Minority Hour
こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。
TRAUMA ESCAPE ll
新年のおみくじの話。こちらもDDFFリスペクトです。
TRAUMA ESCAPE ll
その薄っぺらい紙切れを開いた先に朱色で書かれた『凶』の字が覗いた時、ティファはまだ心の余裕を保っていた。なんなら新年早々ちょっとした面白ネタが手に入ったとすら思っていた。
しかし更に詳細に読み進めた「恋愛」の項目に書かれていた “諦めなさい” というお告げに顔から表情が消える。そして得意顔のクラウドが目の前に差し出してきた大吉のおみくじを一読すると、完全に動きを止めてしまった。
「...ティファ?」
屋台で買った饅頭の熱過ぎるそぼろと格闘していたクラウドは、相方が隣に居ないと気付くのがやや遅れた。人混みの中、十歩ほど後方で歩みを止めているティファを見つけると慌てて駆け寄る。
「どうかしたか?」
だがティファはクラウドの呼び掛けに反応しない。無表情のまま宙の一点を見つめ続けている。行き交う人々の流れを妨げるかたちで立ち尽くしているティファに、脇見をしていた男の肩が乱暴にぶつかった。
クラウドはよろめいたティファを支えると男を睨みつけ、参道の外れへと彼女を避けさせた。その拍子にティファの瞳からポロリと涙が溢れ落ち、クラウドは慌てふためく。
まだ熱々の饅頭をやけど覚悟で一気食いし、ポケットに包み紙を突っ込むと、先にそこに居座っていた紙切れが指先に当たった。「大吉」の文字だけ一瞥し、読みもしなかった内容に目を通す。
【恋愛】新たな出会いあり
まさか...コレか?事の元凶らしきものに思い当たるとクラウドは驚愕する。箱に詰め込まれた紙をランダムに引くお遊びだぞ。馬鹿げてる...そう結論付けようとしたクラウドだったが、とめどなく溢れ頬を濡らし続ける涙に思い留まった。押し黙っていたティファはぼそぼそと口を開く。
「私達、やっぱり合わないのかな。神様にはお見通しなんだよ...」
彼女らしくない、拗ねた子どものような口ぶり。相変わらず視線は下向いたままだ。未だ彼女との感覚のズレについていけないクラウドではあったが、取り合わないのも違う気がしてきた。とりあえず、心ここに在らずであろうティファの手を引き腰までの高さの石垣に座らせる。
「ティファ。俺の顔を見てくれ」
涙を指でぬぐってやり、そのまま頬を両手で包み込み顔を上向ける。クラウドと目が合うとティファの瞳から更に涙が溢れ出した。
「ごめん、クラウド。バカみたいって自分でもわかってるのに...」
ティファからの謝罪に苦笑する。要はおみくじを信じる以上に自分への信用がないだけであった。クラウドは軽く深呼吸をすると、すっかり冷え切ってしまったティファの手を握り直した。
「不安にさせてすまない。いつかちゃんと話をしようと思ってた」
大分前から用意していた筈の提案の出番が随分と遅かったことを我ながら嘆く。
「もうティファを不安にさせたくない。今度こそ、気の済むまで聞く」
クラウドはティファの肩に腕を回し強く抱き寄せた。クラウドの言葉にじっと耳を傾けていたティファはその胸に顔を埋める。
「乗り越えたと思ったんだけどなぁ...すぐ流されちゃう。ほんと弱い」
「大抵はどうでも良い人の、どうでも良い言葉。けど、その方が冷静な意見なのかも、なんて...」
「もっとちゃんとクラウドのこと、信じたいのに...」
いつだったかマーレからレクチャーされた傾聴に徹するクラウドであったが、あの件以降も想像以上にティファが様々な場面で傷を広げてきたことを知り項垂れる。たまらず不甲斐無さから早口でまくしたてた。
「ティファ。俺はどうしたらいい?ティファが安心してくれるなら何でもする。ええと...例えば、結婚とかはどうだ?」
目を丸くして顔を上げたティファと目が合う。せっかく止まりかけていた涙が再び紅色の瞳を揺らし、ティファはクラウドの胸をポカポカ叩いた。
「そんな大事なこと、さらっと言わないでよーー!!」
新年早々クラウドがティファを派手に泣かせてただの、人目も憚らずにイチャイチャしてただのの噂が飛び交い、今年もやはりエッジは騒がしい。そして街の人々はセブンスヘブンの営業開始をいつになく待ち遠しく思うのだった。
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>「ティファが見つかったらちゃんと話をしようと思う」
>「もう ティファに不安な思いはさせたくない。今度こそ 気の済むまで聞くつもりだ」
言ったな。
言ったな。
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