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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Bye my sweetheart

(いつか書きたい)プロポーズ話の後日談です。
ジョニーからあの娘へ、はなむけの言葉。

ジョニー節炸裂コメディでっす。









俺はもう今朝起きてから30分、洗面所の鏡と睨めっこをしている。

剃り残し...な~し!

脇、口...臭くな~い!

顔も...

...うん。相変わらずイケメンだ。


Bye my sweetheart


俺の名はジョニー。
エッジで1、2を争うカフェの経営者だ。

俺は今、花束と綺麗にラッピングされたプレゼントを抱え、とある場所へ向かっている。
ちょっとしたスーツを身に纏い。

先週、俺の元に一通の結婚式の招待状が届いた。
俺は差出人の名を見て、戦時中に赤紙を受け取った不幸な青年のごとく固まる。
それから3日間、俺の胃は固形物を受け付けなかった。
部屋のゴミ箱は丸まったティッシュでぎっしりだ。

4日目の朝、ようやく店を開ける気になった俺は郵便受けにギッシリ詰まった新聞を引っこ抜きながら腹をくくる。
悔しいけど、ティファはあの幼馴染野郎にぞっこんだ。
遅かれ早かれこんな日が来るとは覚悟してたさ。
今度の日曜日、ティファの元へ行こう。
お祝いを持って。

しかし!

幼馴染野郎...お前はただじゃ、済まさない!!



一年前、ティファはアイツに散々泣かされた。
ティファに黙って家を出たアイツ。
そんなアイツに文句の一つも言わず健気に待ち続け、日に日に痩せていくティファの体...
それでもティファが弱音を吐いたり笑顔を絶やす日はなかった。

そして奴は、ある日突然戻って来たのだ。
当然の様に以前の生活を再開しだすアイツ。
加えてあの野郎はあれだけ真摯に支えてくれるティファに、それ以降もハッキリと愛情表現をする訳ではない。
店の客が彼女にちょっかいを出しても、飄々(ひょうひょう)とスカして酒を煽り続けるんだ。
そんな奴を横目で見て、少し切なそうな顔をするティファ。

ティファには父親がいない。
だから今日、俺が代わりにビシッと言ってやるんだ。


“彼女をもっと大切にしないなら、結婚なんて許さない!!”


(待ってろよ、幼馴染野郎...)

不敵の笑みを浮かべ、空中にジャブとフックを繰り出しながら軽快にステップを踏み、歩き慣れた道を行く。





トン、トン、トン、トン、トン...

...ほら、ダメだって。いい加減にして!...
「なんで。何が問題なんだ?」
...シー!!...声が大きいよ!...

トン、トン、トン、トン、トン...

「アイツなんて、八百屋に並んでる人参かピーマンみたいなもんだろ。何も気にする必要はない」
...もう、なに屁理屈言ってるのよ!ほら、本当に離して?...

トン、トン、トン、トン、トン...


...トン!!


指でカウンターを叩くのを止め、厨房の奥を睨み付けた。

「ジョニー、ごめんね!ちょっと待っててね!!」
「ゆ...ゆっくりでいいよ~、ティファ!」

俺は慌てて笑顔を取り繕う。




店の扉を開けると、ティファはいつもの笑顔で歓迎してくれた。
俺の差し出した花束とお祝いを抱え、丁重に礼を言ってくれる。

(やっぱ、チョ~~~...可愛い...

...おっと、いけないいけない)

鼻の下を伸ばしつつも、視線を巡らせ敵の姿を確認する。

(しめしめ、ちゃんと居やがったな...)

ティファに骨抜きにされてる場合じゃない。
今日俺は、天から授かった大切な使命を抱えてるんだ。
俺の最も憧れる、目の前の女性の幸せのために!

しかしその10分後、俺はしかめっ面でイライラと人差し指を忙しく動かし続ける事となる。

(聞いてねぇぞ、こんな話...)





「ほら、見て?クラウド。素敵なワイングラス。
この前一つ割っちゃったばかりだから嬉しいね!」

プレゼントを受け取り、上機嫌でそれを幼馴染野郎にかざすティファ。

(あの野郎の事だから、どうせ “別に” とか “興味ないね” とか...)

俺はほくそ笑み、次の展開を待つ。
しかしその予想を裏切り、奴はティファの腰を抱くと頬に軽く唇を当てた。

「そうだな。さっそく使うか?今晩」
「やだ、人前だよ?ダメじゃない...」

奴の胸を押し返しつつも、頬を染め表情を緩ませるティファ。
俺は目玉をひん剥き、顎を定位置から10cmガクンと下に落とす。

「ジョニー...大丈夫?」

ティファは顎を押さえる俺を不思議そうに伺い、「すぐにコーヒーを入れるから座っててね!」と厨房へ引っ込む。
俺には目もくれず、その後を追う幼馴染野郎。
あろうことか、奴はその後もティファにちょっかいを出し続けた。

二人は見てるこっちが恥ずかしくなる程...ラブラブだった...



(コーヒー1杯入れんのに、どれだけ時間かけてんだよ...)

厨房から漏れるのは奴の甘い囁き。
それをヒソヒソと咎(とが)める声も、まんざらではなさそうだ。
俺は不機嫌極まりない顔で、窓際のテーブル席を振り返る。

...だから、80%の80%ってのはさ...
...%の%?何それ、訳わかんない!...

そこには鉛筆を握り締めるチビ達二人。
そいつらは、二人が人目も気にせずベタつくのを気にも留めなかった。

ふと気付けば厨房からの声は止んでいる。
俺はカウンターの椅子からモゾモゾと腰を浮かせた。

(...お手洗い、お借りしま~す)

席を立ち、トイレに行くついでに厨房を覗き込む。
瞬間、俺は全身を強張らせ勢いよくのけぞった。

奴はティファを後ろから抱きすくめると無理やり後ろを向かせ、熱烈な...キスを、していた...



トイレットペーパーをガラガラと引き出し、次から次へと溢れる涙を拭い、鼻水をかんだ。

おい、幼馴染野郎。知ってるか?
俺はティファに一目惚れだったんだ。
あれはティファがまだ16の時だ。
俺はお前が知らない、とびきり可愛かったティファの4年間を知ってるんだぜ?
どうだ、羨ましいだろう。

それをなんだ。
お前はある日いきなりティファの前に現れて、あっという間にティファの心をかっさらっちまった。
俺はティファのあの綺麗な手にも触れた事がないんだぞ?
それを...それを...
あんなに簡単に抱きしめて、キっ...キスなんかしやがって...

「こんちきしょう...」

目の前の扉を血走った目でギリっと睨みつける。
そして俺は、当初の方向性をすっかり変えた。



「ごめんね、ジョニー。お待たせ!」

コーヒーを運んで来たティファは、左手で自分の首筋を不自然に押さえている。
そうか、その下にはあるんだな。幼馴染野郎が君に付けた “愛の印” が。
ああ、そんな赤い顔して...大丈夫、気付いていないフリをするよ。
あれ、おかしいな。また鼻の奥がツンとしてきちまった。

それを誤魔化そうと、俺はコーヒーを一口啜り席を立った。

「よっ!宿題は順調か?」

向かった先はチビ達のテーブル。

「遠慮して貰える?今、取り込み中なんだ」

...相変わらず可愛くねーガキだな。誰に似たんだ?
一方、頭から湯気をモクモクさせてたマリンちゃんは、俺を見て少しホッとした顔をした。
そこで俺はすかさず小声で探りを入れる。

「おい!あの二人...いつからあんな良い感じになったんだ?」
「籍入れてからはずっとあんなだよ」

淡々と答えるデンゼルに言葉に詰まるが、負けじと同情を孕(はら)んだ眼差しでもっともらしく述べる。

「お前ら、曲がりなりにも育ての親があんな調子なの見て、気分悪くならないのか?」
「全然。俺の両親も俺の前で平気でチュッチュチュッチュしてたよ。愛し合ってれば当然だって」

チュッチュチュッチュって、おま...

「あの二人...色んな事を乗り越えてようやく結ばれたの。
今一番人気のドラマなんかより、ずっとロマンチックなんだから」

小さな手を胸の前で組み、目を輝かせ「私、ああいうの憧れちゃう!」とウットリするマリンちゃん。

「アンタが気に食わないのはわかるけど、二人の邪魔はしないでくれよ」

駄目押しに釘を刺され、俺の『チビ達を味方につけよう大作戦』は、いとも簡単に崩れ去った...





ティファは何時の間にかその場におらず、俺は幼馴染野郎と二人カウンターに取り残される。
奴は相変わらず俺には無愛想なままだ。

「お前って、ズルいよな...本当に運が良いよ」

空のコーヒーカップを弄び遠い目で語り出すと、奴はピクリと片眉を上げた。

「俺、4年もティファにアタックし続けたんだぜ?
他の誰にも目もくれずにさ...」

二つ椅子を空けた先の青い瞳が徐々に険しさを増していくのに、俺は気付かない。

「そのあと彼女も出来たけど...別れた今は、やっぱりティファに夢中だ」

椅子の背もたれに反り返り、精一杯の皮肉を込め、トドメの一発を放つ。

「あ~あ、外見が良い上にそつがないなんて、得だよなぁ。
世の中平等じゃないぜ!!!」

するとガタンと椅子がずれる音と共に、奴はグイっと俺の胸ぐらを掴み、そのまま勢い良くまくしたてた。

「俺は人生最初の記憶がある4歳の頃からティファが好きだった。だけど引っ込み思案な俺は10年間彼女に声を掛けられなかった。初めてまともに会話したのは俺が村を出る直前の1回きりだ。それからも故郷に戻る機会はあったが俺は彼女に素性を明かせず、再び指をくわえて遠くから見守るだけだった。ティファとした約束を達成出来てなかったからな。その後は5年間ビーカーの中だ。再会してからはジェノバ細胞と魔晄中毒に悩まされた。ああそうだ、星痕にかかって死にかけた事もあったな。ちなみに人生において、ティファ以外の女の手も握った事がない」

尋常じゃない奴の気迫に押され、俺は半分宙に浮いたまま口をパクパクさせる。

「わかったか?
だから俺にはティファと好きなだけイチャつく権利があるんだ」

首元を更にギリリと締め上げられた。

「...は、はい...」

背後には、こちらを完全に無視した二人ののほほんとした会話。

...だからさぁ、1/2を7/8で割るって言うのは...
...え~分数を分数で割るの?訳わかんない...

「どうかした?ジョニー」

奥の扉から首元の隠れる服に着替えたティファが現れる。
その寸前、俺は床に尻からドサっと降ろされた。

「え、いや.........ははっ...」

未だ呆然とする俺を余所に、何時の間にカウンターへ戻ったのか幼馴染野郎は平然と言う。

「ジョニーは俺の結婚を心から祝福してくれているそうだ」

するとティファは俺の手を取り、顔をパっと明るくした。

「本当に?ジョニー、嬉しい!
こんな事言っちゃなんだけど...ジョニーはクラウドの事あまり良く思ってないのかなって、ずっと気にしてたんだ」

そしてニッコリと笑い、同意を求める。

「ね? 私には勿体無い人でしょ?」

「.........うん」





「「また来てね~!」」

男の声が一切混ざってない、愛らしい見送りを背に店を後にした。

(俺、今日何しに行ったんだっけ...)

混乱をきたす頭とは裏腹に、心は何故かスッキリしていた。ああ、そうか。

「...アイツって、案外めちゃくちゃダサい奴だったんだな」

その日あの幼馴染野郎は、俺の中でかなり親近感の湧く存在へと変貌した。
そして心の奥底で確信する。
ティファはきっと...いや、かなり...幸せになれるに違いない...

朱色の絵の具をぶちまけた様な夕日に向かい、俺は彼女に精一杯のはなむけの言葉を贈る。

「世界一、幸せになれよーー!!!」

道行く通りすがりの人から不審に見られるのも構わず、目一杯叫んだ。
瞳に薄っすらと涙を浮かべながら...

しかしすぐに足を止め、後ろを振り返りあの野郎に届かぬ罵声を浴びさせる。


「...ちくしょーーー!!!
やっぱ許せねぇぇぇええええ!!!!!」


俺の永遠に愛しい人よ。

本当に、さようなら...



******************


まったくジョニーとは良い酒が飲めそうです。


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