくぶつかった相手も黒いスーツ姿だった。
まさか...
『ルード!!!』
反射的に、二人共身構える。
しかし当のルードは、私とぶつかった瞬間から寸分も動かず棒立ちのまま。
沈黙が続く。
「あんた...」
(ん?...私?)
「こんな服、着るんだな...」
(???)
「見逃してやる...一度だけだ」
今に始まった話ではないが、私はこの人が何を考えているのかサッパリわからない。
しかし、背後にはツォンが迫ってきている。
私とクラウドは、顔を見合わせ走り出した。
『はぁ、はぁ、はぁ...』
ここまで来れば、宿まであと少し...「うわっ!」
突然クラウドが上ずった声を出す。
目の前には赤髪と金髪のコンビがいた。
...アイス屋さんの列に並んで?
「残念、今日はオフじゃないんだぞっと」
つまりサボり中なのね。
にじり寄ってくるレノ。
逃げなくちゃ!
「と言いたいところだが、このアイス屋、一時間以上並んだんだぞっと」
彼は再び行列の中に収まる。
「先輩!いいんですか!?そんなで...」
「じゃあ、お前は勝手にしていいんだぞっと」
「うっ...」
こちらの緊張をよそに、今度は私の格好を不躾に眺めてくる。
「ふぅん...あんた、戦闘以外ではめかしこむんだな。
かなりイケてるんだぞっと」
「あ、いや。今日は誕生日で特別...」
つい友達にするような返答をしてしまった。
四人の間に流れる、気の抜けた沈黙。
『......』
それでは有り難く、と宿の方角へ向かう私とクラウドに、背後から声がかかった。
「誕生日プレゼントだぞっと」
「なんだか、調子狂うわね...」
「ああ...」
人目につかないよう、廃屋らしい建物の外付け階段を登り、人気店のアイスを二人並んでペロペロなめる。
(ん?あの声は...)
今度は何?
「キャハハハハハハ!」
「ガハハハハハハハ!」
ああ...新羅の中でもことさら嫌いな二人だわ。
二人は真上にいる私達には気づくこともなく、汚い笑い声で楽しそうに他人を罵っている。
相変わらず質(たち)が悪い人達ね!
「おい、ティファ」
隣には、悪戯っ子の顔をしたクラウド。
「アイスはまた今度買ってやる」
...なるほどね。
「了解よ、クラウド」
『せ~の!』
「キャーーーー冷たい!!!」
「うわっっヌルヌル...ヌルヌルしよる!」
悲鳴を背中で聞きながら走る。
今度は二人とも笑顔で。
笑い声をあげながら...
そのまま宿屋の入り口まで走り抜いた。
「はぁ、はぁ...ああ、もう笑いすぎてお腹痛い!」
「良い気味だったな」
息を整えていると、ふと左手に違和感を感じた。
『あ...』
二人同時に気がついた。
クラウドの手の中に、しっかりと握られた私の手。
「ご、ごめん!」
パッと手を離す彼。
「う、ううん」
気まずい沈黙。
手のひらに残る熱と、先程のクラウドの弾けんばかりの笑顔が胸に温かい。
ひょっとして、私にも少しはチャンスがあるの?
「......言っちゃおうかな」
「...何を」
「エアリスなら、きっとはっきり言うんだろうな」
「はぁ...」
「あのね。クラウド、私ね...」
その時、私の声に覆い被さるよう、頭の上で花火が盛大に鳴り響いた。
色とりどりの光が二人を包む。
気がつけば、辺りはもうすっかり暗くなっていた。
そういえば、今日は何のお祭だったんだろう。
「綺麗ね...」
「ああ...」
そう相槌を打つけど、クラウドは相変わらずこちらを向いたまま。
「見てないじゃない」
私が笑うと慌てて花火の方を向く。
変なの。
「そういえば、さっき何を言おうと...」
「な、なんでも!なんでもない...
皆のところに戻ろう?クラウド」
「ああ、そうだな。遅れるとユフィが怒りそうだ。
朝からケーキを焼くんだと騒いでた。ちゃんと食べられるのかな?」
「本人の前で言ったら、殺されるわよ!」
彼を茶化しながら二人、宿屋の入り口をくぐり抜ける。
今日は、これだけで十分。
クラウド、素敵な誕生日をありがとう。
~おまけ~
「おい、俺の言う通りだったんだぞっと。
明日昼飯おごりな。」
「ちぇ~、私は絶対あの古代種の方だと...
なんでわかったんですか、先輩」
「ヒント。
俺は男で、お前は女なんだぞっと」
「...はぁ?」
「ルードもやられる、あの巨にゅ...「サイテー!!!」
ルード「......」
(...胸ではない)
ツォン「お前ら...仕事してくれ...」
******************
伝えたいメッセージも特になく、とにかくくだらない作品です。
ただただ、楽しいデートをさせてあげたかった。
お目汚し、失礼致しました~
PR