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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Boys be Adults


Cloud×Denzel
Familyです。


仕事?v.s.家庭?
なんにせよ、しっかり働く男はカッコいい!


軽くオリキャラも出て来ます。









コツ...コツ...コツ...コツ...

そう規則正しく針を進める時計を恐る恐る振り返る。

5時......

今から寝ても2時間か...

白熱灯に照らされた図面は、容赦なく俺の視界を霞ませた。

しかし目をギュッと瞑り焦点を合わせ、今一度集中力を呼び起こす。


Boys be Adults


「なぁ、クラウド」

聞こえるはずのない声に驚き椅子を回す。

「まだ起きてたのか?」

もう12時を回っていた。
そこには部屋のドアを控えめに開け、パジャマ姿を半分覗かせるデンゼル。
眉をひそめた俺に慌てて言う。

「怒らないでくれよ。
頼みがあって、帰るのを待ってたんだ」

部屋に身を滑らせた彼の手には、白い発泡スチロールでできた何かが握られていた。





「今度友達と、飛行機の飛ばしっこ大会をするんだ」

机にその飛行機になりかけの物体を置き、デンゼルは真剣に話し出す。
ここ数日、説明書に従い自力で組み立てていたが、どうも上手くいかない。
まだ羽のない新幹線の様なそれは、パーツを埋め込むべき穴ボコだらけだった。
その穴から覗くのは、機体の中心を貫く割り箸のような棒に、グルグル巻きつく太い輪ゴム。

模型と違い最終的に飛ぶように設計されたそれは、見かけより複雑な造りをしているに違いない。
そして “友達” そうは言っても彼らには父親のバックアップが付いているのだろう。

「明後日の日曜、クラウド休みだろ?
作るの手伝ってくれよ」

そして「できそうか?」と切実な瞳で俺を見上げる。
毎晩帰りの遅い俺に焦り、今日はいても立ってもいられなかったのだろう。

元々負けん気の強い俺だ。
気持ちは良くわかる。

「安心しろ」

そう伝え、もう寝るよう背中を押した。

しかし翌日仕事中、ティファからの電話で事態は急変する。





『配達の依頼って訳じゃないんだけど...』

申し訳なさそうに、突如休日に舞い込んだ依頼を伝えてくる。
ティファにはデンゼルとの約束は伝えてあったが、そこにはそれを上回る緊急性があった。

祖父の危篤に備え、家族で帰省を企てる父。
しかし最短距離でそこに辿り着くには危険な地域を通らなければならない。
両親だけならまだしも、幼い子供も一緒の旅。
今までも、配達先と目的地が近ければ護衛の仕事も引き受ける時があった。
その評価を耳にし、電話を掛けてきた訳だ。

“祖父の危篤”
“幼い子供”

デンゼルにはすまなかったが、気持ちは決まっていた。
その返答に、ティファもほっとした声を出す。





翌朝日曜の食卓、デンゼルはフォークで乱暴にウィンナーを突き刺した。
カチャン!と耳障りな音が響く。
マリンが首をすくめた。

「デンゼル、そういう事しないの」

ティファが無表情で咎める。
彼は返事もせず、つまらない顔のまま口をモグモグさせた。

「...いつなんだ?」

スクランブルエッグを口に運びながら聞く。

「何が...」

不貞腐れ、怒りのこもった声。

「飛行機の競争」

「.........水曜だよ」

近々...という訳ではないが、平日は早く帰れる自信がない。
そして自分で時間をコントロール出来ない今日も。
俺は提案を持ちかける。

「今晩帰ったら、寝てる間に作っておいてやるから」

しかしよっぽど腹を立てていたのか、デンゼルは「ご馳走様!」と叫び椅子からガタンと立ち上がる。
そして見切る様にポツリと言った。

「もう...いいよ」

皿を両手で持ち、台所へ消えていく。
捨て台詞を残し。

「余計なこと、絶対にするなよな!」

目の前の4つの瞳に見つめられ、盛大に溜息をついた。




時刻は午前2時。

帰宅しティファの寝息を確認し、子供部屋に忍び込む。
飛行機は以前の状態のままデンゼルの机の上に寝かされていた。
暗闇の中、図面らしき紙と部品を手当たり次第探り自室へ向かう。

(もう...いいよ)

そんな訳にはいかなかった。
父親の力を借り、原っぱをスイスイ飛び回る飛行機の下、一人俯くデンゼルの姿が頭に浮かぶ。

所詮オモチャだ。
一時間もすれば終わるだろう。
しかしその予測に反し、俺が寝床に就いたのは、ティファが起き出す時間に近かった...

組み立てだけならすぐだった。
微笑を浮かべ、それを部屋の中で試しに飛ばす。
しかしそれは数メートルでストンと落ちた。

床に寝そべるそれに向かい今朝と同じ溜息をついたが、ノロノロと椅子から立ち上がり拾い上げると再び図面に顔を突きつける。
時には右に、次は左に傾く飛行機にイライラしながらも慎重に手を加え、やっとそれは真っ直ぐ飛んでくれた。
達成感を胸に抱き、再び子供部屋におもむく。
そして大きく伸びをし、自室のベッドに倒れ込んだ。





一時間半後、デンゼルは益々曇った顔で目玉焼きの真ん中にザクっとフォークを突き立てた。

「デンゼル、いい加減にしなさい。
クラウドは仕事だったの。 しょうがないの」

ティファも昨日と全く同じ調子で諭す。
寝不足でグラつく頭をかかえた。

...何がいけなかったんだ?



「きっと一緒に作りたかったのよ...」

子供達が家を出た後、ティファの助言により初めて浮かんだ発想。

(余計なこと、絶対にするなよな!)

ただの癇癪(かんしゃく)だと思ってた。
けどアレは彼からの回りくどいメッセージ。
俺達に残されていた平日の夜。
それを利用して...

“俺も一緒に作りたいんだ!”

あれはデンゼルの飛行機だ。
加えて彼はここ数日、首を捻りあれを片手に図面と睨めっこし続けたんだ。
俺の助けを受けつつも、自分の手で作り上げたかったに違いない。
ましてや朝起きたら完成してたなんて、つまらないに決まってる...

まだ間に合う。
俺は今日と明日、猛スピードでフェンリルを走らせる覚悟をした。





ガンっ!と鈍い音をさせ、思い切り蹴っ飛ばした石ころは校庭の遊具から跳ね返った。

(クラウドのウソつき...)

収まらない腹の虫を抱えたまま、チャイムの音を合図に教室へ向かう。

仕事が大切なのはわかる。
けど、先約は俺だったんだ。
なのにクラウドは依頼をすぐさま受けた。
俺に断る事なく...
仕事内容の説明もせずに...

今朝目を覚まし、机の上に置かれた物を見て益々悲しくなった。

(悪いと思うなら、なんで今日か明日、早く帰ってきてくれないんだよ...)





(あ...)

教室に入ると飛び込んできた顔に、釣り上げていた眉を下ろす。
そこには、土曜日お祖父ちゃんの危篤の知らせを受け学校を早退した友人。
今ここにいるという事は...そういう事なんだろう。

「あ...!デンゼル!!」

何を言おうか迷っていると、そいつは意外にも明るい口調で言った。
そして「おはよう」も言わずまくしたてる。

「なぁ、クラウドって金髪の兄ちゃん、お前の家族だよな!?」

「そう...だけど?」

突拍子もない質問にポカンとする俺。

「昨日オレがじいちゃん家に行く時、用心棒してくれたんだ」

(......そうだったのか?)

「バカでかい剣振り回してさ、ばったばったモンスター倒して、超かっこよかったんだけど!!」

「.........へぇ...」

気のない返事をしつつも、脇腹がこそばゆい。
友達はそんなの気にもせず、唾を飛ばさん勢いで喋り続ける。

「夜中になっても愚痴の一つも言わないし、筋肉ムキムキで顔もかっこいいしさぁ。
母さんなんて、ハゲて腹も出てる父さんと見比べて、ずっと “ほの字” だった!!」

「......ふぅん」

「最初電話した時、日曜だし家族と大切な約束があるからって言われたんだけど...
命に関わる事だからって、即答してくれたんだ」

「......当たり前だろ?
家族との取るに足らない用事より、仕事に決まってる」

したり顔で言った。

“あの兄ちゃんのおかげで、オレたち最後にギリギリじいちゃんと話せたんだ!”

最高の褒め言葉に浮き足立ちながら...





なんとかデンゼルが寝る前に帰宅した俺は、マリンが風呂に行くのを見計らい子供部屋に入った。
意外にも、デンゼルは俺の作った飛行機を手に持ち、前後に振りかざしていた。

「何か用か?」

まだ俺を見てくれない彼に真顔で伝える。

「なぁ、明日新しいの買ってきてやるから...
もう一回、一から一緒に作らないか?」

ちょっと夜更かしさせてしまうけど...

しかしデンゼルはプロペラを指で回し、中に仕込まれた輪ゴムを巻きながら平然と言う。

「もういいんだ」

「デンゼルが良くても、俺が良くない」

負けじと返した。
だがデンゼルは意外な反応を見せる。

「俺、この飛行機...結構気に入ってるんだよね」

次の瞬間小さな手が離れたプロペラは、勢い良く回転し、彼の前髪をそよがせた。

(?)

デンゼルは相変わらず俺を見ないが、その口調に刺々しさはない。

「クラウド、昨日大変だったんだろ?
...ワガママ言って悪かったな」

(なんで急に物分かりが良くなってるんだ?)

「疲れてたところ、ありがとうな」

「本当にいいのか?」最終確認を済ませ部屋を後にする。
突如大人びた息子の発言に首をかしげながら。


“クラウド、仕事って大変だよな。
俺も男だからわかるよ”





視線の先には、宙を舞う色とりどりの飛行機。
だけど俺の目が追うのは白いやつだけだ。

クラウドの飛行機はよく飛んだ。

「デンゼルの、すげぇ...!!」

友達が口々に上げる感嘆の声。
自然とにやける顔。
それを見られないよう、まだまだ地に落ちる気配のない飛行機を夢中で追った。

目の前に広がる鮮やかな緑の芝生。
それが発しているはずの重力に逆らうよう、白い飛行機は見上げた先の青空に囲まれ、本物の飛行機になる。
首を上に曲げながら走るのは大変だったけど、足は止まらない。
俺よりずっと足の早いそれを、ムキになって追い掛けた。

きっといつか、追い付いてやる...!

俺との約束を破ったクラウド。
だけど代わりにクラウドは、もっと大切な物を守ったんだ。
俺に一言も言い訳する事なく。

誰の父さんにも負けない自慢の家族。


クラウドは、やっぱりかっこいい。


******************


プロローグ小説後半のクラウドはあちゃーでしたが、“クラウドは彼のヒーロー” というティファの台詞だけは気に入りました。
いや、読んでないんですけどね。

Boys Be Ambitiousならず、Adults(オトナ)です。

子供の頃、とにかく飛ばなかった手作り飛行機が、父親の手により簡単に空中浮遊しだしたのを思い出して...





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