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Minority Hour

こちらはFF7 クラウドとティファ のCPを中心とする二次創作小説を扱うサイトです。初めての方は「About this blog」をご覧下さい。コメントはwebclapからお願いします。

   

For my sake 3


For my sake 2、の続きです。






「俺はよぉ、悪いけどお前に同情なんかしないぜ?
今までが奇跡だったんだ、そう思え!!!」

その男は電話口で、割れんばかりの爆音を轟(とどろ)かせガハハと笑った。


For my sake 3


「...ただいま」

つい言葉が口を突いた。
ほんの少しだけ期待してたが、やはり家の中は真っ暗だ。

週末、子供達はバレットの元で過ごす事になった。
大切に食べていたカレーも底をつく。
せめて何か美味いものを食べさせてやりたかった。

静まり返った廊下を進む靴の音が酷く耳につく。
階段をのぼり切り、扉が開きっぱなしの左右の部屋を見て溜息をついた。

物が乱雑に散らばった床。

写真立てに薄っすらと積もる埃。

タオルも感触が違った。
棚の柔軟剤の存在に気付くが、俺はそれを洗濯機のどこに入れるべきか想像もつかない。

野菜を炒めてる間に冷えてカチコチになった肉をつつく。
味がしなかったから、無理やり後から塩を振る。
飯も炊き忘れた。

“一緒に生活してる”

そんな形だけの言葉に自惚れてただけで、開けてみれば俺は与えられる一方だった。

(ティファのご飯が食べたい...)

...いや、やっぱり俺が作るよ。
不味いだろうけど、それくらいはさせてくれ。

“やってみせてよ!”

あの声が耳に痛い。

ただもう、あの笑顔を見せてくれるだけで十分だった。



『...けになった電話は、現在電波の...』

昼間も試したが、繋がらなかった。
まだ話したくない...か。

湿気たシーツに転がり別の連絡先を押す。
相手は直接来い、と怒っていた。
なんとか言いくるめ目的の人物と話す。

『...ティファ?』

『うん...』

これだけの間、声を聞かなかったのはいつぶりだろう。
こんな状況なのに、その声は心にじんと染み渡る。

“元気か?”
形式的な挨拶を交わし、意を決した。

『ティファ...帰ってきて欲しいんだ。
迎えに行ってもいいか?
子供達も気落ちしてる』

『元気...だったよ?』

『そう見せてるだけだ。
ごめん...ご飯を作ってあげる余裕がなくて、今はバレットのところにいる。
でも、週明けには戻って来るから...』

だから、今が嫌でもそれまでには...

『クラウドは?』

『...え?』

『クラウドは、どうなの?』


『............わからない』


『改まって考えると、俺とティファの関係は本当に一方的過ぎて...『もういい』

そこで電話は切られた。

“帰ってきて欲しい” だなんて、おこがましいと思ったんだ...





「ユフィ、ありがとう。こんな夜中に」

部屋の外で待ってくれていた彼女に礼を言う。
私の顔を見て、交渉が破綻したのを悟ったのだろう。
あの馬鹿、また何かしたの!?そんな顔をする。
宿の入口まで見送りお休みを伝えると、去り際に言われた。

「基本積極的に動かない奴だから、ティファも過剰に期待しない方がいいと思うよ。
そろそろ帰りたいんでしょ?本当は」

相変わらず鋭い一言。

帰り際、すれ違う宿の従業員から怪訝な目で見られてしまった。
部屋に戻り、顔を枕に押し付ける。
じんわりと濡れて冷たくなっていくそこ。


“............わからない”


私なしでも、何一つ変わらず回る家族の時間。
電話越しの明るい子供達の声。
いつものように荒野を走る彼のバイク。

対する私は、せっかく観光地に友達といるというのに、頭に浮かぶのはあそこでの生活のことばかり。

今、子供達が起きた
クラウド、寝坊してないかな?
そろそろ洗濯機を回して、その間に拭き掃除とゴミ出しを...
それに...

ここでの時間は、何かが足りない。

「決めた」

涙を拭い、テーブルの上に手を伸ばす。





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