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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

Blue Eyes 1


AC後。
火曜サスペンス劇場に巻き込まれた二人。

シリアスです。
オリキャラ出てきます。

四話完結予定。







暗く、長い廊下。

脇に並ぶ、幾つもの重厚な扉。

その華やかな造形に反し、座り込んだ床は心臓がゾクリとする程冷たかった。


Blue Eyes 1


「お願いしますよ、ティファさん。クラウドさん」

カウンターには珍しい客。
だが良く知った顔だ。

「お店を休んでいる間の損失は、もちろん負担しますから」

...そういう問題じゃないんだけどな。
私とこの人の仕事は根本的に性質が違う。
売上だけが全てと思われるのは心外だった。
だけど...

隣でグラスを傾けるクラウドにチラリと視線を送った。
少しの願望を眼差しに込めて。
すると彼は私の代わりに口を開く。

「条件がある」



突如リーブから私に舞い込んだ依頼は、とある人物の “ボディーガード” だった。
カーム付近に居を構える、業界では名の知れた富豪。
彼は何日か前から脅迫を受けているらしい。

“今から言う額を振り込め。さもないと娘の命はない”

父親はすぐさま要求に従い巨額な金を口座から引き下ろした。
しかし胸を撫で下ろしたのも束の間、再び彼の家の電話が鳴り響く。
それは30分前と全く同じ内容だった。
提示された金額が3倍に引き上げられたのを除けば。

埒があかない。
そう悟った彼は今度はWROに連絡を入れる。
事件性を認めたWROは、豪邸に護衛を送り込んだ。

「なら何でティファが...」

クラウドが話を遮る。

「少し人見知りの激しい子なんですよ。
特に男性に対しては。
数日で体調を崩してしまいまして...」

まぁ、6歳の女の子としては当然の反応かと思うんですがね。
と、私を上目遣いで伺いリーブは付け加える。

頭に浮かんだのは、既に床についた幼い娘の姿。
止むを得ない事情とは言え、彼女が知らない男性と部屋に閉じ込められストレスを抱える姿を想像し、心を痛めた。
その意を汲んだのか、クラウドはリーブに伝える。

「俺もそれに参加させてもらう」

そして抜かりなく、デリバリーの売上も補填しろよ、と続けた。

一線は退いたが、そんじょそこらの輩に負ける気はしなかった。
それにクラウドもいてくれる。
しかし私はリーブの話に何かしらの引っかかりを覚えた。

かつての仲間とは言え、少し計算高い部分もある彼だ。
全てを話してくれた訳ではないかもしれない。
少なくとも、WROがその富豪から金銭的な融資を受けているだろう事は予想がついた。
きっとリーブは、出来る限り父親の満足のいく人材を手配したかったに違いない。





10m以上も上できらめく無数のガラスの欠片。
それが真下に落ちて来たら...
なんとなく想像してしまい、身の毛がよだつ。
吹き抜けの天井に飾られた豪勢なシャンデリアや床のどぎつい色のカーペットは、私の趣味からは程遠かった。

「初めまして。
この度はご協力ありがとうございます」

奥の扉から、かっちりとした服装の紳士が現れる。
彼は背後に目をやり隠れていた少女の肩に手を当てた。

「ほら、お前もご挨拶しなさい」

ついと前に押し出され、不安そうに父を振り返る。
隣でクラウドがハッと息を飲んだが私は気にしない。
目線を合わせようとしゃがみ込み、ゆっくり伝えた。

「こんにちは」

「...こんにちは」

くたびれたウサギの人形を抱え、か細い声を紡ぎ出す。

その少女の瞳の色は、真っ青だった。





「ちょっとした事前情報なんですが...」

あの日、上機嫌のリーブは酒を片手にスっと小さな紙切れを差し出した。

“地方豪族〇〇氏の妻、自宅で飛び降り自殺”

数行しか詳細のない、新聞の切り抜き記事。

「その子を産んですぐの事だったようです」

「母親は妊娠中に事故でライフストリームに落ちたと聞きました。
自殺の原因は、おそらく魔晄中毒でしょうね」





「しかし物凄い建物だな...」

部屋の前でキョロキョロ首を振るクラウド。
ここにはいったい幾つ部屋があるのだろう。
とても3人で住むために設計されたとは思えなかった。
お手伝いさんでもいるのかと思ったが、今のところ姿を見かけることはなく、廊下は閑散としている。

私達を親子に引き合わせ、リーブは隊員数名を置き立ち去った。
何かあればすぐに連絡をくれと言い残し。

廊下に座り込むクラウド。

「中に入る?」

「いや.......いい」

しかし一日中そこに居座る気なのだろうか?
いくらなんでもそれでは体が持たない。

「せめて昼間の間は仮眠を取って?
それで、夜になったら助けて貰える?」

私だって24時間睡魔に打ち勝つ事は出来ない。
クラウドには申し訳なかったが、夜中眠ってしまった際に取り返しのつかない事が起こったら...と不安だった。
そう説得すると「何かあったら騒げよ」と自らに割り当てられた部屋へ退散する。
そして私は引き続き任務に就いた。

彼女の部屋...そうは言っても、それは勉強部屋と寝室の2つに分かれていた。
勉強机の隣には、私のための簡易ベッドが用意されている。

「部屋の扉は開けておいてもいいかな?」

少女はコックリと首を縦に振る。
相変わらずヌイグルミを抱いたまま。

「その子、可愛いね」

すると得意気に返された。

「ちゃんと名前もあるのよ」

その仕草に、とある顔を思い出す。
彼女は今頃兄と一緒に父親に甘えてるに違いない。

デンゼルまでバレットの所に送り込むのは気が引けたが、双方はどちらも快諾してくれた。

“リーブさんから直接依頼が来るなんて...”

モスグリーンのつぶらな瞳を輝かせ、羨望の眼差しを送る彼。
詳細はまだ話せない、そう言うと口を尖らせ...

“全部終わったら、絶対に教えてくれよな!”

しつこく念を押し、元気良く私達に手を振った。

そこで私を襲う違和感。

ああ、そうだ。
私はまだ、この子が笑うところを見ていない。



横たわり、浅い眠りに身を委ねる。
部屋の前にはクラウドが居る。
となると、唯一の潜入口は寝室の窓。
だがその外にも隊員が見張りについていた。
窓辺に敷き詰められた雑貨。
万一押し入られたとしても、音を立てないのは不可能だろう。

今夜は月が明るい。
この位置からでも、ハッキリと映るベッドの上の少女の姿。
ふとそこに2つの蒼い光が揺らめく。

彼女は手に何かを持ち見詰めていた。
もしかしてあれは...

「...お母さんの写真?」

突然掛けられた声に動揺し、彼女はそれをベッドとマットレスの隙間に慌てて押し込んだ。

何かいけない事を言ったのだろうか?
少し焦り、体を起こし寝室へ向かった。
少女は頭から布団を被り、小声で嘆く。

「お願い。お父さんには言わないで。
捨てられちゃう。最後の一枚なの...」

“捨てられちゃう”?

眉根を寄せたが、同時にあの台詞を思い出す。

(自殺の原因は、おそらく魔晄中毒でしょうね)

私も知ってる悲惨な症状。
彼女の父も、相当に苦しんだのだろう。
妻の事はもう忘れたいのだろうか...

「お願い...」

二度目の懇願で我に帰る。

「うん、誰にも言わないよ。
約束する。だから安心して?」

本心だった。
それが伝わったのか「うん、絶対ね」とやっと顔を覗かせる。

彼女は表情が乏しいのを除けば普通の子だった。
受け答えもしっかりしてるし、年齢より大人びてるくらいだ。

「人見知りしないのね。仲良くなれそうで嬉しいわ」

率直な感想を投げると、平然と答えられた。

「最初は嫌だったけど、もう慣れたよ」


「だってもう、お姉ちゃんで4人目だもん」





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