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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

旅の途中

ナナキ視点。ブーゲン様とのお別れに際して。







旅の途中


ーーその存在は時に脆く、おぞましいほど愚かしい。しかし瞬く間に燃え尽きる一生において、信じ難い程の眩い光を放つ力を秘めている。

そんな序章だろうか。涙の流し過ぎでぼんやりと滲む頭の奥は、恐れたほどは悲しみに暮れていない。悠長にしている時間はないことは知っていた。だけど澄んだ空気を改めて肺に満たし、雄大なシルエットを胸に刻みつける。オイラを育んでくれた温かで、美しい渓谷。

村の中心を照らすかがり火に寄り添う男女の姿が見え、今朝方目にした光景を思い起こす。ちょっとドキドキして、見てるこっちが恥ずかしい。だけど同時に羨ましい気持ちにもなったことは、仲間の誰にも内緒だ。

故郷の皆からさよならを言われるのが嫌で、夜が明ける前にハイウィンドに戻り着く。同じ心境だろうか、既にそこには二人の仲間が揃っていた。

“や~っとくっついたか”

遠くに肩を並べているクラウドとティファに、シドは声をかけようとはせず咥えた煙草に風を避けながら火をつける。

“くっついた?”

確かにティファの肩を抱いたクラウドの口は、先程から何度もティファのそれにくっついたり離れたりを繰り返している。時には一瞬だったり、かと思えばとても長く。

“アレはな、人間様の崇高な愛情表現の一つよ”

不思議顔のオイラに、お前らも気の合うのと毛づくろいとかするだろ、とニヤリと口の端を上げ薄暗い空に豪快に煙を吐いた。

“うう、さみぃな。アイツら完全に出来上がってやがるぜ、中で待つぞ”

人の気配に敏(さと)いはずのクラウドは、オイラ達に全く気付かない。バレットとシドの後をついて行きつつも今一度彼らを振り返る。クラウドの腕はしっかりとティファを包み込んだままだ。
良かったね、ティファ、もう寒くないよ。良かったね、クラウド、今度はうまくいって...

数日前のこと。ティファのご飯をたらふく食べて、野営中に火のそばでウトウトしていたオイラは、クシュンと空気を揺らした音に片目を薄っすらと開けた。

「寒いのか?」
「ん、失敗。もう一枚持ってくれば良かった」

横倒しの丸太を椅子にして隣合う二人。ティファは二の腕を摩り足元の小枝を折って焚き火の中に放り投げた。

「火、もっと大きくならないかな」

「ティファ、オイラのとこ来る?」開きかけた口は次の瞬間思い留まる。そろりとティファの背後に回される腕。それは肩まであと少しのところで躊躇っては戻り、もう一度戻って来てを繰り返す。どんな恐ろしいモンスターにも慄くことのないクラウドは、あの華奢な肩に触れる勇気はないらしい。そうこうしている内に痺れを切らしたティファはスっと立ち上がり、あと僅かのところにいた腕はクラウドごとあたふたと仰け反り返った。

「ナナキ起きて。テントで寝よ」

いつもみたくオイラの首に巻きついて寝息を立てるティファ。その少し冷えた身体を枕にするのは、あの日はクラウドにちょっとだけ申し訳なかった。



エアリスとティファ、どちらが涙を流すことになるのかは、この旅の最中に仲間内で宿敵の討伐戦略並みに語られてきたかもしれない。エアリスは今泣いているのだろうか?そっち方面にはまだまだ疎いオイラ。この恋の結末が単純に幸せだけをもたらすのかはわからなかった。ふとフワリと甘い香りが鼻先を掠める。

“あら、心外ね。私の心は海の様に広いのよ”

そよ風に浮かんだ笑顔に微笑み返す。エアリス、君も沢山登場する予定なんだ。もちろんとっても素敵な役として。

赤茶けた土を蹴り、勢い良くスロープを駆け下りる。“またいつか会える” 既に前を向いたオイラを二人はこの上ない笑顔で迎えてくれる。ゆっくりと踵を返し、谷の外に止めてある飛空挺に向け歩みだした背中を引き止めた。

「クラウド。お願いがあるんだけど、この旅が終わったらオイラに文字を教えてくれない?」

途方もない時間をかけて自然の理、とりわけ人間を観察し後世に伝え残す壮大な使命。その使命を果たすには、備えるべき能力が沢山だ。

「第一章はセトで譲れないんだけど、第二章の主人公はクラウドにしてあげるね」

見開かれたクラウドの瞳はすぐに穏やかさを取り戻し、タテガミをグシャっとやり微笑んだ。

「それは光栄だな。格好良く書いてくれ」
「色んな女の子に鼻の下伸ばしてたって書いちゃおうかな」
「おい、有る事無い事書くなよ。誰かさんに殴り殺されそうだ」

真面目腐った話ばかりじゃなくて、恋愛もこの伝記の重要な要素なんだ。悪いけど、見たままの事実を書かせてもらうよ。内心ほくそ笑むオイラを他所にクラウドは快諾をくれる。

「いつでも教えてやる。俺の冒険はあと少しでお終いだ。時間なら腐るほどあるさ」

最近 “興味ないね” はすっかり封印しっぱなしのクラウド。相変わらず口数は少ないけど、優しい心の持ち主であるこのリーダーをオイラはいつしか大好きになった。“壮大な使命” なんて気取って宣言したけど、本当は頭はじっちゃんが最後に茶化しながら伝えてきた台詞で一杯だった。シドやユフィにはからかわれるから絶対に相談出来ないけど、クラウドには素直になれる。「笑わないで聞いてくれる?」とクラウドに切実な顔を向けた。

「オイラのこれからの旅のもう一つの目的は、オイラと同じ仲間を見つけることなんだ。クラウドは、ちゃんと見つかると思う?」

不安だった。この旅でも世界中を旅したけど、オイラの種族については噂も聞かなかったから。そして “絶滅種” 北条はオイラのことをそう呼んでいた。

「でね、その...出来たらそれは、女の子だったら良いなと思うんだ。ティファみたいに可愛い...ううん、ティファほど可愛くなくてもいいけど、オイラが挫けそうな時にすぐそばで支えてくれる女の子。クラウドとティファを見てたら、なんだかそう思うようになっちゃったんだ」

クラウドはまた目を見開く。期待した通り、その顔は真剣そのものだ。

「大丈夫だ、絶対に会える」

同じ視線の高さまでしゃがみこみ、再びタテガミを撫でられた。今度はもう少し柔らかく。

「俺にはわかる、ナナキの仲間は世界のどこかにいる。きっと女の子だ。それもとびきり可愛い子」

そう言い切られたことで、心からはみるみる霧が晴れていく。明るい顔を取り戻したオイラに安心し、クラウドはふと素朴な疑問を投げかける。

「なぁ、ナナキから見てもティファって可愛いのか?」
「うん!とっても良い匂いがするし、抱き心地もモチモチで最高だよ!」
「...お前はもうティファと一緒に寝るの禁止だ」

一転独占欲を丸出しにしてケチをしだすクラウドに内心悪態をつく。フンだ、別にいいさ。こっちだって四本足の毛むくじゃらが理想なんだからね!

「クラウド!ナナキー?」

足を止めているオイラ達に、ティファが遠くから声をかける。クラウド、もう行かなくちゃ。もう一人の大切なヒロインが心配してる。

踏み慣れた心地の良い土を力強く爪で蹴りあげる。もうすぐ終わりを遂げるだろうこの一節の主人公と肩を並べ、まだ何も書き込まれていない真っさらなハッピーエンドのページに向かって...


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ナナキ伝、是非とも読みたいですとも!


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