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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Blue Eyes 2


Blue Eyes 1、の続きです。







肩に届くか届かないかのところで切り揃えられた、真っ直ぐな金髪。

透き通る白い肌。

そして、同じ輝きを放つ瞳。

それはあたかも俺の...


Blue Eyes 2


「待って! 痛いよ、離してってば!!」

構わず手を思い切り引っ張った。
裏手に止めていたフェンリルが目に入り、キーを握る力を強める。

“何かが腑に落ちない”

最初話を聞いた時、思ったんだ。
おそらくユフィだったろうか?以前言っていた。

“WROには女性隊員が数人いる”

「クラウド!!」

渾身の力で手を振り払われた。
非難の目を向けたが、負けじとやり返される。

「あの子をここに置いていくのは危険だわ。
ちゃんと話し合うから、電話して来てもらいましょう?」





30人は入れそうなリビング。
今いるのは、せいぜい10人だ。
中央に置かれた大理石のテーブルに座り、戦友は悪びれもせず飄々(ひょうひょう)としている。

「そうですか。
あっさりバレてしまいましたか」

「何で最初に言わなかった」

じろりと睨むが、リーブはピクリとも表情を変えず言ってのける。

「当然です。
言ったらクラウドさんのお許しが出る訳がありません」

WROがここに人を送り込むのは、もう4度目の事だった。
初めの一人について嘘はない。
彼は少女と馬が合わず、他の女性隊員と交代となった。

しかし戦闘能力に劣ったその隊員。
少女は何者かに連れ去られる。
だが護身用のスタンガンで意表を突き、自力で家まで戻って来たらしい。

不可解なのは、同じ事は二回起こった。
再び連れ去られたが、体に傷を受けつつも逃げ帰った少女。

...二度も?
一度失敗したら警戒心を増し、同じ手にはやられないだろう。

視線を馳せると、少女は慌てて父の後ろに隠れる。

こんな華奢で無力な子が、何故一度ならず二度までも逃げられたんだ...

WROが手配した女性隊員は2人とも殺された。
そこで手駒が尽き、ティファに話が来た訳だ。

「どうして喋ったんだ」

父親は少女を叱りつける。

「だって...ウソはずるいよ」

一度は言い返すが厳しい顔に怖じ気づき、決まり悪そうに謝った。

「ごめんなさい...」

「心配いりません」

それを庇うよう声が掛かる。

「私はこのままここに残りますから」

予想通りの反応に、深く息をつく。
そして俺一人を取り残し、今後の方針が決められた。

そうこうする内に掛けられた3度目の電話により、要求金額は更に上がっていた。
払えない額ではないが、さしあたりそれは飲まない事とする。
続けて催促が来るだけで、現状の打開には繋がらないだろう。

「補助の隊員を増やしますからね」

へつらう様に掛けられた台詞に心は上の空だ。

“深読みし過ぎ”

そう言われたら終わりだが、どうもこの事件はきな臭い。

(狙いは...ティファか?)

彼女のアバランチでの活動は公にはされてないが、もはや誰でも得られる知識だった。
そうなると誰に命を狙われてもおかしくない。
そしてジェノバ戦役の一人として、リーブとの繋がりも周知の事実。

俺にはこの件は誘拐を隠れ蓑にし、ティファを危険な場にお引きだす作戦に思えてならなかった。
あたかも金目当てに見せかけ、彼女の命を奪おうとする誰かによる。
それに気の毒ではあったが、どうもこの少女に愛着を持てない。

...何かが薄気味悪い。

そんな取るに足らない存在より、ティファの安全は数倍重要だ。

(しかし、なら何故こんなまどろっこしいやり方を...
...あの広い部屋に、何か仕掛けでもあるのか?)

堂々巡りを始めた俺を置き、一同は持ち場に戻る。
唯一ティファだけが近寄って来た。
肩にそっと手を当て、先程の発言のご機嫌取りをする。

「きっと大丈夫だから...
だってクラウドが側に居てくれるんだもの」

「ねっ?」と弱点である笑顔を向けられ、渋々腹をくくる。

これはしばらく、寝不足は避けられないな...





「それじゃあ、お風呂行って来るね。ドアは開けておくから」

あれから数日経った夜、変わらず廊下に居座るクラウドに声を掛け部屋を後にした。

思ったより危険だと判明したこの依頼。
しかしまだ楽観視している。
聞いた女性隊員の技量は、私の足元にも及ばないものだった。
しかも子供にも隙を見せる相手。やられる訳がない。
それに彼女が我が身を省みず見せた思いやりは、健気そのものだった。

部屋に戻る途中、リビングから漏れる明かりに目が行き、足を忍ばせ扉の隙間に身を寄せた。
そこには椅子に腰掛けアルバムらしき大きな本を抱え、目頭を指で押さえる姿。

(捨ててないよ...)

今も写真を眺めてるだろうあの子に語りかける。
母親を死に至らしめた魔晄の瞳をそっくり受け継いだ彼女。
父親はそれを気にし、母の写真を取り上げたのかもしれない。

少女はまだ笑わない。

理由は、きっとこの長い廊下。
それは二人の心の距離。
四六時中、部屋に居座る私が父の姿を拝む事はなかった。





29:50、29:51、29:52...

そこまで心の中でカウントし、アラームを止める。
30分置きにセットしたタイマー。
誤って眠りに落ちないための対策だった。

2回に渡る潜入は夜中、窓からだったらしい。

“ティファの部屋からは出ない”

そう少女に約束をし、今晩から室内に陣取っている。

「すぐ戻るから。そしたらティファは眠れ」

瞳を薄く開け横たわる彼女に小さく耳打ちし、洗面所へ経つ。
少女は寝息を立てていた。
窓を睨み無言の牽制を送り、ドアを静かに閉める。

部屋へ戻る途中、隊員の一人とすれ違う。
彼はトランシーバーで別の隊員とやり取りをしていた。

「外は異常ありません!」

敬礼に安堵し、階段を登る。
廊下の突き当たりの部屋。

(...ん?)

ギクリとした。
扉が、開いてる...

駆け出し、剣に手を掛けドアを押し開けた。

暗闇に映ったのは、スヤスヤと眠り続ける少女と、ティファの前で気を失う顔を隠した男の姿だった...





暗く、長い廊下をゆっくりと進み続ける。

ギィ......

何度目かわからない音を響かせ、扉を開きながら。

ギィ......

ここに存在する、最後の一つを開いた時だった。

「クラウド、こんなところに居たの?」

背後には、寝巻きを着替えたティファ。

「やっと気が付いたって。
私達の話も聞きたいみたいだから、行こう?」

その提案に頷き、そこを後にする。
開いた扉の奥を睨みつけ。



「さすがだな」

俺が目を離したほんの数分。
不意は突かれたが、ティファはなんなく星を仕留めた。
からかうと、「どうせ、また面白おかしくデンゼルに言うんでしょ」と唇を尖せ抗議する。

しかし後ろに乗り込むと、背中に軽くおでこを押し付けられた。

「やっと家に帰れるね」

同意の意を込め、彼女の腕に手を重ねる。



夜中にも関わらずリーブはすぐにやって来た。
のびたそいつを縛り上げ、隊員と父親を車に乗せる。

「俺達は足があるからいい。
...少し遅れて向かうよ」

ティファもそれに賛成した。
リーブはともかく、隊員達の前で寝巻き姿は居心地が悪そうだ。

俺には少し気になる事があったが...
夜風を切る中、背中の温もりにもはやどうでもよくなった。
この事件はただの金目当ての一件だったに違いない。
WRO本部で取り調べに付き合った後、俺達は我が家へ帰るんだ。

清々しくフェンリルを走らせた。





「金は...まだ手をつけてない...
そっくりそのまま、取ってあるよ」

両手首を椅子に括(くく)り付けられうな垂れて、男はポツリ、ポツリと真相を語り出した。
薄汚い灰色の部屋。
父親と隊員は別の部屋で休息を取っているようだ。

「子供が難病で...どうしても大金がいったんだ...」

泣き出す男。

必要な質問をこなし、俺達は立ち去る頃合いを見計らっていた。
ティファが横で欠伸を噛み殺し涙目になる。
しかしリーブの仕事はこれからなのだろう。
背後にいる二人に気を配るのも忘れ、尋問を続ける。

「理由だけなら情状酌量の余地がありそうだがな...」

机に手をつき、ドスをきかせ男ににじり寄る。

「...二人殺した罪は重たいぞ」

男は頭を垂らしたまま、ピクリと肩を揺らした。

「なん...だって?」


「俺は、一人しか殺してない」


瞬間、眠気が吹き飛んだ。
青ざめた顔のティファと目を見合わせる。
リーブも振り向いた。

リーブは慌てて携帯を取り出し電話を掛けるが、ほどなくして力無く腕を下ろした。

「クラウドさん、ティファさん...
申し訳ないですけど、今すぐ向かってもらえますか?」

聞き終わる前に駆け出していた。
さっきの倍のスピードで走り抜ける。
今来たばかりの道を...





門でバイクから飛び降りたティファの後を追った。

「はぁ、はぁ...!はぁ...!」

彼女は部屋の入口で激しく息をつき、呆然と立ち尽くす。

床に散らばった、ガラスの破片と置物。
開いた窓にはカーテンがはためいていた。


ベッドから、碧い瞳の少女の姿は消えていた...





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